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2012年4月11日 (水曜日)

原則主義と、企業と監査人の意識のバージョンアップ(企会審2/29の議事録等から)

下記は、企業会計審議会事務局による原則主義のメリットとディメリットのそれぞれ1番目を抜き出したものだ。メリットでは経営の実態をより適切に反映できるとしていて、ディメリットでは比較可能性を損なうとしている。

 

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(メリット)

各企業の判断で会計方針を作成し、経営の実態をより適切に反映した会計処理が可能となる、また、企業として会計に対し受身でないしっかりとした方針の作成を促進することにつながる。

(ディメリット)

形式的には原則主義の会計基準で統一が達成されたとしても、その適用にあたって解釈の幅が広すぎたり、選択できる処理が複数ありうるなどの理由から、恣意的な処理が行われる可能性があることや実質的な比較可能性が損なわれる可能性があること。

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これはどこかで見た議論だ。そう、概念フレームワークの「忠実な表現」と「比較可能性」だ。概念フレームワークは「忠実な表現」を財務情報の基本的な特性と位置付ける一方で、「比較可能性」を補強的とし、「忠実な表現」を優先する(比較可能性より経営の実態の反映を優先する)という整理をしている(2/29の記事を参照)。

簡単に言えば、経済実態に忠実な表現はそれ自体で価値のある情報だが、そうでない情報はいかに比較可能性を備えていたとしても意味がない、というか、逆に害をなす。経済実態に忠実であればこそ、情報を比較する意味が出てくる、ということだ。

 

しかし、これは程度問題であって、あまりにバラバラな解釈がなされれば、情報の比較ができなくなるだけでなく、経済実態の忠実に表現にもならなくなる。そこでどこまで丁寧な(細かい)基準にすればルールが適切に運用できるかが問題となる。そして、これが細部にまで及べば細則主義になってしまう。

2/29の企業会計審議会の議事録には数名の委員から「原則主義と細則主義は、対立する概念ではなく相対的なもの」という発言がされているのはそういう意味だと思う。即ち、原則主義と細則主義のどちらかを選ぶということではなく、適切に運用されるにはどの程度細かく規定する必要があるかで詳細さが決まっていくということだ。したがって、少ない基準でもしっかり趣旨を生かした適切な解釈がなされるのであれば、原則主義のメリットが享受でき、ディメリットを抑制できる。解釈する側の能力が問われるということだ。

 

そして議事録には、斉藤静樹氏の次のような発言も記録されている。

「言葉だけ原則主義を唱えても、その解釈を当事者がどこまで決められるかについて、私自身はASBJ委員長としての6年間の経験に照らして非常に懐疑的であります。私がいくらプロフェッションの判断にゆだねようとしても、判で押したように、何か決めてくれないと動けないということを言われ続けた経験がございまして、そういうことを特に申し上げておきたいと思います。」

これは厳しい現実を表わした重い言葉だ。

 

原則主義のメリットを享受するためには、能力だけでなく、企業と監査人の意識のバージョンアップ(今までできていなかったという自覚と、これからはギヤを変えて挑まねばならないという覚悟)が要求されている。

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