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2011年11月 1日 (火曜日)

IFRSの資産~会計上の「資産」とは

2011/11/1

しばらく、IFRS導入論議について記載してきたが、これをこのまま続ける前に、もう少しIFRSの基本を勉強したいと思う。それは資産についてだ。みなさんはすでに資産と負債の差額で純資産を計算し、その期首と期末の増減差額で期間損益計算するというIFRSの資産・負債アプローチをご存じのことと思う。すると資産と負債のことが分かれば損益計算も分かってしまうことになる。さらに負債は資産のちょうど反対のイメージだから、資産が分かれば損益計算まで分かってしまうことになる。だから資産について勉強してみよう。

 

IFRSに書いてある資産の定義は以下の通りで、ちょっと取っ付き難いと思う。

「資産とは,過去の事象の結果として企業が支配し,かつ,将来の経済的便益が当該企業に流入すると期待される資源をいう。」

前半と後半に分かれていて、前半はその企業が資産を所有・支配・使用することのその時点での正当性を表現し、後半はその資産が経済的便益、即ちお金によって裏付けられていることを表現していると僕は思っている。よって簡単に書くと、「金を生むもの」を資産と言っている。

 

また「期待」という言葉も会計用語と思った方が良い。「思い」や「気持ち」、ましてや「夢」だけでは資産にならない。もっと具体的に「金」に結びついていないと「期待される」とは言わない。「金」になる可能性が低いもの、定かでないものは資産ではない。この辺りが一般的な「資産」という言葉と「財務情報としての資産」の相違する部分で、難しいところだ。

 

例えば、よく、「人は財産」と言われる。しかし会計上はそれがスティーブ・ジョブズ氏であっても「人」を資産計上することはない。「人が行動することで価値が生まれる」ので根源たる「人」自体に価値認識してもよいと思われる方もいらっしゃるかもしれないが、人身売買をするのでもなければ会計上は「人」を資産計上することはない。

 

人は、うまく行動すればお金を稼ぐがいつもうまく行動するとは限らないし、うまく行動するといってもその行動の具体的な内容やタイミングで、稼げる金額や稼げる可能性は相当異なってくる。だが、人の行動内容やタイミングが特定され、それでお金が入ってくることが確実な場合は、資産価値を認識する。例えばどれぐらい特定されることが必要かというと、売掛金や貸付金は、相手が支払いという行動をすることが契約されているので約束された支払額をとりあえず資産計上する。或いは、「発注」という行動だけでは資産計上しないが、それが納品されて具体的な「もの」になった場合は、その「もの」を(その換金価値を上限として)棚卸資産として資産計上する、といった具合だ。

 

この辺りまでは日本基準も同じなので、会計をちょっとでも知っている人はあまり違和感を感じないだろう。でも「じゃあ、固定資産はどうなるのか。これも換金価値なのか。減価償却や(償却後)簿価とはなんなのか」と思われた方は鋭い。この辺りから難しくなってきて、日本基準とIFRSとのズレも出てくるところだが、次回以降に譲る。

 

とりあえず今回は「資産とはお金になるもの」と頭に入れていただき、お金にならないのに帳簿に載っている資産、或いは帳簿上の評価額ほどの価値がない資産は不良資産、ということを改めてご確認いただきたい。不良資産は減損される。

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