10月17日の企業会計審議会~日本の戦略的視点
「諸外国の情勢・外交方針と国際要請の分析」は、8/25に事務局から提示された11項目の検討項目のうちの一つだ。そして今回それをブレークダウンした5つの論点が事務局から提示されたわけだが、それを見ると激動する国際情勢、経済環境に日本としていかに対応していくか、即ち、会計分野に関する日本の戦略を検討しようとしているように思える。
この30年の大きな動きとしては、1980年代から連結決算(連結情報)、金融商品会計、リース会計、セグメント情報注記、税効果会計、退職給付会計、減損会計、キャッシュフロー計算書などが導入され、開示される財務諸表は単体財務諸表中心から連結財務諸表中心へ変わった。これらはいずれも国内要因によるものというより、海外要因によるもので、海外の会計基準へ追いつくための変更であったと思っている。なぜなら、今回のEUの同等性評価に至るまで日本企業の財務内容が分かりにくいという海外からの批判が常にあった。欧米企業は適切な情報開示をしているのに、日本企業はそれを怠っている。にもかかわらず日本企業が海外(欧米)進出をしているのは競争条件が不平等で不公正だとか、欧米の投資家が日本企業に投資しにくいといった批判だ。したがって、能動的・主体的に変化を起こしたというより、受動的に変わらされてきた印象がある。
しかし今回の議論は、会計分野に関する日本の戦略をもっと能動的なものに変えていこうとしている印象がある。日本はこうしたい、だから会計基準はこうあるべきだ、国際的にもこうすべきだ、と主張していく日本に変わっていこうと考えているように思える。2009年6月の中間報告のスケジュールに間に合うなら、これは日本代表チームのみなさんに是非やっていただきたい議論だと思う。
ただ、ふと考えてみると「日本はこうしたい」というその中身はなんだろうか。日本はどうしたいのか、そのイメージが湧かないので困ってしまった。
実は別に書こうと思っていてまだ書いてないことに、「TPP交渉に参加するかという議論と日本がIFRSの開発に参加するかという議論の奇妙な類似点」というテーマがある。反対派はどちらも国際的なコミュニケーションの枠組み(TPP、IASB)を拒否しているようだし、議論は工業分野がどうだとか、農業分野がどうだとか、個別分野、個別論点に終始していて、日本全体としての戦略論が見えてこない。そんな時にTwitterのCPA_JAPAN氏のツイートで田原総一朗氏のブログ「TPPは米国のアジア戦略、損得の話ではない」を読むことができた。これにはTPP参加問題について、日本の戦略的な視点が提示されていて、非常に参考になった(http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20111018/287801/?utm_source=twitterfeed&utm_medium=twitter)。
田原総一朗氏は、TPPへの参加は個別産業分野の損得で決めるのではなく、中国が国力を急速に拡大するアジア太平洋地域で、TPPを戦略的に利用して中国に対抗しようとしている米国との関係、そして中国との関係から日本の立ち位置を決める次元の違うより重要な事案として考えるべきだと指摘されている。まだ読まれていないみなさんには、是非ご一読されることをお勧めする。
翻って会計基準の問題、IFRSに関連して日本の戦略はどうか。続きは明日記載したい。
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