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2012年4月 4日 (水曜日)

原則主義のエッセンス(企会審2/29の議事録等から)

3/29に開催された企業会計審議会については、すでに報道されていて、中小企業の会計基準や監査人の対応がテーマになっていたようだ。しかし、まだ議事録は公開されていない。そこで今回から数回にわたり、2/29の議事録等を参考にしながら、原則主義について検討してみたい。

 

審議会では、事務局から原則主義のエッセンス、メリット・ディメリットやすでにIFRSを採用している国・法域における対応が説明され、事務局が論点となるだろうと考えたテーマが提示された。今回は、そのエッセンスについて考えてみたい。

 

(エッセンス)

 ①例外規定をなるべく認めないこと

 ②核となる原則が明解であること

 ③各会計基準間に不整合がないこと

 ④概念フレームワークと規定が結びついていること

 ⑤作成者と監査人に判断が委ねられており、その判断が重要であること

 ⑥不必要にガイダンスを多く設けることはしないこと

 

これは、前IASB議長のトゥイーディー卿が2007 年5 月メルボルン大学で開催された財務報告に関する会議において説明した内容とのことであるが、僕は、概念フレームワークの位置づけをもっと明確に尊重して欲しいと思う(④)。

 

僕は、概念フレームワークが最も重要な基準で、個別のIFRSはそれをサポートする位置づけになっていることが、本来の原則主義だと思うが、実際は『矛盾が生じている場合には、IFRSの要求事項が「概念フレームワーク」の要求に優先する』(はじめに))とされている。

 

IASやIFRSやその解釈指針は、概念フレームワーク(の改正)より前に作成されたものであるため、基準の運用上そのようになるのも分かるが、何とかあるべき姿にしてほしいものだ。特に、事務局の方が説明している通り、IASB(国際会計基準審議会)は、近年では、特に米国との共同プロジェクトなどにおいて、かなり詳細な基準を開発している。そのため、何処が原則主義か? どこが明解か? と思うような基準も出てきている。

 

資産や負債や損益計算の概念を決めている概念フレームワークを尊重せずに、個別のIFRSを優先させ、それを複雑・詳細にしてしまえば、個別のIFRS間に齟齬が出てくる(③)。例えば、現金と固定資産を足し算して総資産を計算しても、現金と固定資産が別の概念で評価されていれば意味がない。すべての資産が「将来のキャッシュインフローを表わしている」という概念で統一されてこそ、それぞれの資産を足し算することに意味が出てきて、資産から負債を控除して純資産を計算することに妥当性が出てくる。期首と期末の純資産の増加が利益だというなら、すべての資産、負債が統一した概念で評価されなければならない。それが概念フレームワークの役割のはずだ。即ち、個々のIFRSは概念フレームワークに整合してこそ、会計基準となりえるということになるのだから、現状とは反対の位置づけだ。

 

僕は、読者が概念フレームワークをしっかり理解すれば財務諸表を概ね正しいイメージで読むことができるというのが理想だと思う。理想と書いたが、実際それ以上を期待できるだろうか。2000ページから3000ページの基準書を勉強しないと財務諸表は読める優良な投資家とは認めません、というのでは、投資家にとって負担が重過ぎる。経営者だって困るだろう。実際、日本でも、会計基準の意味が分からなくて困っているとか、会計基準嫌いの経営者は多いと思う。概念フレームワークを優先するのは、そういう意味もある。

 

もちろん、作成者、アナリスト、監査人等の専門家は、個々のIFRSまで熟知しなければならない。

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