有用な財務情報とは~基本的な質的特性「忠実な表現」の定義
二本足の2本目は忠実な表現だ。この言葉は一見して「何に忠実なのか」という疑問がわく。英語もfaithful representationでこの点が明確でない。IFRSの「概念フレームワーク」を見てみよう。
「財務報告書は、経済現象を言語と数字で表現するものである。有用であるためには、財務情報は、目的適合性のある情報を表現するだけでなく、表現しようとしている現象を忠実に表現しなければならない。」(QC12)
このQC12の文章は2つのことを示していると思う。1つは経済実態に対して忠実だということ、もう1つはベン図のイメージで、目的適合性のある情報の集合と忠実な表現をされた情報の集合の重なった部分が有用な財務情報になるということだ(これについてはまた後日続きを記載する)。そうなるとどうしたら忠実な表現の円の中に入れるのだろうか。即ち忠実な表現の要件が気になってくる。それについて「概念フレームワーク」は次の3つの特性を有することだという。(QC12)
・完全 :理解に必要なすべての情報を含むこと(QC13)
・中立的 :歪曲、その他の操作が行われていないこと(QC14)
・誤謬がない:誤謬や脱漏がなく、情報を生成するプロセスが正しく選択されている(QC15)
面白いのは、これらを完璧に備えるのは「できても稀」と言っていることだ(QC12)。12/27の記事で見たようにIFRSには多くの見積もりがあるので、確かにこの3つを完璧に備えるのは無理なのだ(これが「信頼性」という言葉を使わなくなった原因かもしれない)。IASBとしてはこれらの特性を「可能な範囲で最大化」すると言っている。(QC12)
見積もりに完璧はあり得ない。ではどう工夫して最大化するかだが、これは長くなるので次回に。ただ、1つ付け加えたいのは、この忠実な表現は作成者側の姿勢に関する特性になっているように思われるということだ。前回述べたように目的適合性は利用者のニーズに基づくもので、忠実な表現はそれに応える作成者側の姿勢。この2本足を交互に踏み出して財務報告の目的へ向かって歩いていく、というのが僕が持っている「基本的な質的特性」のイメージだ。
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