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2012年4月23日 (月曜日)

【2011進行基準】結論の根拠からソフトウェア開発への適用について考える

公開草案は、基準、設例、結論の根拠の3つからなる。基準として確定すると、これらはPart A(基準)とPart B(結論の根拠)に納められる。Part Bは基準とは別冊にされ基準自体ではないが、基準の説明文書として尊重されるべきものとされている。結論の根拠は基準より分量が多いが、論点、経緯、寄せられたコメントとそれに対するIASBの判断が記載されており、読み物として基準より読みやすい。今回は、結論の根拠に記載されているこの公開草案の経緯や進行基準に関連する部分を紹介し、ソフトウェア受託開発契約を考える取っ掛かりにしたい。(なお、この公開草案は、ASBJによる日本語翻訳版もIFRS財団ホームページに掲載されている。)

 

この公開草案はIASBとFASBの共同プロジェクトの成果として公表された。したがってほとんど主語は「両審議会」とされている。まずは、この両審議会がなぜ収益認識を取り上げたかだが、US GAAP100以上の基準から構成されており細則主義としての欠点、細部に整合性が取れてない可能性があること、一方IFRSには収益に関する原則が2つある(IAS11工事契約IAS18収益)が質も量も不十分であること、さらに両基準とも開示の規程が不十分とされている。そこで両審議会は、広範囲の取引及び業種に適用できる包括的な収益認識モデル、完了基準と進行基準が整合した新しい基準を開発することを決定した。(但し、リース、保険契約、金融商品に関連する収益、配当は除く。)

 

両審議会は議論を重ね、その包括的な収益認識モデルとして「契約により支配を移転した結果として履行義務を充足したときに収益を認識する」というコア原則(一般原則)を提案することにした。そして2008年にディスカッションペーパー「顧客との契約における収益認識に関する予備的見解」を公表し、一般からコメントを求めたところ、このコア原則について工事契約について実務的でない、従来適用していた工事進行基準が適用できなくなると批判が寄せられ(そのほか多くの点について批判的意見があったが省略する)、それらを考慮、改善したものを2010年に一回目の公開草案として公表した。しかし、それでも一般からのコメントが収まらなかったので、この2011年公開草案が公表された。

 

ひとつ、象徴的なエピソードが紹介されているので、下記に引用する。

 

BC43 多くのコメント提出者が、収益認識モデルが建設型の契約にどのように適用されるのかについて懸念を示し、それらの契約について現行の要求事項を維持することを両審議会に求めた。両審議会は、いろいろな機会にそうした懸念について建設業界からの代表者と議論し、この懸念の一部は誤解に起因したものであることに気付いた。その誤解とは、本提案により、現在はIAS 第11 号「工事契約」又は建設型及び製造型契約に関するASCサブトピック605-35 の範囲内である契約について、工事完成基準の会計処理が要求されるというものである。さらに、建設業界の多くの人々は、単一の工事契約を多数の履行義務として会計処理する際のコストについて懸念していた。2010 年公開草案で、両審議会は、工事契約の全部について企業が収益を工事完成時にのみ認識することとなるわけではないことを明確化した。さらに、後述のように、本基準案は、工事契約における履行義務の識別及びどのような場合に当該履行義務が一定の期間にわたり充足されるのかの判定に関して、一層の明確化をしている。したがって、両審議会は、基準案を工事契約に適用すべきだという見解を確認した。

 

「進行基準がなくなるのではないか」という懸念は、

  ・ IASBは誤解だと言っているが、実際に多くの人がそういう心配をした。

  ・ 英語で読んだ人たちも同じ誤解をした(翻訳の問題ではなかった)。

そして、 2010年公開草案で修正・改善したが、それでは足りず2011年公開草案でさらに改善した。(但し、日本公認会計士協会の2011年公開草案に対する意見(2012/3)を見ると、もっと改善が必要といっている。)

 

上記に出てくる「ASCサブトピック605-35 」(実は翻訳版は305-35となっているが、英語版は605-35なので翻訳版は誤植)とは、US GAAP605番が収益認識に関するもので、その35が工事契約に関する基準となっている。さらに605-35の中の15-3には対象となる業種が例示されていて、建設業の他、造船業、宇宙・航空産業などの他にソフトウェアも例示されているから、「両審議会は、基準案をソフトウェアに適用すべきだという見解を確認した」ということになる。即ち、ソフトウェアに関してもこの基準案により「履行義務が一定の期間にわたり充足される」かどうかの判定を行い、該当すれば進行基準の適用が考えられるということになる。

 

2011年公開草案で追加された設例の4には、ソフトウェアについて次のように記載されている。

 

設例4――ソフトウェアの大幅なカスタマイゼーション

企業が、顧客に顧客関係管理ソフトウェアをライセンス供与する。さらに、企業は、合計CU600,000 の対価で、顧客の情報技術環境にソフトウェアを大幅にカスタマイズするためにコンサルティング・サービスを提供することを約束する。

企業は、顧客が契約した結合物に財及びサービス(ライセンスとコンサルティング・サービス)を統合する重大性のあるサービスを提供している。さらに、ソフトウェアは、顧客と交渉した仕様に従って企業により大幅にカスタマイズされる。したがって、企業は、ライセンスとコンサルティング・サービスを一緒にして1 つの履行義務として会計処理することとなる。その履行義務に係る収益は、履行義務の完全な充足へ向けての進捗度についての適切な測定を選択することにより、一定期間にわたって認識されることとなる(一定期間にわたる履行義務の充足について第35 項の要件が満たされていると仮定する)。

 

以上によって、原則主義のIFRSと細則主義のUS GAAPの差が垣間見られると思う。両審議会は原則主義の立場で新基準を開発しており、収益について包括的に適用できるコア原則(一般原則)を作ろうとしている。

また、ソフトウェア開発に進行基準が適用できるかどうかは、焦点は35項の要件ということになるが、その前に次回は基本的となる概念の「履行義務」とか「支配」についてもう少し検討してみよう。

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