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2012年3月22日 (木曜日)

原発事故に関する注記事項

前々回前回と、B/SP/Lに会計処理されている項目を見てきた。その結果、損害賠償に関係する項目(原子力損害賠償費等)は、特別事業計画が認可されれば、損失が機構によって補填され、かつ、機構は東電の資金繰り等の状況から、一般掛け金、特別掛け金の額を決めるため、これによって東電の資金繰りが破たんする可能性は低いと考えられた(前々回)。また、東電自体が受けた損害(災害特別損失等)については、同様の補填の仕組みがないため、東電が債務超過になる可能性が考えられたし、ステップ2の後の見積りや国の政策が即時脱原発となった場合に財政状態へ与える影響が注目された(前回)。さて、これらが注記にどのように表現されているだろうか。

 

注記は、会計処理のイメージや勘定科目の内容を理解するのに役立つが、それだけではない。時には財務諸表本体より重要な場合がある。東電の場合は、次の注記が重要だと思う。

 

 ① 継続企業の前提に関する注記

 ② 合理的に見積ることができないとして引当金の限界を示した注記(偶発債務の注記等)

 ③ 過去実績と比較するために重要として特に説明を加えている注記(追加情報、継続性の変更)

 

このほかに、財務諸表自体ではないが、前の方に記載されている事業等のリスクも重要だ。以上の観点から、第3四半期報告書の注記を見てみよう。

                             
 

注記の種類

 
 

関連性の強い勘定科目

 
 

上記の観点から記載内容のうち重要と思われる部分

 
 

継続企業の前提に関する注記

 
 

原子力損害賠償費等

 
 

当社の経営のあり方について中長期的視点からの抜本的な改革に向けた見直しを行うために、今春を目途に、同計画を改定した「総合特別事業計画」を策定する必要があることを踏まえると、現時点では継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる。

 
 

追加情報

 
 

原子力損害賠償費等

 
 

避難等対象者の避難費用や精神的損害、自主的避難等に係る損害に加え、客観的な統計データ等により合理的な見積りが可能となった避難指示等による就労不能に伴う損害や営業損害および農林漁業における出荷制限等に伴う損害、農林漁業や観光業における風評被害等の賠償見積額1,764,512百万円から、「原子力損害賠償補償契約に関する法律」(昭和36年6月17日   法律第148号)の規定による補償金(以下「補償金」という)の受入額120,000百万円を控除した1,644,512百万円について、当第3四半期連結累計期間において原子力損害賠償費に計上している。これらの賠償額の見積りについては、参照するデータの精緻化や被害を受けられた皆さまとの合意等により今後変動する可能性があるものの、現時点での合理的な見積りが可能な範囲における概算額を計上している。

 
 

偶発債務

 
 

原子力損害賠償費等

 

 

 

 

 
 

具体的算定方法及び客観的な統計データ等に基づき合理的な見積りが可能な額については、当第3四半期連結累計期間において原子力損害賠償引当金に計上しているが、中間指針等の記載内容や現時点で入手可能なデータ等により合理的に見積ることができない農林漁業や観光業以外の風評被害や、間接被害及び財物価値の喪失や減少等については計上していない。なお、「平成二十三年三月十

 

一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成23年8月30日   法律第110号)に基づき講ぜられる廃棄物の処理及び除染等の措置等に要する費用として当社に請求又は求償される額については、現時点で当該措置の具体的

 

な実施内容等を把握できる状況になく、合理的に見積ることができないことから計上していない。

 
 

セグメントの変更

 
 

 
 

東北地方太平洋沖地震の影響を踏まえて平成23年5月20日に公表した「当面の事業運営・合理化方針」において、グループ体制についても見直しを行い、電気の安定供給に必要不可欠なもの以外の事業について、大幅に縮小・再編することとなった。

 

 

みなさんは以下のことに気付かれただろうか。

                   
 

 A

 
 

債務超過になる可能性がある災害特別損失に関する説明がない。

 
 

 B

 
 

資金繰りが保証されている原子力災害賠償費に関する注記はたくさんある。但し、合理的に見積れない項目に関して定量的なイメージを持てるような情報は一切記載がない。(合理的に見積れない項目についても、定量的なイメージを持てるような情報を記載すべきことは、既に2011/7/6の記事に記載済みだ。)

 
 

 C

 
 

継続企業の前提に重要な不確実性がある場合に、継続企業の前提に関する注記が記載される。通常は少なくとも1年間資金繰りに重要な不確実性がある、即ち、倒産する可能性のある場合に記載するのに、経営の在り方が抜本的な見直しされることについて記載している。(しかし、組織再編されたり、上場廃止になることは、継続企業の前提に関する疑義にも不確実性にもならないはずだ。)

 
 

 D

 
 

脱原発の動きが東電の経営に与える影響については一切記載がない。(事業等のリスクなどでも、一切触れていない。
   
赤字部分は不正確でした。脱原発(依存)についての記載はありませんが、事業等のリスクの(4)に長期間停止するリスクについては記載がありました。申し訳ありません。2012/3/22

 
 

 E

 
 

世間では、核燃料サイクルの実現性も疑われているが、再処理や高速増殖炉が実現できない場合のリスクについて記載がない。(事業等のリスクなどでも、一切触れていない。
   
赤字部分は不正確でした。実現できない可能性についての記載はありませんが、事業等のリスクの(4)に追加コストについては記載がありました。申し訳ありません。2012/3/22

 

 

以上は、事実を僕は追いかけてきたつもりだ。次回はこれら、特に上記のA,C,D,Eから読み取れることを僕の意見として記載したい。

 

僕は文句ばかりつけている、或いはこれからつけようとしているが、実は注記を読んで見ると、東電が被災者に対して誠実に、速やかに、そして、十分な補償を行おうとする姿勢が随所に表れている。有報や四半期報告書に、財務報告とはちょっと筋の違った内容をここまで書くのは異例だと思う。少し感動すらしている。一体何が障害になっているのだろうか。早くそれが適うことを願っている。

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