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2011年8月 5日 (金曜日)

IFRS財団評議会の戦略レビューの報告について(1.会計の目的 の4)

 -投資銀行用の会計基準と製造業用の会計基準 の2-

 

製造業と投資銀行の違いはなんだろうか。製造業は自分のことを会計処理するが、投資銀行は投資先となる会社の会計処理が問題となる。製造業の「経営者」にとってはどうだろうか。自社の会計処理は自分自身の成績表という思いもあるだろうが、経営対象の実態把握という面もある。後者は投資銀行の立場と似ている。

 

投資銀行は、過去の業績で投資を決めるのではない。将来性である。ただ過去安定して好業績をあげていることが明るい将来への確信を高める効果はある。しかし、例えば過去に輸出で稼いできた会社の将来は、過去情報だけでは評価できない。今後の円相場の見通しやその会社の円高対策の内容の評価が必要だ。

 

製造業の経営にとっても同じことが言える。過去ずっと成功してきた製品が今後も成功できるかどうかは外部環境の変化に対応できるかどうかだ。どんなリスク要因があるかを把握し、それを評価し、対応策を立案することが必要となる。最も重要なのは顧客ニーズの変化だが、円相場や技術革新などいろいろ重要項目はある。社内に内在するリスクもある。

 

複数事業を営んでいる会社では、限られた経営資源をどの事業に配分するかを決定する。こうなると経営者の事業評価は投資銀行とほとんど変わらない。もちろん事業理解の深さは全然異なるが、見方としては基本的に同じだ。

 

さて、何が言いたいのかというと、経営者は実態が知りたいし、将来への対策をしたい。過去の好業績に浸っていたいわけではない。過去の業績は将来の対策を立てるための分析に使いたいだけだ。なのになぜ製造業の会計から公正価値会計を排除しなければならないのだろうか。

 

公正価値の算定は、簡単に言えば将来キャッシュフローを見積もって現在価値に割り引く。そのなかで将来のリスクを分析・評価する作業が必要になる。一方取得原価主義では過去いくらで買ったかを正確に記録しておけばよいので、将来に対して関心が向かない。

 

会社で経理や管理会計を担当されている方は、せっかく作成した分析資料を経営者からダメだしされた経験をお持ちだと思う。「過去は分かった、でもこれからどうしたらいいんだ。」そんなセリフを何度も聞かされているのではないだろうか。会計への興味が薄い経営者の多くは、提供される会計情報が過去のことしか含まれていないことに不満を感じている、そんなものに手間をかけるか?と思っている。僕はそう思うが皆さんはどうだろうか。こういう経営者の多くが、上記のような公正価値会計の意味を理解すると、経理部にそこまでできるのか、企画部門との調整ができるのか、現場とのコミュニケーションはどうだ、と惑い心配されるだろう。そこを可能にするのがIFRSの準備プロジェクト(のはず)だ。システムの話はそのあと。

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