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2011年11月30日 (水曜日)

IFRSの資産~償却資産と減損1

果たして売掛金と償却資産(固定資産)は減損でつながっているのだろうか。

最初から種明かしをすると、ご存じのとおり日本でも固定資産には減損会計が適用されているし、IFRSも同じだ。そして実はIFRSでは貸倒引当金、貸倒損失のことも「減損」と表現されている。さて、両者はたまたま名前が同じなのか、それとも関連があるのか。もちろん後者だ。(IFRSには金融商品に関連して「償却原価」という言葉もある。)

もう一つ、固定資産の減損会計は日本基準とIFRSで相違する部分があるが、その底流にある考え方の違いはなんだろうか。ここに資産に対するIFRSのスタンスが見えてくる(これは後日)。

 

(売掛金と減損)

ご存知の方も多いと思うが、現在IASBはリーマンショックの反省から金融商品の会計基準であるIAS39号を改定し、金融資産の分類及び測定、金融負債の分類及び測定、金融商品の認識の中止、減損、および、ヘッジ会計に分割して改定プロジェクトを進めている。このうち金融資産の分類及び測定に係る基準(IFRS9号)はすでに確定しているが、減損を含めあとのものは、よりシンプルな分かりやすいものにするためにまだ改定作業中だ。

 

このような事情もあって、償却原価および減損については特徴について大雑把な説明をする。

 償却原価で金額を測定する資産に減損を適用する。両者はセット。

 償却原価は、市場性があるなど売買によって換金でき公正価値評価される資産以外の金融資産に対し適用される。

 よって減損は、公正価値で評価されない金融資産に適用される。

上記、①~③も随分ラフな説明だと思うが、それでも面倒だと思う方は、取得した時点で誰からCashを回収するかを契約によって特定できるような金融資産は減損が適用される、というのでもよいかもしれない。例えば売掛金、貸付金、市場性のない社債、満期まで保有する社債などが減損の対象となる。これらは金融資産を取得した時点で、誰から、どのタイミングで、いくら回収するというスケジュールが決まっている。それに対して公正価値で評価される金融資産は、短期売買する有価証券や、株式のように売却によってCashが入ってくる可能性の高い資産、或いは、最終的には売却される資産といってよいと思う。

ということで、売掛金は減損の対象となる資産だ。基本的には公正価値評価はしない。

 

(償却原価と償却資産)

いずれにしても(公正価値評価するものも償却原価が付されるものも)、金融資産は金を生むことが前提となっている。それはIFRSの資産の定義、僕の簡単な定義でよいが、それにマッチしている。ただ、公正価値で評価されるものは最終的に誰かのCashと交換されるが、償却原価で評価されるものは相手が契約を履行することでCashとなる。その際前者は売買益を期待するが、後者に対しては金利による運用益を期待する。後者については取得時点で元本および利息などについて契約などによって将来キャッシュフローを見積もることができるので、当初投資額に対するリターンという形で運用成績を測ることができる。そこで、複利計算によるこの運用収益率を実効金利として、実効金利が毎期実現されるように将来キャッシュフローを実効金利で割り引いて決めた簿価が償却原価だ。

 

このように償却原価を決めるので、償却原価を付した金融資産は、その後償却原価に固定の実効金利を乗じた金額を毎期運用収益として計上し、最終的に元本が回収されて帳簿から消える。このような処理は、有形固定資産などの償却資産に毎期償却率を乗じて費用化し(費用化された減価償却費は対応する収益で回収され)、経済耐用年数経過後に処分されて処分時の収入と残存価額が相殺されて帳簿から消えていく減価償却と似ていなくもない。償却原価によって評価される金融資産と、償却資産(固定資産)は生み出す損益が逆方向(一方は収益を生むが、もう一方は費用)というだけで、ほぼパラレルな処理となる。

 

ちょっと説明が複雑になってしまったので、もっと直感的に表現すると、いずれも投資時に投下資本を回収するスキームが決まっており、将来キャッシュフローによって利益を生むと期待できるので、それに沿って計画的・規則的に収益計上したり、費用計上したりする。その計画的・規則的にという共通部分が、「償却」という言葉で表されている。かつ、いずれも取得時の支出額をベースに(多少の加工をして)簿価を決めるので、両者は取得原価主義の会計処理であると説明されている。償却原価と減損がセットと書いたが、実は取得原価主義と減損がセットになっている。

 

なお、売掛金については、通常売上割引以外は金利を生むと期待していないが、回収期間が短いため実効金利0とされた金融資産と考えればよい。(だが、もし長期になれば、金利を擬制して実効金利による割引計算で簿価を計算する可能性も当然想定され、その際は費用が計上される。)

 

(減損)

減損は、投資額を将来キャッシュフローで回収できない場合に、回収可能額まで簿価を減額し損失を計上する会計処理だ。固定資産の場合は、取得した資産を利用した事業が期待した将来キャッシュフローを実現できないと見込まれる場合に減損損失が計上されることとなる。金融資産もまったく同様に、その金融資産に期待した将来キャッシュフローが実現できない見込みとなった時に減損処理が行われる。

 

固定資産の「期待した将来キャッシュフローが実現できない場合」とは事業が不振なときということだが、金融資産の「期待した将来キャッシュフローが実現できない場合」とはどういう場合だろうか。それは相手が契約を履行しない場合、債務不履行の場合、即ち、貸倒が予想される場合となる。

 

IFRSは資産を金を生むものとしているので、以上のように、公正価値評価する金融資産であろうが、償却原価を付す金融資産であろうが、償却資産(固定資産)であろうが、金を生まないと判断された部分はどんどん損失計上する。資産は金を生むものというIFRSの定義は、含み損を決して許さないというスタンスを表わしたものと考えることができる。

 

次回は、この「どんどん」という部分を、日本の減損会計との違いから見ていくことにしよう。スタンスの強さが見えてくる。

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コメント

よろしくお願いします。Google検索できました。突然申し分けございません。
売却可能証券の減損です。一部だけを抜粋しています。

IFRS基準で、税率は40%
(借)減損損失300
(貸)その他包括利益180
(貸)繰延税金費用120

この仕訳の根拠がわかりません。

(借)減損損失 300
(借)繰延税金資産120
(貸)その他有価証券300
(貸)繰延税金費用120

梟さん、こんばんは。
2つ仕訳がありますが、下は日本基準の仕訳ですか?それがIFRSだと上の仕訳になるということでしょうか。
僕も良く分かりませんが、上の仕訳は日本基準でいったん資本直入した評価減相当額を、強制評価減(=減損)するような感じですね。
もし差支えなければ、もう少し詳しく教えてください。

管理人さん すばやい対応ありがとうございます。

>>(借)減損損失300
(貸)その他包括利益180
(貸)繰延税金費用120

この仕訳は修正仕訳の一部です。

日本基準は
(借)その他有価証券評価差額金 282
(借)有価証券評価損320
(借)繰延税金資産316

(貸)その他有価証券790
(貸)法人税等調整額128

IFRSは
(借)その他包括利益470
(借)有価証券評価損320
(貸)その他有価証券790

(借)繰延税金資産188
(借)繰延税金資産128
(貸)その他包括利益188
(貸)繰延税金費用128

(借)有価証券評価損440
(貸)その他包括利益264
(貸)繰延税金費用176

IFRSへの修正仕訳として

(借)その他包括利益282
(借)有価証券評価損440
(借)法人税等調整額128

(貸)その他有価証券評価差額金 282
(貸)その他包括利益264
(貸)繰延税金費用128
(貸)繰延税金費用176

仕訳だけであればわかりにくいでしょうか。

日本基準は正確に示せば
(借)その他有価証券評価差額金 470
(借)有価証券評価損320

(貸)その他有価証券790

(借)繰延税金資産188
(借)繰延税金資産128
(貸)その他有価証券評価差額金188
(貸)繰延税金費用128

といった感じです。

なるほど、IFRSへの修正仕訳だったんですね。
だとすれば、上の仕訳は、過去の時価の下落で資本直入した分の振替ですね。御社では繰延税金資産と負債を相殺して繰延税金資産が計上されていますね?だから繰延税金費用120が借り方に計上されているのでしょう。
下の仕訳は当期時価が下落した分で、普通の減損の仕訳になっています。

仕訳を見たのは久しぶりです。実は簿記は得意ではありません。(^^;;

本当に助かります。
日本基準で
(借)その他有価証券評価差額金 470
(貸)その他有価証券470
そのうち、IFRS基準では440を減損を適用した。

その中でIFRS修正仕訳で、
(借)その他包括利益282
(貸)その他有価証券評価差額金 282
としているのはその他有価証券評価差額金勘定は現在の日本基準で存在するのですが、上記の仕訳
から、包括利益計算書が日本に導入される前のことでしょうか。つまり、現在の日本基準とIFRSと比較すれば、この修正仕訳はいらない

また
(借)法人税等調整額128
(貸)繰延税金費用128
となっているのはどういうことでしょうか。

梟さん、監査人の習性として、仕訳を一つ一つを検証するより、結果を直接確認します。即ち、P/L上の減損金額はいくらであるべきか、B/S上の(売却可能)有価証券残高はいくらであるべきか、繰延税金関係はどうなるべきかを考えて、それと実際の会計処理結果を照合します。(それで簿記が苦手になっていくのです。)
ただし、それをするには、その会社の幅広い情報が必要です。例えば実査結果に時価評価を行って有価証券残高を集計するとか、その取得原価や前期末の簿価(時価)の情報などなど。もし、そういう情報が手元にあれば、それとB/S、P/Lの金額が合うかどうか確認されてはいかがでしょうか。

梟さんは一つ一つ意味を考えながら積み上げていくのが得意のようですね。しかし、上記のように結果を押さえてから、個々の仕訳を見ると、個々の仕訳も意外と分かりやすくなるかもしれませんね。

中途半端な回答で済みませんが、具体的な金額付の個々の仕訳が良いか悪いかは、実際の取引や状況・事象、時には会社の管理システムの特徴などのイメージがつかないと言い辛いのです。それが監査人の習性です。あしからず。

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