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2012年3月29日 (木曜日)

IFRS導入論議のおさらい

企業会計審議会が今日、3/29に開催される。直にその内容がニュース配信されると思うが、それまでに今までの議論をざっと復習してみよう。最近は議論の方向性が若干見てきたようにも思える部分もあるが、まだまだ先行き不透明だ。

 

昨年2月までは、当時のIASB議長のトゥイーディー卿が手を打って喜んだとも言われる20106月の中間報告をベースに、即ち、2012年に強制適用するか否かを決定し、2015年~2016年に適用することを検討するスケジュール感で進んできた。IFRSを導入する範囲は全上場会社、さらに連結先行、即ち、連結よりタイミングは遅れても単体にもIFRSを導入するイメージだった。

 

それが昨年2011年6月の自見大臣の記者会見で、中間報告に捉われずに議論するとして、企業会計審議会に(IFRS慎重派の)メンバーがたくさん追加された。その結果、6/30の企業会計審議会では、IFRSを止めて日本独自の道をという意見まで飛び出し、スケジュール感だけでなく、IFRSを導入する方向感もさえも失われた。

 

その後、8月に金融庁事務局が11項目の検討課題を提示したあとは、月一のペースで企業会計審議会が開催され、その検討課題を一つ一つ潰す形で進んできた。11月から12月には海外視察が行われ、その結果も前々回2/17に報告されている。前回2/29には、経団連が行ったIFRSの導入方法、範囲などについてのアンケートの報告と、原則主義に関する意見交換が行われた。

 

その経過を見ると、6/30の日本独自の道という主張はその後聞かれなくなったが、連単分離(連結のみIFRS)、強制適用は上場会社の一部に限定(或いはすべて任意適用)、カーブアウトする権利の留保といった主張のほか、2012年中に導入の方向性を出すべき(IASBやIFRS財団等における発言権の確保)といった主張もされている。いまのところは意見を出し合うのみで、意見集約はされていない。単体開示の省略や簡略化という意見は繰返し述べられている。

 

このほか前回の議事録を読むと、いまの審議方法(スケジュール感のなさ、意見集約をしないこと)について疑問が呈されたようだ。今日もどの議題が話し合われるのか分からないが、以前も記載した通り、スケジュールははっきり示すべきだと僕も思う。

 

また、単体開示を金融庁が譲らない(単体開示を省略したらどうかという意見には、必ず金融庁事務局から反対意見が出される)が、それほど単体開示は大事だろうかとも思う(これも以前書いた)。僕は連結も単体もIFRSにするのが良いと思っているが、それは単体を開示するためではなく、経営管理を一元化できるからだ。しかし、単体を開示しない前提を置けば、単体をIFRSにするか否かは別議論にして、「金商法の制度下でIFRS導入するか否か」の議論を優先させることができるため、IFRS導入の方向性を出しやすくなるのではないかと思う(連結を作成しない会社は単体をIFRSで開示する)。

 

単体をIFRSにするか、日本基準を残すか、或いは全面的に税務会計にしてしまうか、という議論は、税務当局などを含めて別の審議会を起ち上げてやったらどうだろうか。僕にしてみれば会計は実態を忠実に表現するものであって、だからこそ、会計を税務や他の規制に利用できるのだと思う。それであれば、企業会計審議会で議論してもらった方が良い。しかし、企業会計審議会のメンバーは、会計自体に税制や他の政府規制との利害調整機能がある、即ち、税務や他の規制のために単体の会計数値をIFRSとは変える必要がある、という意見が多そうなのだ。だとすれば、企業会計審議会ではそこまでを議論する権限できないだろう(企業会計審議会で税務会計を議論できないだろう)と思う。

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