回収可能性の判断
NHKの番組「セカイでニホンGO!」で「優先席は必要か」という議論があることを知った。「優先席」とはみなさんもご存じの電車の車両に設けられている年配者などに優先して座ってもらう座席のことだ。不要と考える人は優先席があることでマナーが強制的なルールになってしまい、優先席以外で席が譲られにくくなると主張し、一方、必要と考える人は現実にそういう席がないと席を譲られずに困る人が出てしまうと主張した。理想論vs.現実論ということのようだ。
さて、投資や在庫の回収可能性、売掛金など金融商品の回収可能性は、会計基準でルールを定めて判断させるべきものなのだろうか。経営者、会社がその事業を遂行するために自ら当然に行わなければならない判断ではないだろうか。しかし、現実には会計ルールがないと放置され必要な評価損が計上されないケースが頻発する。そういうケースでは、事業上の問題も放置され、対策の遅れが事業のリスクを高め、さらに損失の増大を招くことがしばしばだ。そこで、やむなく会計基準を定めて資産評価を強制的に行うことになる。
しかし、もう一度あるべき姿に戻ることを考えてみよう、というのが僕の考えだ。会計ルールの前に事業上のリスク管理がある。事業上のリスク管理をした結果、必要な会計上の手当てを行う。これが本来の考え方であり、基本だ。
上記のテレビ番組では優先席不要とする考え方は、理想論だと反論されていた。僕の考え方にも同様の反論はあり得るが、しかし、企業経営の高度化・進化のためには理想論などではないと思っている。現実の問題として取り組むべき課題だ。原則主義のIFRSにそこに気付くきっかけ、既に気付いているとすればその改善に本腰を入れることに取り組むきっかけになってもらいたいと思う。
10/1の記事にある事例も会計基準にあったから経営者がメイン事業の先行きを心配して新規事業開発を行ったわけではない。10/7の記事にある減損処理もまずその事業の実態の理解があって、それを会計処理したに過ぎない。事業リスクの管理プロセスなしに、単純に会計ルールを形式的に当てはめて損失計上だけしても経営の役には立たない。
回りくどくて恐縮だが、いよいよ次回に、事業計画の策定や予算編成、そして予算統制のリスク管理的側面(IFRSの前提となる内部統制)と会計処理の関係についてを9/30に記載した記事(リスク管理体制~創業経営者の頭の中)と合わせて検討してみたい。
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