« 【2011進行基準】結論の根拠から~支配の移転1 | トップページ | 【2011進行基準】見直し終了~支配概念 »

2012年5月16日 (水曜日)

【2011進行基準】結論の根拠から~支配の移転2「第35項(a)」

 =見直しは終了しました(赤字部分が修正で、進行基準が適用可能な範囲は狭くなっています。その他、不適切な表現を修正しました。5/16)=

 =以下については見直し中です(5/11)=

------------------------------------
今回はいよいよ核心部分だが、その前にざっとおさらいをしてみよう。

 

 

僕は2011年公開草案で進行基準がどのように扱われているかが知りたくて、そしてそれが概念フレームワークに整合しているのかが知りたくて読み解いてきた。収益認識の一般基準(コア原則)は、企業(供給者)の財・サービスの支配が顧客に移転したとき(移転を描写するように)収益認識するというものだったが、その支配とは、簡単に言えば顧客のものになっている状態、顧客の資産になっている状態ということで、英語ではControlだった。その資産(やサービス)を顧客が利用したり、販売したり、担保に入れたりすることができ、それから生み出されるキャッシュフローを顧客が獲得できる状況だ。

 

ところが、建設業界などから、このコア原則では工事契約(設備の建設、物品の製造、又は買手の仕様に合わせた関連するサービスの提供も含む)に進行基準が適用できず、完成基準になってしまうという懸念が寄せられた。IASBとFASBは、工事契約に進行基準の適用を禁止する意図はなかったために、公開草案へ今回のテーマとなる35項を追加した。

 

企業の財・サービスが顧客に移転することで収益を認識するというコア原則は、概念フレームワークの資産の定義とイメージが合っていた。その資産から生み出されるキャッシュが顧客に帰属するのだから、その資産は顧客のものになっており、顧客は企業に対し対価を払う義務がある。即ち、企業は金を生む資産である売上債権を獲得したことになる。ならば、企業は売上債権を資産計上し、その相手勘定を売上とすることに合理性がある。だが、進行基準はまだ仕掛中のものを売上計上しようというものだ。仕掛中のものについて支配が移転しているといえるのだろうか。

 

ということで、基準案の第35条を概観してみよう。

 

35条は(a)(b)に分かれていて、(a)はプロジェクトの成果物がどんどん顧客に移転していくもの、(b)はどんどん移転していかないいくか不明だが、実質的に一定期間にわたって移転されていると考えられる3つのケースを規定している。(b)については、成果物が他の顧客へ転用できないものであることが前提となっている。今回はそのうち、下記の(a)について検討する。

 

(a) 企業の履行により、資産(例えば、仕掛品)が創出されるか又は増価し、資産の創出又は増価につれて顧客が当該資産を支配する。企業は、第31 項から第33 項及び第37 項の支配に関する要求事項を適用して、資産が創出又は増価につれて顧客が資産を支配しているかどうかを決定しなければならない。

 

これを見ると、支配が顧客にどんどん移転するのだから収益を認識するのに問題はないと思われるかもしれないが、一体どんなケースがこれに当たるのだろうか。僕に思い浮かぶのは、例えば、ビルなどの建築工事で、下の階から順に納入される配管など水回りの工事や空調設備機器の据付、内装工事などは、供給業者から元請けへどんどん支配が移転する。しかし、ビルの本体工事は、1階ごとに顧客(施主)へ支配が移転されるわけではないので、進行基準は適用できないことになる。では、(b)で考えるのか? いや、そうではなく、本体工事もこの(a)で考えるに該当するものがあるようだ。ここで結論の根拠を見てみよう。

 

結論の根拠の第BC91項は、仕掛中のものに対して、企業と顧客の両方が権利を持っているといっている。この場合の権利とは、究極的には、その資産を利用したり、売却したり、担保に入れたりして資金化する権利のことだと思う。しかし、ここではその前の段階のことをいっており、顧客は、これらの契約において特定作業の履行を企業に強制する権利を持っているから、その履行の結果はその都度顧客に移転すると解釈できるというのだ。通常、仕掛中のものは企業の管理下、支配下にあるが、そこに顧客の支配も及んでいるという。いや、むしろ法的には顧客に所有権があり、企業には先取特権があるだけというのが一般的ではないかといっている。確かに言われてみればそういうケースが多いかもしれない。そして、このような工事契約は(a)に該当する(可能性が高い)。このBC91の要約は、アメリカの状況が記載されたものと思われるので、日本でも同様の法律関係にあるか確認が必要だ。また、契約書に企業の利益保全のために、顧客の権利を制限する条項がある場合があるが、これはその都度支配が顧客へ移転することを否定することになるかもしれない。

 

しかし、すべての工事契約が(a)に該当すると断言しているわけではないので注意が必要だ。顧客が所有権を持っていないと判断されるものもあるし、顧客に所有権があると契約書に明記されていても、それがあまりに形式的なもので実態を伴っていない場合は進行基準の適用が否定されるかもしれない。

 

プロジェクト期間中に、顧客がその進捗を確かめて、それに応じた中間払いをするような契約は、(a)に該当すると考えてよさそうだ。しかし、日本流の着手時3割、中間3割、竣工時残額といった進捗に関連しない支払条件は、(a)に該当する証明にはならないと思う。(否定するものでもないが。)

 

さて、ソフトウェアの受託開発契約は、この(a)に該当するだろうか。僕は、これも該当する場合もあれば、しない場合もあると思う。大規模プロジェクトの多くは、(仕掛中でも)著作権が顧客にあることが契約書に明記され、顧客が節目でテストを行ったり、顧客が開発作業に参加していたりと、顧客が契約通りに進捗していることを確かめながら進行しているケースが多いと思うが、こういうものは該当する可能性が高いと思う。一方で、途中経過を顧客が確認するステップがなく、いきなり完成品かそれに近いものを納入する契約は、該当しない可能性が高い

 

また僕は、成果物(プログラムなど)の著作権が仕掛中であっても顧客側に帰属すると契約に明記されている場合も少なくない。ただ、僕はこれこと(a)に該当する決定的な要因にはならないと思う。建設工事と異なり、無形物のソフトウェアは、契約通りの進捗をしているかどうかを簡単に判断することができないからだ。顧客にとって価値のある資産になっているかを顧客が確かめていることがより重要だと思う。この辺りについては、あとで改めて記載したい。

 

次回は第35項の(b)について記載し、そのあとで僕が考える収益認識基準を経営に役立てるための考え方、顧客満足基準について記載したい。

« 【2011進行基準】結論の根拠から~支配の移転1 | トップページ | 【2011進行基準】見直し終了~支配概念 »

IFRS個別基準」カテゴリの記事

IFRS全般(適正開示の枠組み、フレームワーク・・・)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/577176/54608810

この記事へのトラックバック一覧です: 【2011進行基準】結論の根拠から~支配の移転2「第35項(a)」:

« 【2011進行基準】結論の根拠から~支配の移転1 | トップページ | 【2011進行基準】見直し終了~支配概念 »

2017年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
無料ブログはココログ