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2012年1月

2012年1月31日 (火曜日)

ちょっと休憩-representation

日経新聞が1/22朝刊で「予測できた危機をなぜ防げなかったのか?」(マックス・H・ベイザーマン、マイケル・D・ワトキンス著、東洋経済新報社)を推奨していた。英語のタイトル「PREDICTABLE SURPPRISES」は、「それ分かってたんだよ~、でもやっちゃった」みたい語感があって、親しみと戦慄を覚えたので購入して読んでいる。原著は2004年に発刊されたもので、9.11同時多発テロやエンロンの粉飾事件など、その当時のアメリカの国家的な大問題(既に起こったもの、潜在的なもの)を題材にしている。政治資金規制法の問題は、ウォーターゲート事件までさかのぼっている。それらは防げなかったのか、これから防げないのか、それはなぜか。日本向けには、福島第一原発の事故やオリンパスの粉飾事件があったこの時期に翻訳されたものらしい。

 

内容も濃いうえに、日本語も難しくて、いまそれにかかりきりになっている。アメリカの大粉飾事件であるエンロン事件に関しては、その前後の監査人の独立性に関する監査法人ビック5(当時)とSEC(米国証券取引委員会)の戦い、日本の内部統制報告制度の基になったサーベンズ=オックスリー法の成立の経緯や規制の概要など、僕の関心を引く内容が満載だ。特に監査法人の監査先に対するコンサルティングを禁止する問題を「予測できた危機」の一つに挙げて論じているところは、EC(欧州委員会)でも改めて議論中でもあり、考えさせられる(まだ同意はしていないが)。

 

というわけで、暫くそちらに集中しようと思う。ちょっと、いやもしかしたら、かなりブログのペースが落ちますのでお許しください。

 

さて、いまは有用な財務情報の2本足のうちの1本である「忠実な表現」のシリーズを記載中なのでそれに戻ると、今回はその忠実な表現の英語である「faithful representation」について軽く一言記載したい。

 

faithful representation」は、「representation」であって「presentation」ではない(頭に「リ(re)」がついている)。両者を辞書で比較してみたが、「representation」には何かを代表する権利を持って話をするとか、事実を踏まえたものや付けがあるものを説明するといった語感があるようだ。一方で「presentation」は「説明」という行為に焦点が当たっている言葉のように感じた。もしかしたら「faithful」は強調に過ぎず、「representation」だけでも「忠実な表現」という意味なのかもしれない。ということで、「忠実な表現」には「リ(re/)」がついているのでお間違いなく。

2012年1月27日 (金曜日)

有用な財務情報とは~「継続性の原則」とは

継続性の原則は、もしかしたら企業会計原則の中でもっとも有名な原則かもしれない。

 

 「企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。」

 

なぜかというと、恣意性を排除するツールとして利用してきたからだ。あなたが経験豊かな経営者なら、部下の経理マンに「継続性の原則があるからダメです」と言われた経験があるだろうし、あなたが経理マンなら言ったことがあるはずだ。僕は何度もクライアントの経営者に言った。企業会計に携わる人はみんな知っている。

 

一度会計処理のルールを決めたら、毎期同じように繰り返して適用するというこのルールは、考えなくて楽だし、恣意性の排除という難しい問題に対処できるし、実に使い勝手の良い道具だ。上記の企業会計原則には注がついていて、次のように記載されている。

 

[注3] 継続性の原則について

 企業会計上継続性が問題とされるのは、一つの会計事実について二つ以上の会計処理の原則又は手続の選択適用が認められている場合である。

 このような場合に、企業が選択した会計処理の原則及び手続を毎期継続して適用しないときは、同一の会計事実について異なる利益額が算出されることになり、財務諸表の期間比較を困難ならしめ、この結果、企業の財務内容に関する利害関係者の判断を誤らしめることになる。

 従って、いったん採用した会計処理の原則又は手続は、正当な理由により変更を行う場合を除き、財務諸表を作成する各時期を通じて継続して適用しなければならない。

 なお、正当な理由によって、会計処理の原則又は手続に重要な変更を加えたときは、これを当該財務諸表に注記しなければならない。

 

ということで、この問題は財務情報の質的特性の冒頭で問題提起した比較可能性にも関係していることがお分かりだろう。ただ、IFRSは企業間比較、国際市場間比較も視野に入れているが、企業会計原則は「(同一企業の)期間比較」にしか触れていない。しかし、このシリーズではこの点ではなく、「正当な理由を探す姿勢」に注目する。デフォルメすると、企業会計原則は「会計方針を変更するな」と言っている印象だが、IFRSは「経済環境は変化しているのに、会計処理は同じでよいか(確認したか)?」と言っている印象なのだ。よって、これから詳しく検討する。

2012年1月26日 (木曜日)

有用な財務情報とは~「継続性の原則」のゆっくり滑り

今回からは前回記載した2点のうち、「② プロセスの選択と適用が正しいこと。」について掘り下げる。掘り下げていくとIFRSはますます適切な財務報告を行おうとする作成者側の高い意識が必要な会計基準であることが分かってくる。さらに進めて考えると、企業に高度なリスク管理体制(といっても一番は「意識の問題」だと思う)を求めていて、それが事業遂行に生かされることこそ、IFRSを導入するメリットだと思えるようになる(・・・かもしれない。少なくとも僕はそう思っている。)

 

すでに「財務報告の主役は将来キャッシュフローだ」などという、旧来の経理マンの常識から遠くかけ離れた記事(1/20財務報告の目的)を読んでこられた方は、あまり驚かないかもしれない。将来キャッシュフローの話は僕が言ってるわけではない。IASBが「概念フレームワーク」のなかで言っているのだ。減損などの一分野の話ではなく、財務報告全体の話として。

 

そんな突拍子もない目的を持ってしまったIFRSは見積もり項目が非常に多い。見積もりを適切に行うハードルは、みなさんの予想通り、というか心配している通り、相当高いところにある。もはや経理部が伝票を真面目に起こすだけではどうにもならない。企画部門や現場部門との連携強化と内部統制、特に事業計画策定とその遂行能力をアップするリスク管理能力の増強が多くの会社では必要になると思う(「IFRSの前提となる内部統制」カテゴリ・・・読まれる方は降順に並んでいるので注意してください)。

 

さて、復習はそれくらいにして、「継続性の原則」の話題に移ろう。

日本の会計基準でもコンバージェンスの一環として、平成2341日以降開始事業年度より企業会計基準第24号

「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」が適用された。その段落番号5には「会計方針は、正当な理由により変更を行う場合を除き、毎期継続して適用する。」と企業会計原則の一般原則である「継続性の原則」と同趣旨のことが書いてある。ならば何も変わっていないではないか?

しかし、IFRSには日本の「継続性の原則」に相当するような言葉が見当たらず、日本でも実は根底の考え方が「ゆっくり滑り」している。僕の考えでは②はそこに直接関係していると思う。この「ゆっくり滑り」はあまり語られていないかもしれないが、意識していないと実務で痛い目に会うと思うので詳しく書いていきたい。

2012年1月25日 (水曜日)

有用な財務情報とは~「忠実な表現」の最大化

前回は、見積もりがある以上、「完全」で、「中立的」で、「誤謬がない」ことを完璧に満たす「忠実な表現」はできても稀だが、これらを最大化するためにどう工夫するかが重要だというところで終わった。今回はその続きだ。経済実態を忠実に表現することは当たり前の姿勢として理解できるが、理解できることと実践できることは違う。それこそ重要ポイントだ。

 

これに関連しそうな部分を「概念フレームワーク」から下記に転記する。なお、中立性に関しては転記すべき記述が「概念フレームワーク」にない。ということは中立性は完璧に備えるべき要件だ。中立性は作成側の心の持ちようだから中途半端はなし。(冷たいようだが現時点では他に書きようがない。ここでは完全性と正確性に注意を傾けるべきと思う。それで道が開けると信じて。保守主義との関係については後日。)

 

(完全性に関連して)

一部の項目については、完全な描写には、当該項目の特質及び内容に関する重要な事実、それらの特質及び内容に影響を与える可能性のある要因及び状況、並びに数値的描写を決定するのに使用したプロセスなどが含まれることもある。(QC13

 

(正確性に関連して)

その見積もりの表現は、その金額が見積もりであるものとして明確かつ正確に記述され、その見積もりのプロセスの内容と限界が説明され、その見積もりを作成するための適切なプロセスの選択と適用の差異に誤謬が生じていない場合には、忠実となり得る。(QC15

 

僕は下記の2点に要約されると思う。

 ① 確からしさの程度までが分かるようなサポート情報を含めて説明を尽くすこと。

 ② プロセスの選択と適用が正しいこと(会計方針、価格モデルなど見積もり方法、業務フローや内部統制の設計など)。

 

利用者に経済実態を誤解させないために忠実な表現を行う。①はそのために開示する情報の種類や表現に気を使うということだ。一方②はもっと奥が深い。特に会計方針や見積もりと言えば日本では「継続性」が大原則だ。それが真実性の原則(相対的真実)を支える。ところがIFRSには「継続性」という言葉が見当たらない。果たして「継続性」なしに「真実(=経済実態)」を忠実に表現できるのか。

2012年1月24日 (火曜日)

有用な財務情報とは~基本的な質的特性「忠実な表現」の定義

二本足の2本目は忠実な表現だ。この言葉は一見して「何に忠実なのか」という疑問がわく。英語もfaithful representationでこの点が明確でない。IFRSの「概念フレームワーク」を見てみよう。

 

「財務報告書は、経済現象を言語と数字で表現するものである。有用であるためには、財務情報は、目的適合性のある情報を表現するだけでなく、表現しようとしている現象を忠実に表現しなければならない。」(QC12

 

このQC12の文章は2つのことを示していると思う。1つは経済実態に対して忠実だということ、もう1つはベン図のイメージで、目的適合性のある情報の集合と忠実な表現をされた情報の集合の重なった部分が有用な財務情報になるということだ(これについてはまた後日続きを記載する)。そうなるとどうしたら忠実な表現の円の中に入れるのだろうか。即ち忠実な表現の要件が気になってくる。それについて「概念フレームワーク」は次の3つの特性を有することだという。(QC12

・完全    :理解に必要なすべての情報を含むこと(QC13

・中立的   :歪曲、その他の操作が行われていないこと(QC14

・誤謬がない:誤謬や脱漏がなく、情報を生成するプロセスが正しく選択されている(QC15

 

面白いのは、これらを完璧に備えるのは「できても稀」と言っていることだ(QC12)。12/27の記事で見たようにIFRSには多くの見積もりがあるので、確かにこの3つを完璧に備えるのは無理なのだ(これが「信頼性」という言葉を使わなくなった原因かもしれない)。IASBとしてはこれらの特性を「可能な範囲で最大化」すると言っている。(QC12

 

見積もりに完璧はあり得ない。ではどう工夫して最大化するかだが、これは長くなるので次回に。ただ、1つ付け加えたいのは、この忠実な表現は作成者側の姿勢に関する特性になっているように思われるということだ。前回述べたように目的適合性は利用者のニーズに基づくもので、忠実な表現はそれに応える作成者側の姿勢。この2本足を交互に踏み出して財務報告の目的へ向かって歩いていく、というのが僕が持っている「基本的な質的特性」のイメージだ。

2012年1月23日 (月曜日)

有用な財務情報とは~基本的な質的特性「目的適合性」

二本足の1本目は目的適合性だ。目的適合性とは、単純に考えれば「目的に適うこと」だ。英語では一語で「relevance」と表記されており、その意味は「The property or state of being relevant or pertinent.Wiktionary」(性質や形が関連していたり、適切であること。)となる。そしてIFRSの「概念フレームワーク」は次のように言っている。

 

「目的適合性のある財務情報は、利用者が行う意思決定に相違を生じさせることができる。(Relevant financial information is capable of making a difference in the decisions made by users.)」(QC6

 

「ん、何を言っているの?」と思われた方が多いのではないか。僕もそうだった。そこで前回の財務報告の目的を思い出してほしい。すると上の文章が「目的適合性のある財務情報は、財務報告の目的に適っている。」となるのがお分かりだろうか。もう少し平たくすると「目的適合性のある財務情報とは、将来キャッシュフローの見通しを評価するために知らないと損する(有用な)情報だ。」と考えて良いのだと思う。

 

僕は思うのだが、この質的特性は、財務情報を利用者側から規定した内容になっている。そしてその利用者の欲しい情報とは、前回の財務報告の目的にあるように将来キャッシュフローの見通しを評価する材料なのだが、それは以下のとおりとなる。

  • 経営者及びその統治機構が企業の経済資源を効率的・効果的に使用して生み出すキャッシュの将来のインフロー
  • 契約や社会規制によって掛け取引の支払いや短期借入金の返済などに振り向けられる将来のアウトフロー
  • 長期借入金の返済や配当の支払いに分配されていく将来のアウトフロー
  • これらの結果として社内留保されるキャッシュという将来情報
  • これらの不確実な将来情報をサポートする過去の業績情報

 

「不確かな将来情報は不要で、過去の実績情報があれば十分」と考える方は、IFRSではなく20世紀型の取得原価主義会計がマッチしている。右肩上がりの時代はそれで良かった。しかし、そういう方でも企業と関係を持つのであれば、過去より将来の見通しこそを意思決定の拠り所とするだろう。そのとき足りない情報を自分で補うことになる。当事者の企業自身でさえ将来を見通すことが難しい時代なので、それを自力でやれるのは特殊な一握りの人々しかいない。しかし、それでは「一般目的の財務報告」にならない。

やはり「目的適合性」は、財務報告の目的、即ち利用者側のニーズとワンセットで理解すべきものなのだ。そう考えると英語では単に「relevance」の一語だが、ASBJが翻訳する際に「適合性」とか「関連性」と一語にせず頭に「目的」を加えて何に関連しているかを明示したことが味わい深く感じられる。

2012年1月20日 (金曜日)

有用な財務情報とは~財務報告の目的

改定後がなぜ2本足かというと基本的な質的特性が2つあるから(目的適合性、忠実な表現)だが、それでスタスタ歩けるのは両者の相性が非常に良いためだ。この2つがそろうと安定感があって、他の要素が付け足しでもよいと思えてくる。ところで、スタスタ歩くには歩く方向、目的地が定まってなければふらふらしてしまうので難しい。そこでこの2つを見る前にその目的地たる「財務報告の目的」について考えてみよう。

 

IFRSの概念フレームワーク(正確には「財務報告に関する概念フレームワーク」)の第1章は「一般目的財務報告の目的」となっていて、その頭の方で次のように定義している。

 

「一般目的財務報告の目的は、現在の及び潜在的な投資者、融資者及び他の債権者が企業への資産の提供に関する意思決定を行う際に有用な、報告企業についての財務報告を提供することである。」

 

この文章については「見覚えはあるが深く考えたことがない」という人が多いと思う。そこでこの機会に突っ込んでみよう。つまり一般財務報告の目的は「利用者の意思決定に役立つようにその企業についての財務情報を報告する」ことだが、「意思決定に役立つ財務情報」とは「①どんな意思決定」に「②どんな財務情報」が役立つのだろうか。そして「③役立つ」とは具体的に何か。関係個所を読んでみると①~③について次のように理解することができる。(末尾のカッコは概念フレームワークの該当段落番号なので、興味のある方はご参照ください。)

 

① 将来の正味キャッシュ・インフローに対するその企業の見通しを評価するのに役立つ情報が、出資や融資、掛け取引による信用の供与、及びこれらの維持、中止の意思決定に必要とされる。(OB3

② ①の見通しを評価するために必要な情報とは、企業の資源、企業に対する請求権、及び企業の資源を利用する責任をどれだけ効率的かつ効果的に果たしたかに関する情報。(OB4

③ その情報がなかった場合に比べて利用者が行う意思決定に相違を生じさせることができることが、役立つということ。(QC6

 

平たく言うと財務報告の目的は「それを知らないとその企業の将来キャッシュフローの見通しを良いとも悪いとも言えないので、読まないと損する(かもしれない)情報を提供すること」といったところだろうか。基本的な質的特性を考える上では、特に③の「違いを生じさせることができる」、即ち「読まないと損する」ところが重要になる。それは次回。

 

なお、この「一般目的財務報告の目的」の章には、他にもいろいろ突っ込みどころがある。例えば

 

  • 利用者とは具体的にだれのことか、特に政府は含まれないのか(・・・含まない。これは第1章の前の「序文」。)
  • 「一般目的財務報告」の「一般」とは何か(・・・実はIFRSが規程する財務情報の限界を表現している。)
  • 利用者が「企業が行った将来キャッシュフローの見通し」を評価するというが、企業は正しい将来キャッシュフローの見通しを開示しているのではないのか(・・・利用者は企業の財務報告以外の情報も加味して最終判断する。)
  • 価格や技術などの外部環境の変化やコンプライアンス対応もさりげなく財務情報(経営者の責任)に含めているがどこまで財務報告に含まれるのか(・・・これは直接利益の範囲、包括利益に関連してくる。)

 

などなど。

 

気を付けているのだが今回も長くなってしまった。これらは追々機会があれば触れたい。

2012年1月18日 (水曜日)

【オリンパスの粉飾】最後に・・・

 

1/17に監査役等責任調査委員会の報告書が開示され、これで取締役、監査役、監査法人への責任追及の会社のスタンスも定まった。これでひと段落した感じだ。この事件は、僕が監査から離れて初めて出会った本格的な粉飾事件というだけでなく、財テク、円高、バブルとその崩壊、会計ビックバン等々、僕が社会人になったころからの日本経済の変遷や様々な事象を改めて見返す機会を与えてくれた。オリンパスも僕も、確かに同じ時代を生きてきた。この事件で損害を被った方々には誠に申し訳ないが、僕にはそんな郷愁を誘う事件だった。

 

 

 

しかしそこに、変わらなかったことが二つある。それはオリンパスが隠した含み損と監査に対する期待ギャップだ。

 

 

 

ということで、これらについてこれからポツポツ書きたいが、みなさんの関心はそんなことより、この事件に関連する主な動きだろう。そこでこのシリーズの最後として、前回12/6の第三者委員会の調査報告書以降の動きをまとめてみよう。論評を交えず淡々と・・・。

 

 

 

                           
 

12/6 第三者委員会の調査報告書の公表
   

 
 

1980年代の財テクに端を発した損失を2001/3期の会計基準の改正後も「飛ばし」の手口で温存し続けたが、飛ばし先の隠しファンド資金の返済を迫られM&Aに関連した偽装取引でファンドを解消していく過程が記載された。これに関連した関係者(歴代の取締役・監査役、監査法人)の責任の有無についてレポートされていた。

 
 

12/7 取締役責任調査委員会、監査役等責任調査委員会の設置

 
 

第三者委員会の報告を受け、責任ありとされた取締役、監査役、監査法人、執行役員等に関する業務執行に関する法的責任を明らかにするための調査委員会を設置。(12/14にはタコ配に関する責任についても調査を追加して依頼。)

 
 

12/14 過年度の訂正有価証券報告書等、当第2四半期報告書を財務局へ提出

 
 

上場廃止基準への抵触を避けるため、本来の提出期限の1か月後のこの日までに第2四半期報告書を提出する必要があった。過去5年間の有価証券報告書、四半期報告書及びそれらの確認書もこの日までに訂正報告書を提出した。内部統制報告書についても、内部統制が有効でない旨、評価結果を訂正して再提出した。
      なお、監査法人も訂正後の財務諸表について監査報告書、レビュー報告書を再提出した。あずさ監査法人は適正意見としたものの、受け皿ファンド(隠しファンド)の評価等については意見表明の範囲から除いている(いわゆる範囲限定付適正意見)。新日本監査法人は無限定適正意見で再提出している。内部統制監査報告書は、会社の訂正内部統制報告書が制度上内部統制監査の対象外のため再提出なし。

 
 

1/10 取締役責任調査委員会の報告書公表

 
 

総額859億円の損害額を認定するとともに、個人別に退任した取締役を含めて責任の有無及び損害額を記載した。検討対象となった取引または事象、検討結果の概要は以下のとおり。
    ・飛ばしの実施、維持・・・
199億円
     (
107億円 内容は金利、ファンド手数料等/下山・岸本・菊川・山田・森)
     (
91億円 内容はITX株式の評価損/下山・岸本・菊川)
    ・隠しファンドの解消・・・
72億円/菊川・山田・森・川又・遊佐・降旗・寺田・長崎・大久保・藤田・千葉・柳澤・森嶌・高山・塚谷・林
     (内容は、国内3社株式取得やジャイラス買収にかかる高額の報酬支払等)
    ・
ウッドフォードの解任・・・責任認定せず
    ・不正発覚後の対応不備・・・
1千万円を下回らず/菊川・山田・森・中塚
     (内容は、不正を他の取締役に隠し、その結果会社に不適切な対応をさせたこと)
    ・有価証券報告書等の虚偽記載の責任・・・金額未確定/菊川・山田・森・中塚
     (内容は、今後科される罰金の負担、虚偽記載による株主への損害賠償訴訟。)

 

・タコ配、自己株式取得・・・587億円/菊川・山田・森・中塚
     (内容は会社法上の資本充実義務違反)

 
 

同日 上記報告書を受けての適時開示

 
 

監査役会は、全員一致で報告書の内容に従って損害額の一部についての損害賠償請求訴訟を1/8に東京地裁へ提訴。請求額については各取締役の支払い能力や各責任原因に対する関与の度合い等を考慮したとしている。請求額の総額は361千万円。

 
 

1/17 監査役等責任調査委員会の報告書公表

 
 

総額46億円の損害額を認定するとともに、個人別に調査対象者の責任の有無、損害額を記載した。責任ありとされたのは、太田、今井、小松、島田、中村の各監査役。監査法人、執行役員は責任なしとされている。山田は取締役として責任追及されるとして対象外となっている。

 
 

同日 上記報告書を受けての適時開示

 
 

取締役会は、報告書の内容に従って損害額の一部についての損害賠償請求訴訟を1/16に東京地裁へ提訴。請求額については各取締役の支払い能力や各責任原因に対する関与の度合い等を考慮したとしている。請求額の総額は10億円。なお、上記のうち島田氏、中村氏はいわゆる社外監査役だが、他の監査役と同様請求額は5億円とされた。

 

 

 

 

最後にどうしても触れておきたいことがある。監査役等調査委員会報告書の最後に「最後に」というタイトルの文章がある。以下、そこを全文転記する。

 

 

 

4 最後に

 

本件においては、本件国内3社の株主取得及びジャイラス買収に係るFA報酬としての株式オプションの優先株への交換に関する監査役等の責任を判断する中で、専門家の意見書又は、調査報告書がそれぞれ重要な要素となっている。しかしながら、2009年委員会報告書も井坂公認会計士事務所の事業価値算定書においても、いずれも極めて限定された特異な前提を置き、作成されたものである。

 

当時の関係者が、このような前提条件を十分理解せず、その結論を重視していることは、事後的な法律の専門家の判断としては、不注意ないし軽率とみられることはあるが、その分野の専門家ではない監査役や会計監査人においては、それらの不自然さに思い至らないことをもって、直ちに注意義務に違反するとすることはできない。言い換えれば、本件の首謀者は、巧妙に専門家の意見や調査報告書を操って、違法行為を隠蔽していたといえるのである。

 

 

 

これを読んで首謀者たちの悪質さには同感するし、監査人の実情を理解されていると思うのだが、一方で僕は悲しい、寂しい、やるせない。大監査法人がこれに甘んじてよいのかと思うのだ。

 

 

 

以上は、民事上の責任を問うたものであり、刑事罰(特別背任)については捜査が進行中だ。また上場会社の経営者としての評価は法律だけで測れるものではない。社会的、道義的な責任を含めて考える必要がある。

 

2012年1月17日 (火曜日)

有用な財務情報とは~質的特性の改定

まず、改定前と改定後をざっと比べて改定の概略を見てみよう。改定前の質的特性はいろんな形の4本の足で歩いていた、強いて言えば4本足のタコが歩くようなものだったが、改定後は手や頭など4つの器官でバランスを取りながら2足歩行でスタスタ歩いている感じだ。

 

改定前は「主要な質的特性」として、「理解可能性」、「目的適合性」、「信頼性」及び「比較可能性」の4つが掲げられていた。そして「目的適合性」に関連して、重要性が、「信頼性」に関連して、表現の忠実性、実質優先、中立性、慎重性、完全性の5要素が説明され、「目的適合性」と「信頼性」の両方に対する制約として適時性(やコストとベネフィットの関係)が説明されていた。

 

2010年の改定後は、2つの基本的な質的特性(目的適合性と忠実な表現)と4つの補強的な質的特性(比較可能性、検証可能性、適時性、理解可能性)に分類されたので、メインとサブの関係も、特性間の関連付けも、すっかりシンプルになった。ここまで変わると個々の言葉の意味も変わったのに違いない。磨り潰して練って、別の団子を作ったようなものだ。特に表現の忠実性、実質優先、中立性、慎重性、完全性の5要素を従えていた「信頼性」というメインの質的要素は、完全に磨り潰されて改定後は臭いさえ残っていない感じだ。

 

したがって、個々の言葉、即ち「目的適合性」や「忠実な表現」についても先入観なく内容を理解しなければならない。

 

2012年1月16日 (月曜日)

有用な財務情報とは~基本的と補強的

質的特性には次の2種類があった。

  • 基本的な質的特性(fundamental qualitative characteristics)・・・目的適合性(重要性を含む)、忠実な表現
  • 補強的な質的特性(enhancing qualitative characteristics)・・・比較可能性、検証可能性、適時性、理解可能性

 

英語だと「fundamental」と「enhancing」だが、前者は根本的な、基礎的な、抜本的なといった意味で、後者は拡張、強化、促進など、もともとあるものを高める意味だ。したがって単語の意味としては両者の関係は明確だ。fundamentalは必須で欠けてはならない必要条件、enhancingの方は付加価値のようなもので、あればあるに越したことはない十分条件。そこでASBJは「基本的な」と「補強的な」という日本語に訳している。

 

そこまでは良いのだが、問題は、なぜ比較可能性や検証可能性などが補強的なのかということだ。

 

例えば比較可能性について記載すると、IASBはその前身IASC時代に証券監督者国際機構(IOSCO)から1987年9月に指摘されて以来、一貫して比較可能性を実現するために粉骨砕身してきた。1980年代後半といえば日本マネーが世界を駆け巡って“脅威”とさえ言われた時代だが、駆け回っていたのはもちろん円だけではなかった。資本市場がグローバル化し、世界共通の投資尺度となるような会計基準が求められるようになっていた。

 

IASC(国際会計基準委員会)が1973年に発足の後、ようやくその時代になって国際会計基準が証券監督者国際機構の目に留まった。しかし、証券監督者国際機構は注目はしたものの、全然ダメと評価した。同一の経済事象に対して多様な会計処理が認められていたため、国際的な市場間の比較だけでなく、企業間の比較もできない、即ち、比較可能性がないので国際統一基準になりえないと指摘されたのだ。このあたりは日本公認会計士協会のホームページに詳しい。だから、IFRSの前身であるIAS(国際会計基準)の時代から、比較可能性は基本中の基本で、IASBのDNAには比較可能性は絶対的な必要条件だと刷り込まれていると思っていた。

 

しかし、今やそういうことではなくなったらしい。実は、この部分は米国財務会計基準審議会(FASB)との合同作業の結果、2010年9月に公表された「概念フレームワーク」の第3章「有用な財務情報の質的特性」に置き換えられたところだ。この比較可能性や検証可能性、そして適時性や理解可能性の4つを脇役に追いやった「目的適合性」と「忠実な表現」とはいったい何者だろうか。逆に基本的な質的特性とされた「目的適合性」と「忠実な表現」をじっくり見ていく必要がある。

2012年1月13日 (金曜日)

有用な財務情報とは~質的特性

これは基礎中の基礎、あまりに当たり前だけにマニアにしか注目されない、みんなが読み飛ばしてしまうところじゃないだろうか。ところが重要だ。これはIFRSの「概念フレームワーク」の資産や負債の定義の前に書いてある。

 

質的特性とは、財務情報として開示すべき情報かどうか、どのように開示するかを識別するために利用される「ものさし」のようなものと考えられる。次のものがあるとされている。

 

  • 基本的な質的特性(fundamental qualitative characteristics
              ☆目的適合性(重要性)、☆忠実な表現
             
  • 補強的な質的特性(enhancing qualitative characteristics
              ★比較可能性、★検証可能性、★適時性、★理解可能性

 

その結果、IFRSに基づいて開示された情報は、「基本的な質的特性」を有していることになるし、「補強的な質的特性」も有していれば言うことはないが絶対条件ではないということになっている。え~っ! IFRSは比較可能性が命ではなかったのか、検証可能性の乏しい情報を開示していいのか!!等々信じがたいことことになっている。

 

以前記載したように「適正表示の枠組み」の制度であるIFRSは、「要求された最低限の開示」を行えばよいという受動的な対応では済まされない。従来以上に「利用者に適切に理解してもらう」ことを目指さなければならない。そのとき何が適切なのかを判断する尺度のようなものがこれらの質的特性ということになるだろう。したがって、とても重要なことだ。しかし、とても抽象的でこれだけで具体的な判断ができるだろうか。それは無理だ!

 

というわけで、これからこれらについて掘り下げていきたい。

2012年1月10日 (火曜日)

持分(Equity)~会計用語のEquityって?

昨日は、英語のEquityに対立を解決するというニュアンスがあるのではないかと書いた。会計用語としてのEquityにもそれがあるのだろうか。

 

会計用語としてのEquityは「Ownership interest in a company as determined by subtracting liabilities from assets.(資産から負債を差引いて決められる会社所有者の利益)」となっている。なるほどIFRSの資産・負債アプローチと同じことを言っているが、利害対立を解決する具体的な印象はあまり見えてこない。

 

ところが、IFRSの「財務報告に関する概念フレーム―ワーク」のOB12という段落には次のようにある。

「一般目的財務報告書は、報告企業の財政状態に関する情報を提供する。これは、企業の経済資源(economic resources)および報告企業に対する請求権(claims)に関する情報である。」

経済資源とは資産とみて良いと思うが、請求権(claims)とはなんだろうか。日本語でクレームと言えば「文句をつける」みたいなイメージだが、英語のclaimは、所有権等の権利に基づく要求事項だ。即ち、財政状態に関する情報とは、まさに利害の衝突現場ということになる。

 

要するにB/Sは、会社の資産から生み出される将来キャッシュフローを債権者と株主で分かつ状況を表示するということだろう。資産が金を生み出し、負債にそれを優先して配分し、残りを株主が享受する。それが各資金提供者の権利に応じた資金の分配というものである。だからEquityは株主の公正な取り分であり、日本語ではそれを「持分」と表現している。

 

持分(Equity)~英語のEquityって?

少々遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。株安、円高、増税・・・。東日本大震災の被災地、被災者の生活も心理的、経済的に深刻なようです。他人に頼っても良くなりませんから、みなさま、自助努力を怠らぬよう、自助努力が実りますよう祈念しております。

 

さて、「資産」に区切りがついたので次に進むが、「負債」を飛ばして「持分」へ行こう。「持分」は資本の部のことだが、聞きなれないなあ、と思ったので、英語まで遡って「Equity」をネットで検索してみた。「Equity」ってなんだろう。

1. Ownership, especially in terms of net monetary value of some business.
(所有権、特に事業の正味の金額価値。)

2. (law) A legal tradition that deals with remedies other than monetary relief, such as injunctions, divorces and similar actions.
(法律用語。金額的救済ではなく差止請求や離婚などの処置に関する法的慣習。)

3. (law) Value of property minus liens or other encumbrances.
(法律用語。担保権などを差し引いた財産価値。)

4. (accounting) Ownership interest in a company as determined by subtracting liabilities from assets.

5. Justice, impartiality or fairness.
(公平、公正)

出典は『Wiktionary (2011/10/29 15:23 UTC )だが、日本語訳は僕。雑なので要注意。

 

5の公平、公正という意味があるのには驚いた。ちょっと会計用語の資本の部とはかけ離れている気がする。一方、1の正味の事業価値、3の担保権等を差引いた財産価値というのはうなづける。2は英米流の慣習法(判例主義)でも埋められない部分を公正や正義といった観点から補う法的な慣習を言うらしい(あまり自信はありません)。

 

どうも、Equityという言葉には対立を解決するというニュアンスがあるらしい。例えば1の「正味」、3の「担保価値を差引いた」というのはプラスの価値とマイナスの価値が混在して分かり難くなっているものをネットしてスッキリ分かりやすく表わすとか、2は正に利害対立をしている人たちが受け入れられる状況にするとか。

 

すると確かに5の公平、公正というのも、利害関係者に受け入れられる偏りのないバランスのとれた姿勢という意味なので関連がある。さて、では会計用語としてのEquityは?ということだが、これは明日に譲る。

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