【2011進行基準】見直しの理由~支配概念
5/11現在、以下の記事については見直しを検討している。
5/ 2 【2011進行基準】結論の根拠から~支配の移転2「第35項(a)」
(ついでに5/ 9の記事については、タイトルの「支配の移転2」を「支配の移転3」へ変更した。)
まだどの程度修正するか(或いは修正しないで別の記事を書くか)は決めてない。見直ししようと思ったのは、5/9の記事に書いた「意外とIASBとFASBの両審議会は固い」に気が付いたからだ。固いというのは「支配」のイメージに対してだが、支配を柔らかく(広く)考えると、進行基準の対象となる取引が広がるが、固く(狭く)考えるとなかなか進行基準が適用できないことになる。影響が大きい。そして「支配」は概念フレームワークや他のIFRSとこの公開草案を繋ぐ重要な考え方で、IFRSの原則主義が具体的に表れた一つの形でもある。さらには日本基準との差を理解するためにも重要なポイントになる。
支配概念をもっと正確に理解することの重要性、その影響の大きさを理解するために、日本の「工事契約に関する会計基準」との相違を見てみよう。日本基準ではどのように表現されているのか。結論からいうと、日本の進行基準には一定期間にわたって履行義務の充足する、とか、支配が移転するといったことに相当する要件が見当たらず、取引の種類(と進捗度の信頼性要件)で進行基準適用の範囲を定めているので、この公開草案が修正されずに適用された場合は、進行基準が適用される範囲に違いが生じる可能性を否定できない(進捗度の信頼性要件はIFRSにもある)。
「工事契約に関する会計基準」の「範囲」という見出しがある第4項、第5項。
4. 本会計基準は、工事契約に関して、施工者における工事収益及び工事原価の会計処理並びに開示に適用される。
本会計基準において「工事契約」とは、仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約のうち、土木、建築、造船や一定の機械装置の製造等、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行うものをいう。
5. 受注制作のソフトウェアについても、前項の工事契約に準じて本会計基準を適用する。
日本基準では、特注品の生産・供給に関する請負契約が進行基準の対象となる。
一方、公開草案では、一定期間にわたって履行義務が充足されるもの、どんどん顧客に支配が移転するものが進行基準の対象になる。支配を広く解釈できるのであれば、例えば「請負契約なら支配がどんどん移転すると考えて良い」と解釈してよいのであれば、日本基準と公開草案は同じことになるが、そうなるだろうか。そこが問題だ。なにしろ影響が大きそうだ。
ということで、支配についてもっとじっくり考えてみようと思う。
なお、公開草案の第35項(a)は、特注品の限定をしていないので、汎用品も進行基準の対象となるケースが出てくる(進行基準適用の要件に合致する場合は、進行基準の適用対象となり完了基準は採用できない)。しかし、その場合P/Lへの影響はそれほど大きくなさそうな気がするのだが、注記での扱いについては検討が必要になると思う。
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