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2011年7月11日 (月曜日)

監査人の経験から会計問題を考える~1/2

石川教授が提示した問題は大きな問題だ。僕ごときに対案や解決策が見出せるわけもない。とはいえ、会計の研究者とは違った角度の業務経験から、次の点についてそれなりの意見を2回にわたって記載したいと思う。ただ、詳細についてはIFRSの概念フレームワークやその他個別規定のところに譲ることになる。

●会計の目的-利益配分か、リスク開示か
●減価償却
●公正価値

 

(会計の目的-利益配分か、リスク開示か)

利益配分問題の具体的な対象としては、株主と債権者については配当規制が象徴であり、会社と国については課税所得の計算ということになる。まず前者については思うところを記載したい。

現在の会計は払込資本と利益剰余金の区別を重視する(「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」第19項)が、会社法としては、必要があれば減資して剰余金を増やしたり、またそれを財源に配当することも可能だ(会社法446条、448条)。その一方で会社法は、剰余金からのれん等調整額の一部や投資有価証券や土地の評価益を配当財源から控除することを要求している(会社法446条、会社計算規則186条)。

会計は投資とそのリターンの関係を崩したくないので、投資効率を測る分子・分母たる払込資本と利益剰余金を混同させたくないが、会社法は債権者の実務的な観点である、その時点での財政状態の健全性を維持することを考えているように思う。即ち、そこに期間損益の考え方はあまり入っていない。したがって、会社法は株主と債権者の利害調整を図っているが、それは期間利益よりむしろ財政状態によっていると思う。

実際に銀行が資産査定を行う際に重視しているのは、貸付先がどの程度将来キャッシュフローを生み出せるかであり、過去の利益はそれを予想する参考値の位置づけだ。将来のキャッシュフローは事業利益から見込むだけでなく、B/S面、財政状態からも見込む。即ち、最も重要なのはこれからその会社がどうなるかであって、それをサポートするのが貸付先が直面しているリスク情報と直近の財政状態と過去の業績だ。

後者の課税所得の計算においては、会社法における債権者保護の観点の代わりに、公平な課税負担という観点が入ってくる。これについては法人税法が期間利益を課税ベースとしているため、利益額が会社と国の利害調整の対象であることに疑いはない。

では期間利益計算は会計の目的として重要ではないのか、税法にとってのみ重要か、ということになるが、そうではない。当然重要だ。過去の利益の分析なしに、今後の経営を行うことは難しい。経営者が適切な経営ができること、これこそ、投資家・株主・債権者・国のすべてが求める会計の機能だと思う。ただし、経営には利益だけでなく財政状態も将来のリスクを測るうえで重要であり、したがって投資家・株主・債権者にとっても重要だ。

そういえば、石川教授は、この著作の中で会社法の配当規制のことにはあまり触れられていなかった。もちろんこのようなことをすべてご理解されてのことだと思う。

(IFRSについて)

僕は監査現場にいて、銀行監査も経験したし、監査先の経営者と接し、経営者を通じて投資家や株主、そして税務調査の話も聞いた。税務当局は確かに過去の利益に強い関心を持つが、その他の会計の利用者は、その会社の将来に強い関心を持っている。会計はそこに貢献の場を移しつつあると感じている。IFRSはその最先端にいるイメージだ。

ただ心配されるのは、石川教授が指摘し、心配しているが、リサイクルリング禁止問題や当期純利益の廃止問題(その他の包括利益の性格づけ)だ。リサイクリングは実務上相当負担になると思う。しかし、リサイクリングをやめると「当期純利益」の純度が下がり、開示する意味がなくなる。とはいえ、外部環境の変化、特に市場、相場変動の影響と、会社の事業の成果が区分できなくてよいのだろうか、とも思う。このあたりはIASBによい代替案が出せないか、日本の貢献が問われるところだ。

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