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2012年1月16日 (月曜日)

有用な財務情報とは~基本的と補強的

質的特性には次の2種類があった。

  • 基本的な質的特性(fundamental qualitative characteristics)・・・目的適合性(重要性を含む)、忠実な表現
  • 補強的な質的特性(enhancing qualitative characteristics)・・・比較可能性、検証可能性、適時性、理解可能性

 

英語だと「fundamental」と「enhancing」だが、前者は根本的な、基礎的な、抜本的なといった意味で、後者は拡張、強化、促進など、もともとあるものを高める意味だ。したがって単語の意味としては両者の関係は明確だ。fundamentalは必須で欠けてはならない必要条件、enhancingの方は付加価値のようなもので、あればあるに越したことはない十分条件。そこでASBJは「基本的な」と「補強的な」という日本語に訳している。

 

そこまでは良いのだが、問題は、なぜ比較可能性や検証可能性などが補強的なのかということだ。

 

例えば比較可能性について記載すると、IASBはその前身IASC時代に証券監督者国際機構(IOSCO)から1987年9月に指摘されて以来、一貫して比較可能性を実現するために粉骨砕身してきた。1980年代後半といえば日本マネーが世界を駆け巡って“脅威”とさえ言われた時代だが、駆け回っていたのはもちろん円だけではなかった。資本市場がグローバル化し、世界共通の投資尺度となるような会計基準が求められるようになっていた。

 

IASC(国際会計基準委員会)が1973年に発足の後、ようやくその時代になって国際会計基準が証券監督者国際機構の目に留まった。しかし、証券監督者国際機構は注目はしたものの、全然ダメと評価した。同一の経済事象に対して多様な会計処理が認められていたため、国際的な市場間の比較だけでなく、企業間の比較もできない、即ち、比較可能性がないので国際統一基準になりえないと指摘されたのだ。このあたりは日本公認会計士協会のホームページに詳しい。だから、IFRSの前身であるIAS(国際会計基準)の時代から、比較可能性は基本中の基本で、IASBのDNAには比較可能性は絶対的な必要条件だと刷り込まれていると思っていた。

 

しかし、今やそういうことではなくなったらしい。実は、この部分は米国財務会計基準審議会(FASB)との合同作業の結果、2010年9月に公表された「概念フレームワーク」の第3章「有用な財務情報の質的特性」に置き換えられたところだ。この比較可能性や検証可能性、そして適時性や理解可能性の4つを脇役に追いやった「目的適合性」と「忠実な表現」とはいったい何者だろうか。逆に基本的な質的特性とされた「目的適合性」と「忠実な表現」をじっくり見ていく必要がある。

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