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2012年4月18日 (水曜日)

原則主義と企業の手間(企会審2/29の議事録等から)

下記は、企業会計審議会事務局による原則主義のメリットとディメリットのそれぞれ2番目を抜き出したものだ。メリットでは経営の実態に適合しない処理(基準)を避けられるとしつつ、ディメリットでは企業の判断が増える分、その説明が必要になるので手間が増えるとしている。

 

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(メリット)

取引の実態に応じてあらゆるケースを想定して基準を用意することには限界があることから、作成されたルールを適用することで実態に適合しない処理になってしまう状況を避けうる。

(ディメリット)

作成者にとっては会計処理の適用についての判断及びその判断の根拠を示す必要が生じるため、一定の作業が生じる可能性があること。

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例えば細則主義で業種別に細かく会計基準を規定してあれば、該当する基準を見つけ出してそれを適用すればよい。そして、その会計基準は一般公開されているものなので、財務諸表の利用者はそれを知っているという前提を置いて、企業は簡潔な説明を行えばよい。だが、業種別に細かく規定した会計基準を財務諸表の利用者が知っているという前提は、果たして利用者にとって有難いことだろうか。

 

また、もし、その細則に規定されていない取引があったとしたら、無理やり類似の規程を適用せねばならず、形式的でおかしな処理や開示になるかもしれない。

 

一方、原則主義の場合は、抽象的な、しかし、包括的な規定となるので、実際の適用に当たっては、会社の状況に合わせて解釈することになる。よって、どのように適用したかを説明しないと、財務諸表の利用者が経営の実態を正確に理解できない。確かにその説明(注記の作成)に手間がかかる。仮に同業他社と異なる解釈、具体的な適用を行った場合、その適否を含めてアナリストや株主から質問を受けるかもしれない。「説明が必要」ということは、企業によって処理がばらけることでもある。

 

その代わり、「規定されていない取引をどうするか」とか、「実態に合わない基準」で悩む可能性は低くなる。

 

2/29の企業会計審議会では、この問題について事務局から各国の工夫がいくつか紹介されている。まず、IFRS財団(IFRS解釈指針委員会)自体がIFRSやIFRIC/SIC(解釈指針)の他に教育文書を公表していることが紹介されている。そしてヨーロッパでは欧州証券監督機構(ESMA)がガイダンスや事例のデータベースを公表していること、フランスやドイツでは基準設定主体とか会計士協会もガイダンスを公表していること、それから、規制当局が特定の会計処理が認められるものかどうかという作成者の疑問に答えるというようなシステム(事前質問制度、プリクリアランス)が実施されていることが紹介されている。このほか、中国、韓国、カナダの例が紹介されている。

 

データベースが公表されているというのは、日本のように決まり文句の会計方針ではなく、財務諸表に会計処理の注記が細かく記載されている(=手間がかかっている)ので、企業による違いが出ていてデータベース化する意味がある。ガイダンスや教育文書が公表されると、どのように会計基準を適用したらよいか判断しやすくなるし、その結果説明も楽になる。

 

この事務局の説明の中で、僕は次の部分が興味深い。

「作成者自身として自社特有の適用指針を国際会計基準に加味したもの、そういう社内アカウンティング・マニュアルというようなものが作成されているようでございます。これはヨーロッパにおけるヒアリングにおいても、かなり評価が高いといいますか、積極的に評価されているようでして、監査人もこの作成段階には関与するということで、事後的なトラブルを減らす効果もありますし、企業の会計担当者の理解を深めるという意義もあったと言われております。」

 

歴史のある会社、規模が大きくなった会社はえてして業務がマニュアル化され過ぎて、会計業務も作業になってしまうきらいがある。改めて普段処理している取引にどんな背景や意味があるのか、取引の実態を改めて考える機会を与えられること、それを文書化、見える化することは有意義だと思う。だが、これはJ-SOXの時も聞かれた話だ。大事なのは、単に会計原則や規程に合わせることではなく、経営にとって役立つこと、会社の価値を高めることに役立つように、会計原則や規程をどう意味づけをするかではないだろうか。これができるなら、説明に手間がかかることなど安いものだと思えると思う。

 

ということで、単純な例で恐縮だが、次は収益認識の公開草案から、ソフトウェア開発が工事進行基準の対象になるか否かを題材にして、この「意味づけ」を考えてみたい。

 

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