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2012年2月28日 (火曜日)

有用な財務情報とは~「忠実な表現」と「比較可能性」の前に固定資産に寄り道

いよいよ、IFRSと日本基準のスタンスの差が明確になるテーマに辿り着いた。IFRSはこの概念フレームワークと個別基準(IFRSIAS)が矛盾する場合は個別基準の適用を優先するとされている(概念フレームワークの「はじめに」)ので、多くの人は個別基準を見れば事足りると思っているかもしれない。しかし、それは間違いではないかと僕は思う。

 

日本では、減損会計について知りたいと思った人が、企業会計原則を見ることはないだろう。減損会計基準かその適用指針を見るはずだ。それは企業会計原則に資産が何かについても、なぜ資産を減損するかについても書かれていないからだ。しかし、昨年11月からずっと書いてきたように、IFRSの概念フレームワークには、資産が将来キャッシュフローを生むものであることが書かれており、だからこそ、将来キャッシュフローを生まなくなった資産が減損される必要性が理解される。

 

今はさすがにないかもしれないが、昔よく聞いたのは、遊休土地の減損について「売らなければ損は出ないし損が出るくらいなら売らない。だから減損は不要」という意見だ。これには一理ある、というか、そのような意見を持つことは理解できる。なぜなら、日本基準に資産が定義されてないからだ。減損会計基準には遊休土地も時価(=将来キャッシュフロー)を見積もって簿価が上回れば減損するように記載されているのだが、なぜそうすべきかは「資産が何たるか」が決まっていないから基準からは分からない。だから「基準にはそう書いてあるが、我社のことではないだろう」と思ってしまう。

 

IFRSにおいても、減損の手続については、減損の個別基準であるIAS36号に記載されているから、何をやればよいかは個別基準だけ見ればよい。しかし、その意味は概念フレームワークに記載されている。その意味を理解せずに個別基準に書かれた手続だけをやっても正しい会計処理になるかは疑問だ。

 

例えば「回収可能価額」を超える簿価は減損損失に計上されるが、その「回収可能価額」は、資産(又は資金生成単位の売却費用控除後)の公正価値と使用価値のいずれか高い金額とされている(IAS36.6)。しかし、どんな時でもこの通りで良いというわけではないだろう。例えば収用される可能性が高い資産に使用価値を使ってはいけないだろう。なぜなら概念フレームワークに記載されているように、資産はその資産が生み出す将来キャッシュフローで測定されるからだ。実は、日本基準は細かいのでそこまで書いてある(減損会計適用指針の第28項や第31項)。一方原則主義のIAS36号には書いてないが、概念フレームワークとの合わせ技でこのように理解される。というか、概念フレームワークを理解していれば、仮にIAS36号の詳細を知らなくてもこの答えを導くことが可能だ。それほどに概念フレームワークを理解することは重要だ。

 

実は先の「売らなければ損は出ないし・・・」に似た話は、ついこの間の資産除去債務の会計基準を導入する際にも見られた。「ずっと使い続けるのだから資産除去債務を認識する必要はない」と。しかし、物には寿命があるし、条件の良いところが他にあれば移転、環境が悪化すれば撤退もある。永遠より永遠でない方の可能性が高いので、その時期をいつにするかは議論の余地があるものの、見積もりの対象から外すことはできない。少なくとも移転や撤退の可能性の変動については毎期チェックが必要だ。

 

だが、当面は移転や撤退の可能性がなく、かつ、それほど重要性がないとか、重要性がない割に数が多く手間がかかる場合などに、資産除去債務の見積もりを将来キャッシュフローの見積もりから控除して、減損テストすることで代替できないか。これなら償却計算や資産除去債務の事後変動の面倒な処理は避けられる一方で、いざ、移転や撤退の検討をするときには財務的効果のシュミレーション材料を素早く提供できる。資産除去債務の見積もりは、決算時でなく時間のある時にやっておき、事業計画策定時に移転や撤退の可能性を追加検討すればよい。

 

移転や撤退を機械的に決めずに、検討を始めてから実行までに時間をかける企業も多いし、IFRSは原則主義だから、それが、概念フレームワークの資産の定義に沿った内容なら、単純に書いてないものはダメ、ではないかもしれない。それとも全然ダメだろうか。少なくとも議論のテーブルには載せられるのではないだろうか。

 

さて、前回(2/23の記事)、「忠実な表現」と「比較可能性」を掘り下げると書いたのに、とんでもない寄り道をしてしまった。しかし、個別基準は「手順」であって、根底にあるものは概念フレームワークだということを強調したかった。その概念フレームワークに、日本基準の「継続性の原則」に当たるものがなく、かつ、「比較可能性」より「忠実な表現」が優先されると書かれていることが重要性だと強調したかったのだ。次回はホントに「忠実な表現」と「比較可能性」で書きたいと思う。

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