IFRSの資産(まとめ)~将来キャッシュフローの見積もりの影響範囲
将来キャッシュフローについては、その影響の大きさ、見積もりの種類、見積もりへ臨むスタンスについて記載してみたい。今回はその影響の大きさについてだ。
繰返しになるが、金を生むものを資産として「認識」する。では「いくらで計上するか」について、会計上は「測定」の問題という。「いつ認識」して、それを「いくらで測定」するかが決まれば、伝票を起票する基本情報が得られる。IFRSでは、いつ金を生むものとしての要件が整うかが認識の問題であり、将来キャッシュフローの現在価値がいくらになるかが測定の問題、それを期末のB/S項目についていえば評価の問題となる。
<IFRSでの主な資産の評価基準>
現金 (公正価値)
金融商品 ・・・・・・・・・・・・・・・・公正価値(活発な市場のあるもの、ないもの・・・評価技法を使う)
取得原価(償却原価・減損)
棚卸資産 ・・・・・・・・・・・・・・・・取得原価(低価法)
有形固定資産 ・・・・・・・・・・・・取得原価(減損)
公正価値(再評価モデル、企業結合取引、交換取引)
無形資産 ・・・・・・・・・・・・・・・・取得原価(減損)、
公正価値(再評価モデル、企業結合取引、交換取引)
上記のうち、黄色の背景を付けた項目は「将来キャッシュフローの見積もり」が関係する。ほぼすべての資産と言っても過言ではない。取得原価主義の資産は低価法、減損会計を通して将来キャッシュフローが関係するし、取得原価主義以外の項目、即ち公正価値の項目は、活発な市場があり、その市場価格をそのまま付す場合以外は、やはり将来キャッシュフローを見積もるから当然といえば当然だ。
日本の会計基準もコンバージェンスの結果、すでに上記に近づきつつあるが、IFRSは資産を金を生むものとしているので、将来キャッシュフローの見積もりと資産の評価が直感的によりストレートに重要であると感じていただけるだろうか。
一方、日本には確立された資産の定義はない。企業会計基準委員会の「財務会計の概念フレームワーク」に資産の定義があるが、これはさらなる進化を前提とした討議資料だ。とはいえ2006年12月という比較的最近公表されたものなのに、資産の定義は将来キャッシュフローと直接関連付けた表現ではない。IFRSとはスタンスが相違するのだろう。将来予測は投資家が自らの責任で行うべきで企業が提供すべきではないとしている。だが、コンバージェンスによって日本の会計にも確実性の不安な将来予測が入り込んでいる。そしてこの部分こそがIFRSを日本に導入する際の重要ポイント、意識改革が必要なテーマとなる。長くなるのでそれは次回へ回すことにする。
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