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2012年7月24日 (火曜日)

アジェンダ協議2011の概要

2012/07/24

2011/7にIASBから意見募集を呼びかけられた「アジェンダ協議(アジェンダ・コンサルテーション)2011」は、今後の3年間のIASBの活動の方向性を決めるためのものだ。2011/7/31の記事から数回にわたってこのブログでも取り上げた「戦略レビュー(IFRS財団評議会)」は今後10年間の長期計画策定のための意見募集で、IASBやIFRS財団の目的、統治システム、IFRS適用(アドプションか否かや適用状況を確認する仕組み)に関する分野も含まれていた。それに対しこのアジェンダ協議は、その中期計画版とでもいうべきものかもしれない。或いは戦略レビューが目的や統治といったIFRSを生み出し、運用する器を扱っているのに対し、このアジェンダ協議はIFRSの内容自体、中身を扱っている。

 

IASBからは、大雑把にいって、次のような問い掛けが行われた。

(a)今後の方向性、「新しい基準開発」と「既存の基準の維持管理」のバランス

(b)財務報告のニーズ・・・どの項目の優先順位が高いか

 

これに対してASBJは、「アジェンダ・コンサルテーション協議会」を設置し、主要な市場関係者との協議の結果として2011/11『意見募集「アジェンダ協議2011」に対するコメント』を公表した。7/2に公表された企業会計審議会の中間的論点整理、或いは2011/12の企業会計審議会の議事録にも出ている。中間的論点整理では、主要な市場関係者との協議の結果、日本代表の意見としてIASBに発信されたことがたびたび触れられていた。

ちなみに、主要な市場関係者とは中間的論点整理によれば「財務会計基準機構、企業会計基準委員会、日本経済団体連合会、日本公認会計士協会、日本証券アナリスト協会、東京証券取引所、金融庁、法務省、経済産業省」だ。

 

その意見発信の概要は、これも中間的論点整理から転記すると、以下のようなものだ。

 

  • 今後三年間は、新規の基準開発よりも、既存のIFRSの維持管理に重点を置く必要がある。

 

  • 当期純利益を概念フレームワーク等で定義づけるべきであり、リサイクリングが必要である。

 

  • 公正価値測定の適用範囲について、現状の基準には見直すべき点がある。

 

  • 開発費の資産計上、のれんの非償却処理及び機能通貨の決定について、現状のIFRSの規定に問題がないか適用後レビュー(実態調査)をすべきである。

 

  • 固定資産の減損の戻し入れについて、理論上、実務上の懸念がある。

 

このほか素晴らしいことに、ASBJは、基準に関連する研究・開発の協力や人材提供の申し出も行っている。僕はとても重要なことだと思う。

 

これから数回をかけて、これらASBJのコメントの内容を紹介していきたい。今回は、IFRS財団評議会やIASBについて、こういう意見募集が行われることについて僕の感想を記載したい。

 

IFRSは全面時価主義、製造業無視の金融資本主義の手先、アングロサクソンの陰謀などといわれるが、もしかしたら、IFRS財団評議会やIASBもそういう評判を気にしているのかもしれない。というのは半分冗談だが(日本でしか言われていないらしいこともあるらしいから)、IFRS財団評議会やIASBは「手続」、即ち、「民主的な運営」を非常に重視していることが見て取れる。日本でも財務諸表規則や会計基準等について公開草案が提示され、このような意見募集が行われるが、ガバナンス面や運営方針にまで及ぶものではない。

 

IFRSは完成した基準ではないし、IFRSの適用を監視していく体制の整備はこれからだ。会計基準の中味に焦点が当たりがちだが、こういうガバナンス面、運営面も注目し評価する必要がある。こればかりでなく英語さえ読めれば(僕には無理)、IASBのホームページには実に様々な議事録や資料(動画も含む)が掲示されている。登録すればメールも毎日といっていいほど送られてきて、動きを知らせてくれる(僕には豚に真珠)。そういう評価が外部から行いやすい体制になっている。

 

「外国で会計基準が決められてしまうことのリスク」などと言われるが、国内で決まっていれば安心だろうか。国内では「審議会方式」に対する問題の指摘(官僚による恣意的な運営、特定の利害関係者や既得権者と官僚の癒着など)も多い。現在の企業会計審議会がそうだと言うつもりはないが、いずれそのような運営がなされないとも限らない。また、ASBJでも議事録の公開などが行われているが、内容が恐ろしく分かり難く(「専門的」というべきだが…)、このブログのネタにもできない。

 

ただ、IFRSを全面導入したあとでも、それを中断・離脱できる体制を準備をしておくことは、日本の選択肢を確保する意味で重要だ。そのためには企業会計審議会やASBJは引続き必要だし、そのガバナンス面や運営面を外部から見えやすくしておいた方が良い。IFRSを止める事態にならなくても、ASBJは、今回のアジェンダ協議のように日本代表としてIASBへ意見発信したり、開発協力や人材提供をする重要な機能が期待される。企業会計審議会も(監査部会以外に)IFRS財団評議会に対して評議委員となる人材を選出したり、日本代表としてIFRS財団評議会や諮問委員会へ意見発信をするような、日本の会計面での対外戦略を提案したり、決定するような機能が期待できるかもしれない。

 

ということで、IFRSを導入するか否かという議論に目途がつけば、IFRSを導入した場合の企業会計審議会やASBJの役割、運営体制等々の検討も必要になると思う。

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