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2011年12月 5日 (月曜日)

IFRSの資産~償却資産と減損2

今回は、固定資産の減損会計について日本基準とIFRSの相違点を概観し、IFRSの資産観を探り出すことがテーマだ。

IFRSはB/S中心主義で、そのB/Sは金融商品のように公正価値評価中心の資産と償却資産(固定資産)のように取得原価をベースに簿価を決定する資産があり、その両者を結びつけているのは、将来キャッシュフローをベースとする「減損」であることを見てきた。したがって「減損」にこそ、IFRSの資産観が色濃く出ているはずだ。

 

(日本基準とIFRSの主な相違点)

10/7の記事にも概略を記載したが、僕が注目しているのは次の点だ。

 日本基準は3ステップ、IFRSは2ステップ

 減損の兆候では、日本基準は実績の悪化、IFRSは予算に対する実績の悪化

 減損損失の戻入は、日本基準は禁止、IFRSは必要(但し、のれんはダメ)

 

 日本基準は3ステップ、IFRSは2ステップ

日本基準の減損処理は、兆候・認識・測定の3ステップがある。すべての資産に減損テストを行うのではなく、兆候がある資産に対してのみ減損テストをする。よって、まず減損の兆候があるかどうかのステップがあるわけだ。兆候があると判定されたものは認識のステップへ進む。認識のステップでは割引前の将来キャッシュフローと資産の帳簿価額を比較し、資産の帳簿価額を上回る割引前将来キャッシュフローが期待できればOKだが、期待できなければ次の測定のステップへ進む。測定のステップでは割引後将来キャッシュフロー(即ち、現在価値)を見積もり、減損損失金額を算定し、伝票を起票する。

 

一方IFRSには、日本基準でいう認識のステップがない。ないというか、兆候のステップに実質的に取込まれていると考えて良いと思う。というのは次の②に関連するが、兆候のステップでIFRSが減損の兆候として例示している「予算に対する実績の著しい悪化」における「予算」は、その資産(投資)を回収する投資回収計画とリンクしているからだ。投資回収計画は将来キャッシュフローの見積もりとそう大きな違いはなさそうだ。したがって、予算比で著しい悪化をしているかを見ることで、日本基準の認識のステップもやっていることになる。

 

一方IFRSは、設備投資の意思決定時に投資の効果を試算するだけでなく、投資後も投資回収の状況をフォローすることを想定している。手間はかかるが、資産は金を生むものという資産の定義と一直線に合致している。

 

 減損の兆候では、日本基準は実績の赤字、IFRSは予算に対する実績の悪化

上述した通り、IFRSは、予算に対する実績の著しい悪化を減損の兆候の例に挙げている。ところが、日本基準のそれに当たる部分は「継続して赤字」となっている。日本基準は実務の手間を考慮して、実績の推移だけで兆候の判定ができるように工夫をした。そのために赤字が1年目であれば兆候に当たらないと判断できることになった。

 

一方IFRSは予算に対する実績の著しい悪化を例示しているので、悪化したその年度に兆候に当たってしまうことになる。したがって日本基準より猶予はない。

(ただ、使用価値算定の規程では、未決定のリストラや追加の改善・拡張投資の効果を見込んではいけないとしているが、オペレーションの改善効果については触れていない。悪化の原因がオペレーションの改善で除去でき、その改善策の実行可能性が高ければ、その改善効果を見込んだ将来キャッシュフローで簿価を回収できる限り、「著しい」とは判断しないのであろう。だが、これには予実差異分析をタイムリーに行っている必要がある。決算時に慌てて考えても改善策の実現可能性を評価できない。)

 

 減損損失の戻入は、日本基準は禁止、IFRSは必要(但し、のれんはダメ)

日本基準では一旦資産を減損すると、さらなる減損を計上する場合以外はその資産は放置されるが。一方IFRSでは、減損損失の原因が改善されていないか、逆サイドの兆候の有無のチェックが毎期必要で、兆候がある場合は回収可能金額を算定し、取得原価主義の範囲で戻入を行わなければならない。リストラや機能改善投資も、実際に実行されれば逆サイドの兆候となり、その改善効果は回収可能価額の算定に含められる。

 

これも面倒といえば面倒だが、減損の兆候のチェック項目と、この逆サイドの兆候のチェック項目はちょうどパラレルとなるため、両者を一緒にチェックすれば手間は大差ないだろう。だが、その効果は大きい。改善すれば改善によってなされたコスト削減や収益増加に加え、減損の戻入益も計上されるのだから。これを業績が変動すると嫌う人もいるだろうが、積極的に改善へ取組む誘因になる。

 

資産の定義との関係を考えると、これもストレートに合致する。日本基準では改善されるとある種の含み資産が生じることになる。保守的でよいとする考え方も捨てがたいが、資産の定義との関係ではIFRSの方が素直だろう。

 

以上をまとめると、IFRSは減損損失をより早期に計上し含み損を許さないし、含み益さえも許容せず、将来キャッシュフローと資産がストレートにリンクしている。資産は金を生むかどうかの観点からチェックされ続け、放置されることはない。「金を生むものが資産」という資産観は、単に会計基準の中の話ではなく、会計実務に携わらない一般従業員の方すべてにとって分りやすいし、日常業務の中でも大切な感覚なのではないだろうか。

 

さて、日本基準とIFRSの相違点は他にもある。例えば減損の兆候を示す例示としてIFRSには日本基準にない「時価総額が純資産額を下回る場合」というものがある。これはマーケットが、その企業の資産に含み損が生じている可能性を示したものかもしれないが、面白い考え方だ。これらについては、また個別基準として減損基準を検討する際に触れたいと思う。

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