10月17日の企業会計審議会~連結と単体
10月17日の企業会計審議会での話題は、日本の会計基準に関する戦略ともう一つ、連結と単体の問題だった。連結先行か連単分離か、税法との関係、日本は独自の(単体用)会計基準を持つか、といったところだ。
前回まで日本の会計基準に関する戦略を検討してみたが、僕の考えは日本の独自路線は取りえず、IFRS開発に参加しIFRSを採用するというものだった。また会計基準は企業の財務状況を忠実に表現するという目的に特化すべきと書いた。ここから必然的に上記について次のような整理ができる。
① 税法は企業の実態を表現した財務諸表を税法の目的に照らして修正し課税所得等を求める方法を採用すべき。税法が会計基準自体に入り込んできてはいけない。
② 企業グループの実態を表わす方法と単独企業の実態を表わす方法(即ち会計基準)は、基本的には、同じ方法になることが自然。
③ どうしても受け入れられないIFRSの規定はEUのようにカーブアウトすればよい。それが可能なアドプションの仕組みを持てばよい(既に財務諸表規則はそうなってる)。
もう少し具体的に記載すると、減価償却、特に耐用年数が、IFRSと課税所得計算で異なってくることが多いと思うので、二重帳簿にならざるを得ず、税法は確定決算主義を維持できない、或いは確定決算主義の例外とする扱いが必要になってくる。開発費や引当金も同様で、IFRSを採用するので課税所得が大きく変わるというのは本来おかしなことだ。税負担が公平かどうかとか、産業振興政策とか、そういうものは会計基準の問題とは別に定めるべきことで、会計基準が扱うテーマではない。税務当局がこの問題に連動してちゃんと解決すべきだし、そこが動かないのであれば政治の出番だ。
配当規制については上記に記載していないが、法務省としてはまず会計基準がどうなるか、それが決まったあとで、それに対応した適切な配当規制の在り方を検討するという考え方であることが、以前の企業会計審議会で述べられている。法務省の考え方こそあるべき姿だと思う。特に問題はないと思うので記載していない。
電力会社など別記事業に関しても同様だ。会計基準がIFRSに変わったら、それに対応した規則に変更すればよい。IFRSを採用したら電気料金が大きく変わりました、なんてことが適切な電気料金変更の理由になるとは思えない。
会計基準に絡んで様々な問題が連なって玉突き状態になっているわけだが、どの玉を突くのが良いか分かれば首尾よくゲームを終わらせることができる。しかし、今は複数の球を一緒に突こうとしているので解決が難しくなっているように見える。
もう一つ、単体開示を続けるかどうかだが、ほんの例外的に、例えば継続企業の前提に重要な不確実性があるケースで、法的な会社の単位の資金繰りが重要なこともあるが、それ以外は単体の開示が重要なことはあまりないように思う。むしろ、セグメントの開示を充実させた方が役立つのではないだろうか。セグメントをしっかり開示すれば単体は不要だと思う。
また、有価証券報告書の経理の状況以外の箇所、即ち財務諸表ではないところに、有報提出会社の売掛金や買掛金の主要相手先ごとの内訳や、保有している有価証券の銘柄の内訳を開示しており、投資家やアナリストには重要な情報となっているという。しかしこれは会計基準の問題ではないので、IFRSには関係のないことだ。
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