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2012年6月12日 (火曜日)

サッカーW杯最終予選とIFRS導入

サッカーの日本代表は、W杯最終予選の第1戦、第2戦を予想を上回る好成績で2連勝し、今晩オーストラリアと第3戦をアウエーで行う。僕は第2戦のヨルダン戦を埼玉スタジアムで応援し、さらに帰宅してから録画してあったBS1とテレ朝の番組をそれぞれ見たので、計3回観戦した。

 

その中で気になったのは(特に僕が敬愛する名波浩氏の解説が参考になったが)、ヨルダンの選手が水をたっぷり撒かれた芝に慣れていなかったらしいということだ。水がたっぷり撒かれた芝は、ボールがよく滑ってバウンドしてもボールのスピードが落ちないし、足元が滑りやすくなって踏ん張りが効かなくなる。オマーンもヨルダンもご存じのとおり砂漠の国で、国元の試合では貴重な水をたっぷり撒かないようなので、慣れていなかったらしい。その結果、日本のパスは良く通るし、セカンドボールも効率よく奪取でき、実力以上にスコアが開いた可能性がある。だが、オーストラリア戦はアウエーだし、きっとオーストラリア・チームは慣れているだろう。今夜は1戦、2戦よりさらに気合を入れて応援しなければなるまい。

 

ところで、試合前に水を撒くことは日本が特別に行っていることではない。FIFA(国際サッカー連盟)も試合前に水を撒くよう指導しているというから国際ルールだ。グローバルで戦うにはグローバル・ルールに慣れる必要があるのは、サッカーのようなスポーツでも企業活動でも同じだ。会計もその一つ。6/10(日)のNHKスペシャル「激動トヨタピラミッド」、6/9(土)の田原総一朗氏の激論クロスファイアなど多くの番組で、日本企業がグローバルで事業展開することが、いまの経済の停滞を打開する鍵であることが伝えられている。上場会社だけではなく、非上場会社にもその必要性があるのだ。

 

昨年6月自見金融担当大臣の発言以来、企業会計審議会で今やグローバル・スタンダードであるIFRS導入の方向性が揺らいだままになっている。企業のIFRS導入準備の動きもストップしているという。議論の内容自体はとても重要なのだが、僕は早く導入の方向性を決めて欲しいと思う。なぜなら今行われている議論は、IFRSの導入を決めたあとで、IFRSをどのように導入するか、日本の社会制度や日本企業の良さを伸ばし欠点(特にマネジメント)を直すことに利用できないか、という議論の中でもできるからだ。

 

僕は昨年6月以来、IFRS論議混迷の根底に一部の会計学者の意見があるように感じている。しかし、会計学者が、複式簿記の計算構造が美しいとか、日本伝統の損益計算体系、当期業績主義が美しいという研究をすることも大事だが、企業マネジメントの実践に会計がどのように役に立っていくか、特に過去実績の集計計算だけでなく、将来の不確実性をどのようにマネジメントしていくか、そこに会計が役に立たないかという観点で研究することも大事ではないだろうか。その観点で見れば、IFRSは期末時点の市場環境や事業計画に基づく見積りを行う点で、従来の会計基準より将来志向的で、企業マネジメントに(そして投資家など外部利害関係者に)より多くの有益な情報を提供するというメリットを持つことに行き当たると思う。それを早く明らかにして、日本企業がIFRSという将来志向的なグローバル・スタンダードをマネジメント・システムに組込み、世界に伍して戦えるようサポートしてほしいと思う。

 

ちなみに、IFRSをグローバル・スタンダードと呼ぶと、米国が採用してないではないかと反論されそうだ。しかし、概念フレームワークや収益認識の公開草案など基本的な、そして重要な項目で、両者の共通化が始まっている。特に概念フレームワークが共有されているということは、米国基準も企業の将来キャッシュフローの見通しを外部の利害関係者に提供することが重要な目的であるとする、将来志向的な基準になっている(か、それを目指している)ということだ。日本基準は上辺を取り繕ってはいるが、基本的な重要なところで遅れをとっていると僕は思う。

 

なお、ご存じの方も多いと思うが、日本にも「財務会計の概念フレームワーク」がある。例えば「財務報告の目的は、投資家の意思決定に資するディスクロージャー制度の一環として、投資のポジションとその成果を測定して開示することである。」とされていて将来志向的に見える。また「資産とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源をいう。」とあるが、その経済的資源は脚注に「キャッシュの獲得に貢献する便益の源泉をいい・・・」とされているのでIFRSと似ている。さらに言えば、包括利益以外に純利益を定義していて、そこに「投資のリスクからの解放」という概念を用いているところは、IFRSにはない特徴だ(IFRSを追越している!)。

 

しかし残念ながら「討議資料」とされていて、個々の会計基準の基礎となったり、会計基準に規定されていない事象を処理するための参考になったりという実践的な位置づけではないから、現在の日本の会計基準との関係性は薄いと言わざるを得ない。いや、今から「財務会計の概念フレームワーク」に合うように既存の会計基準を直すなんて大変な手間になるだけだ。そんなことより、早くIFRS導入を決めて、IFRS導入国日本の概念フレームワークとして、その良さをIASBに主張してもらいたいものだと思う。

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今、サッカーを見ているのだけど・・・・。 オーストラリア戦ね。 [続きを読む]

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