有用な財務情報とは~「継続性の原則」とは
継続性の原則は、もしかしたら企業会計原則の中でもっとも有名な原則かもしれない。
「企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。」
なぜかというと、恣意性を排除するツールとして利用してきたからだ。あなたが経験豊かな経営者なら、部下の経理マンに「継続性の原則があるからダメです」と言われた経験があるだろうし、あなたが経理マンなら言ったことがあるはずだ。僕は何度もクライアントの経営者に言った。企業会計に携わる人はみんな知っている。
一度会計処理のルールを決めたら、毎期同じように繰り返して適用するというこのルールは、考えなくて楽だし、恣意性の排除という難しい問題に対処できるし、実に使い勝手の良い道具だ。上記の企業会計原則には注がついていて、次のように記載されている。
[注3] 継続性の原則について
企業会計上継続性が問題とされるのは、一つの会計事実について二つ以上の会計処理の原則又は手続の選択適用が認められている場合である。
このような場合に、企業が選択した会計処理の原則及び手続を毎期継続して適用しないときは、同一の会計事実について異なる利益額が算出されることになり、財務諸表の期間比較を困難ならしめ、この結果、企業の財務内容に関する利害関係者の判断を誤らしめることになる。
従って、いったん採用した会計処理の原則又は手続は、正当な理由により変更を行う場合を除き、財務諸表を作成する各時期を通じて継続して適用しなければならない。
なお、正当な理由によって、会計処理の原則又は手続に重要な変更を加えたときは、これを当該財務諸表に注記しなければならない。
ということで、この問題は財務情報の質的特性の冒頭で問題提起した比較可能性にも関係していることがお分かりだろう。ただ、IFRSは企業間比較、国際市場間比較も視野に入れているが、企業会計原則は「(同一企業の)期間比較」にしか触れていない。しかし、このシリーズではこの点ではなく、「正当な理由を探す姿勢」に注目する。デフォルメすると、企業会計原則は「会計方針を変更するな」と言っている印象だが、IFRSは「経済環境は変化しているのに、会計処理は同じでよいか(確認したか)?」と言っている印象なのだ。よって、これから詳しく検討する。
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