【2011進行基準】原則主義の観点から
4/18のこのブログの記事で、僕は次のように書いて、この2011進行基準シリーズを始めた。
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・・・大事なのは、単に会計原則や規程に合わせることではなく、経営にとって役立つこと、会社の価値を高めることに役立つように、会計原則や規程をどう意味づけをするかではないだろうか。これができるなら、説明に手間がかかることなど安いものだと思えると思う。
ということで、単純な例で恐縮だが、次は収益認識の公開草案から、ソフトウェア開発が工事進行基準の対象になるか否かを題材にして、この「意味づけ」を考えてみたい。
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果たしてこの企画を全うできたか自信はないのだが、2011年公開草案を見てきて、いくつか従来の(日本の)会計基準のイメージとは異なるものが見えてきた。
① 支配概念は概念フレームワークと繋がっていること。
概念フレームワークでは、資産は将来キャッシュフローの流入で定義されており、それに関連する説明で、顧客満足を得ることが企業にキャッシュフローをもたらす旨記載されている。即ち、顧客満足が収益認識で重要な役割を果たすと考えることが可能だ。
② 収益認識をERPシステムのように受注からのプロセスとして捉えていること。
みなさんがこの公開草案を読むときは、ERPシステム(販売システム)の基本設計書を読むつもりでいると分かりやすいかもしれない。受注、或いはその前の段階から、収益認識に至る過程が、契約の識別、履行義務の識別、履行義務の充足といったプロセスで捉えらえ、それに対価測定や原価測定の考え方が示されている。
③ 抽象的な概念を規定するのみで、数値など具体的ルールはない。
これは、よく言われることなのでみなさんもご存じ通りだと思う。会計基準として具体的ルールは示されないので、システムの詳細設計に当たるもの、ないし、マニュアルに当たるものは、企業が直面している経済実態に合わせて自分で作成することになる。そしてそれは必要に応じて開示される。
④ 進行基準も完了基準も同じコア原則によっており、例外を設けていないこと。
コア原則は「収益の認識は、財・サービス(の支配)が顧客に移転したときに、その移転の状況を描写するように行われる」というもので、一定の期間で移転する場合に進行基準、それ以外の場合は一時点で認識される。移転は支配概念で説明されており、「発送」とか「検収」といった一断面、イベントを捉えたものではない。顧客満足の観点から、いつ移転させるべきか企業が顧客との合意に基づいて企画・設定する履行義務の内容と、顧客とのコミュニケーションが重要だ。
以上から、原則主義と言われるものの一つの形が見える。上位にある概念フレームワークとの関係を保つことと、例外を作らないためにビジネスの実態に寄り添える「器」或いは「基本形」を持っていて、企業が自らの実態に合わせてそれをカスタマイズすることを可能にしている。まるでERPパッケージ・ソフトのようだ。
見方を変えれば従来の会計基準以上に経営の見方に近づいている。経営に影響を与えるものとなっている。それを良しとするか否かは、もっとIFRSを理解してから判断したいと思われる方が多いと思うが、僕は間違いなく従来の会計基準より経営に利用できる、有効活用できるのがIFRSだと感じている。ただその効果をどれぐらい引出せるかは企業の姿勢次第。その点でもERPシステムに似ている。
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