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2011年7月 7日 (木曜日)

IFRS学習の視点

一応、僕も一通りIFRSを勉強した。監査法人時代はクライアントへIFRS導入を勧めていたので、当然自分なりの勉強はしたつもりだ。監査法人から提供されるアップデート情報もなるべく目を通すようにしていた。そんななかで僕なりのIFRS像が一応できている。

(良い点)
 ・原則主義(僕の考えでは適正表示の枠組みとも密接に関連)
 ・概念フレームワークの重視・尊重(同上)
 ・将来キャッシュフローによる資産・負債を定義、その資産・負債から導く資本および損益の定義
 ・これらから導き出される全体としてのシンプルさ

(悪い点、というか課題)
 ・金融商品関係が複雑というかオタッキー(分類・評価・減損・ヘッジなど、そのほか保険、リースも)
 ・その他の包括利益の性格付けがされてない(のに純利益を軽んじている印象)
 ・原文が英語で翻訳に時間がかかる(但し、ASBJの翻訳は日本語として分かりやすい)

僕の現時点の暫定的な評価では、IFRSの読者は最低限概念フレームワークさえ勉強すれば、財務諸表本体を直感的に読むことができる(ただ、注記を読むにはその分野の相応の知識や経験が必要)。読者にはCFOを除く経営者も含めて考えているが、これは社会全体の効率性への寄与度は大きいのではないか。しかし、作成者サイドはそうはいかない。高度な専門知識が必要となる(が、この点は、日本人は勤勉なのでなんとかなっていくのだろうと思う)。

注意を要するのは、良い点、特に原則主義の利点を十分引き出すための実務的なノウハウが、今までの日本の実務には、かなり欠けていたと思う(特に個別の状況に合わせた判断)。さらに資産・負債の定義を中心とする財務諸表像というものは、今までの損益重視の考えとはかなり異なるものだ。よって、原則主義におけるルールの運用ノウハウを整理して関係者へ知らせたり、財務諸表のイメージに関して専門家の頭を転換させたり、一般へ教育したり、といったことに国全体で取り組む必要があると思っている。(企業会計審議会の中間報告とは若干視点が違っている。)

言い訳になるが、上記は、自分で設定したとはいえタイムスケジュールがあって、それにプライベート時間をつぎ込んでやってきたものであるため、やっつけの面があることは否めない。じっくり基準書に向き合っていないのである。そこで、それをこれからみなさんと一緒にやっていきたい。したがって、このブログでは「基準にこう書いてある」ということではなく、それを概念フレームワークに照らしてどう考えるか、ということや、そういうことからくる実務上の判断のポイントの整理ができれば大成功と思っている。

IFRSの解釈はできない。でも各上場会社は、それぞれが直面する状況に合わせて多くの判断していくことになる。そのポイントの例示ぐらいは、個人的な意見として出すのはかまわないであろうと思う。というか、もっとそういうことをやっていかないと、IFRSが日本で機能しない。

僕がそんな考えを持っている人間だということを理解してもらったうえで、次回からは「取っ掛かり」で記載した会計学者の本について書いてみたいと思っている。非常に面白かった。参考になった。特に石川教授の本。

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ふぅ~、我ながら随分遠回りをしてきたような気がします。(^_^;;
ついでに申しあげると、来週11日より再来週まで、所用でなかなかこのブログにアクセスできなくなります。もし、このブログを楽しみにしてくださる方がいたら、大変申し訳ありません。

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