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2012年5月16日 (水曜日)

【2011進行基準】結論の根拠から~支配の移転1

=見直しは終了しました(修正しませんでした 5/16)=

=以下については見直し中です(5/11)=

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みなさんは「支配」という日本語からどんな英語を想像されるだろうか。webiloに掲載されている研究社 新和英中辞典によれば、「支配」に対応する英単語には以下のものがある。

 

〈管理〉 control; 【形式ばった表現】 superintendence

〈統治〉 rule; government; 【形式ばった表現】 sway

〈運営〉 management

〈指揮〉 direction

 

たくさんある。そして日本語の「支配」の意味のなんと広いこと。IASBの原文は「control」となっている。「支配」のままではイメージが固まらないので、僕は仮に「支配」を「管理下に置くこと」と考えることにした。すると「支配の移転」は、「(顧客に)管理を移すこと」となる。だが、収益実現の要件としては、どうも“軽い”感じがしないではない。

 

もともと、売上基準としては速やかに所有権が移転されることを前提に発送基準や検収基準が考えられてきた。それが「資産の所有に伴うリスクと経済価値の(大部分の)移転」に変わり、そして今回は「支配の移転」と変遷してきた。一体何が変わったというのか。

 

「資産の所有に伴うリスクと経済価値の移転」という考え方が導入されたのは、法律上の所有権が移転されてなくても収益が実現するケースがあるからで、例としては割賦販売が挙げられる。割賦販売は、割賦を払い終わるまでは所有権が売主に残るが、販売(引渡し)時点で売上計上されるので、所有権の移転を収益実現の要件にすると合わないことになる。

 

さらに今回「支配の移転」という考え方になったのは次の理由があるという(BC83)。

 

 ①資産の認識やその中止の定義にも「支配」を用いているので、整合的になる。

 ②リスクと経済価値の(大部分の)移転だと、その大部分を量的に判断することが難しい。

 ③支配の方が、別個の履行義務を識別しやすい(契約を履行義務単位に分けやすい)。

 

①については、概念フレームワークで、資産の相手勘定として収益を認識する考え方(まず資産・負債が定義され、それに従属して収益・費用が定義されている)と整合する。売上債権が成立することで、売上も認識される。認識の中止とは、資産をB/Sから取り除くこと(売却、相殺、除却など)だ。

 

②と③は抽象的で分かり難いので、ソフトウェアの受託開発契約で例を挙げてみよう。

 

②についてはカットオーバー後のサポートが顧客との間で(暗黙でも)約束されているときに、リスクと経済価値の移転で考えると、カットオーバーによってその契約の大部分のリスクと経済価値が顧客に移転したと判断するのが難しいことがある。「大部分」っていくらだ?ってことになるが、単純に金額の大きさで解決できる問題ではないはずだから。

 

③については、支配の方が、ソフトウェアの開発業務とサポート業務を別個の履行義務として認識する(別々に売上を計上する)ことがスムーズに発想でき、実態に合った整理がしやすい、といったことだろうと思う。(但し、カットオーバー後のサポート業務を別個の履行義務として認識できるかどうかは別の検討が必要になる。)

 

②については、ちょっと分かり難いと思うので、もう少し僕のイメージを書き加える。

例えば、カットオーバー後も、大きなバグが見つかってトラブルが起こった場合に備えて顧客に要員を待機させるとすると、それはリスクと経済価値の大部分を顧客に移転したといえるだろうか。直感的には「念のため」のレベルなら収益が実現したと考えて良いと思うが、それと「大部分」という量的な概念がうまく噛合うだろうか。「大部分」だと、例えばプロジェクト全体コストの何パーセント以内などと発想しやすいが、実際には企業側の要員が抜けると、当初の想定に反してシステムの安定稼働に合理的な不安があるとすれば、その金額的な比率が小さくてもまだその時期ではないと思う。まだ顧客がシステムを支配している、支配できているとはいえないからだ。

 

ところで冒頭で支配を「管理下に置くこと」と書いたが、読み進めていくとこの基準案における支配の定義が、次のように書いてある。(BC85

 

「約束した財又はサービス(すなわち、資産)の支配とは、顧客が当該資産の使用を指図して当該資産からの残存する便益のほとんどすべてを得る能力である」

 

ポイントは、使用の指図便益の享受能力という3つの構成要素だという。使用の指図と便益の享受は、その資産から得られる将来キャッシュフローを顧客が獲得できる状況を示しているので、概念フレームワークの資産の定義と合致する。法律上所有権の移転の有無に関わらず、リスクと経済価値の移転も行われた状態とみることができる。これなら顧客の実質的な所有物になった状態と考えられる。「管理下に置く」というよりは「(顧客が)所有している」イメージだ。したがって、冒頭に記載した支配のイメージは修正が必要だ。

 

ところが問題は「能力」だ。「能力」とは現在の能力をいい、将来獲得する予定の能力ではないとしている。この考え方も概念フレームワークの資産の概念に整合している。即ち、仕掛品からは現時点で便益を享受できないから、仕掛品の状態では支配にならない(但し契約による)という。

 

これは進行基準にとっては難物だ。事実、2010年公開草案に対しても、この点について懸念が提示されたという。「建設業界の多くのコメント提出者は、収益認識の方針を工事進行基準から工事完成基準に変更することを要求されることになると懸念した」と記載されている(BC87)。ソフトウェア業界の方々も同様の懸念を持たれただろうと思う。2011年公開草案はそれを改善したとしているが、これはなかなか理解が難しそうだ。「一定の期間にわたり充足される履行義務(=進行基準の適用)」か、それとも「一時点で充足される履行義務」かを判断するときの「支配」は、もっと突っ込んで考える必要があるようだ。だが、今回記載した「支配」とは、一部違うもののような気もする・・・。それは次回検討しようと思う。

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