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2012年6月23日 (土曜日)

【東電2012/3決算短信】GCの注記内容

2012/06/23

GCの注記は、監査・保証実務委員会報告第74号や財務諸表規則(第8条の27)等でパターン化されていて、次の4つの内容が記載されるはずだ。

 

  1. GCに重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する旨及びその内容
             

企業の危ない状況を企業が自ら開示する。具体性を持って書かないと、次の対応策が的を得たものになっているかどうかが分からないので、具体的に分かりやすく書くことが重要だ。通常第一段落に記載され、「~の重要な疑義がある」で文章が締めくくられる。典型例が債務制限条項への抵触だ(借入金の一括返済を金融機関から迫られ、資金繰りが破たんする可能性があるから)。


東電は、ここに東日本大震災により被災した福島第一原子力発電所事故に関する「原子力損害の賠償に関する法律」(原賠法)による損害賠償責任の発生による財務体質の大幅な悪化を記載している。


  1. 危ない状況を解消し、又は改善するための対応策
             

疑義あっても、それに経営が適切に対応できるなら倒産することはない。或いは外部環境が好転していれば、やはり倒産を免れることができる。経営者としては、1に記載した状況を打破するために、外部環境・内部環境を精査し、有効な対応策を立案・実行しなければならない。その内容をここへ記載する。

 

東電は、ここに以下の項目を記載している。

・昨年
8月に「原子力損害賠償支援機構法」(機構法)が成立したこと
・機構法に基づき
11月に緊急特別事業計画が認可され、また本年2月にその変更が認可され、それぞれ機構から(支出した損害賠償額を補填する)資金交付決定の通知を受けたこと
5月に徹底的な合理化策を含めた総合特別事業計画の認可を受け、資金交付額の変更の決定、株式の引受の決定(払込総額1兆円)の通知を受けたこと
・原発停止、火力依存度上昇による収益構造悪化について、
5月に電力料金改定の申請を行ったこと

  1. 上記の対応策を行っても、なお重要な不確実性が認められる旨及びその理由
             

この注記が記載されるということは、上記 2の対応策が十分でないか、実現可能性が高くなく、会社がこの先1年間存続できるかどうか不確実な状況にある場合だ。典型例は、金融機関に債務返済期限の延長を申入れ、その回答待ちの状況にある場合だ。金融機関の返事次第では資金繰りに詰まる可能性がある場合は、重要な不確実性があるとされる。このように他者の協力が不可欠なのに、まだ協力が得られるかどうか不明な場合も重要な不確実性があるとされる。

 

東電は、ここに重要な不確実性がある項目として以下を記載している。

a. 株主総会での(第三者割当増資に)必要な議案の決議、及び、機構による株式の引受
b. 経産大臣による電気料金改定の認可

  1. 重要な不確実性の影響を財務諸表に反映しているか否かの別
             

ここには「財務諸表は継続企業を前提として作成されており、継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を反映していない」という定型句が入る。要は、普通の会計基準で作成しており、資産や負債の評価に倒産を前提とした特別な処理はしていません、ということだ。東電もそのように記載している。

 

(東電のGCの注記を正確に読みたい方は、東電のHPの開示資料(添付資料のP44をご覧ください。)

 

ということで、東電の開示によれば、東京電力がこの1年間存続できるかは、株主総会での増資決議と、電気料金の値上げが実行できるかにかかっている。(なお、機構による増資引き受けも記載されているが、機構は引受を承諾しているので、「機構と合意した条件」での増資が総会で承認されるかどうかについて不確実性があるということであろうと思われる。)

 

さて、みなさんは、この注記で「うん、それは危ない」と、東電と危機感を共有できただろうか。

 

 ・1年間存続するには増資と値上げの両方が必要?

 ・増資決議はそんなに不確実?

 

原子力損害賠償については、多少のタイムラグはあっても機構から資金補填されるし、2012/3期の営業キャッシュフローは赤字といっても僅か28億円に過ぎない。1兆円近くある手元資金では不足か? しかし、通常GCの検討を行う場合は、資金繰りシュミレーションを行っているはずだ。きっと増資と値上げが実現しない場合は、(何かの条件が加わって)1年以内に破綻するシナリオを否定できなかったのだろう。・・・と、一応は思う。

 

増資決議も必要な賛成票が得られるかどうか、票読みをしたに違いない。その結果、(僕には考えにくいが)株式が無価値になるより希釈化を嫌うなど、増資に賛成しない株主が相当数いると考えざるえない理由があったに違いない。・・・と、一応思う。

 

だが、それがなにか書いてない。もしかしたら、そこにこそ、本当の疑義なり、不確実性があるのではないだろうか。中長期的な事業性、存在意義が問われているのは分かるし、自律的な資金調達能力を復活させることも重要だが、それはGC注記の目的ではない(それらについて書きたければ別のところに書けばよい)。

 

いずれにしても、この2つを重要な不確実性のある事象として注記した以上、これらが有価証券報告書提出前に解消・解決された場合は、今度は重要な後発事象の記載が必要になる。例えば、有価証券報告書を定時総会終了後に提出する場合は、増資決議についての記載が(可決した場合も否決の場合も)重要な後発事象として追加されるだろう。また、値上げについても、もし、有価証券報告書提出前に認可された場合は、同様に後発事象が追加される。そして、他の経営環境に大きな変化がなければ、これらが解消された以降の決算(最早で第1四半期)からは、GCの注記が不要になると思う。

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