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2011年7月10日 (日曜日)

日本の課題、IFRSの課題(石川教授)

石川教授は日本がIFRSを取り入れていく(コンバージェンス)、或いはアドプションするにあたって、適切な期間損益計算を重視する立場から、時事ネタを使いながら具体的に多くの課題をこの本「変わる会計、変わる日本経済」に指摘している。しかし、それを大胆に要約すると、その中心は下記のようになると思う。

(会計の目的-期間損益計算 vs リスク開示)
投資家の立場(金商j法)からは、注記事項を含めたリスクの開示が重要であり、その点を最近の会計基準(やIFRS)は重視している。しかし、日本の会計はもともと適切な期間損益計算を行うことが目的であり、それゆえ、会社法や税法が、株主、債権者、国等への利益配分に会計基準を利用してきた。

IFRSはB/Sの期首と期末の資本の増減額を(包括)利益とするため、本来利益配分の財源にならないキャッシュフローの裏付けのない項目まで、即ち、資産・負債の評価損益や未実現利益までをも利益に含めてしまう。このような包括利益を調整しても利益配分機能が果たせるのか。

これは実務の問題(手間のこと)を超える大きな問題だ。損益項目に注目し、その性質を分析・解明する理論があってこそ、関係者の利害調整ができる、そうあるべきだ。期間損益計算とリスク開示を別枠にしてしまうか、両者を内包できる理論をくみ上げるか、そういう会計理論の根本的な整理と進化が求められている。会計基準は交渉や政治力で決まってしまう面があるといっても、そこでは、より基礎にさかのぼった理論や歴史の視点が重要となる。

(日本における象徴的な問題-減価償却)
減価償却することで期末の有形固定資産の簿価が決まるが、減価償却はあくまで費用配分、費用額をいくらにするかを決める手続きであって、資産評価の手続きではない。しかしもし、期首と期末の有形固定資産の評価額の差額を損益にするような会計手法が導入されると、それはもはやそれは収益と費用を対応させるための期間損益計算とは言えなくなる。しかし、IFRSは有形固定資産までをも公正価値評価させようという方向だ。そこで上記の会計理論の整理と開発が必要だし、特に税法は確定決算主義をどうするのか根本から見直す必要がある。

(IFRSが抱える根本的な問題-公正価値)
リーマン・ショックで金融商品関係の市場機能が低下し時価が下落したため、時価主義会計が過大な評価損を生むと欧米で批判を浴びた。もちろんこの批判は筋違いだ。加えて、これとは別にあまり問題にされていない大きな問題がある。それはそもそもリーマン・ショック前の時価(公正価値)が、過大評価だったのではないかということだ。市場価格があればそれを公正価値とするが、実物経済の数倍にも膨張した金融経済、信用膨張、バブルの時代の市場価格は「公正」な価格でなかっただろう。それを期末時価に使用する会計基準はいかがなものか。

みなさん、いかがだろうか。以上のようなことがメガ・バンクや生保の決算や税法改正による減価償却方法や耐用年数表の改定、三越と伊勢丹の経営統合、2009年のIFRS適用のロードマップなど色々な時事問題を通して語られている。上記はほんのエッセンス(になっていれば幸いですが)に過ぎない。

(監査人の見方)
実は、僕はかなりショックを受けた。監査実務では、どうしてもB/S項目に目が行く。まず流動性の高い項目を押さえに行き、さらに不良資産がないか注意を払い、負債の計上漏れに気遣う、そうしていくうちに相手勘定の損益の異常も発見できる。もちろん、損益項目についても分析したり、サンプルを拾って検証手続きをするのだが、それでも手がかりはB/S項目にあることが多い。しかし、確かに受験時代は会計の目的が期間損益計算にあることを学んでいた。それがいつの間にか収益の実現は売掛金の実在性や期間帰属から見ることが多かったし、契約書を見ればいつ資産の所有権が移転するかとか、未払計上、引当計上すべき負債がないか探していた。資産・負債を固めれば、結果として損益も正しくなる、そういう見方が僕の中に定着している。

そういう監査人の経験を踏まえて、次回は記載してみたい。

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