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2012年7月 3日 (火曜日)

【東電2012/3有報】監査報告書の強調事項~見積もりの限界

2012/07/03

当初、決算短信で始めたこのシリーズは、もう株主総会が終わってしまい、有報も提出されたので、前回の記事から有報が対象となっている。当初掲げた会計的なテーマは2つで、一つはGCの注記、もう一つが災害特別損失の注記だ。前回でGCが終わったが、今回は次の災害特別損失へ行く前に、監査報告書の強調事項へ寄り道したい。

 

一般に、監査報告書は意見の種類(適正意見、不適正意見、意見不表明、限定意見)には注目が集まるものの、その他の部分が脚光を浴びることは少ない。しかし、オリンパスや東電など特別な状況においては、意見の種類以外に監査人から情報提供が行われる(企業が開示した内容のうち、特に重要な部分を強調する)。これは、財務分析をする際などに、間違っても見落としてはならない重要情報なので、もっと注目されても良いところだと思う。

 

例えば、オリンパスでは、裏ファンド関係の取引に関連した海外捜査機関の調査のリスクが記載されていた。そして今回の東電では5項目、「1.GCに関する追記」、「2~4.引当金等の見積りの限界」、そして「5.1兆円増資の総会決議」についてが記載されている。1と5はGC関係で前回触れたので、まだ僕が触れていないのは、引当金等の限界に関する2~4の記載についてだ。これらについてもう少し具体的に何が記載されているか見てみよう。

 

2.原子力損害賠償引当金の見積りについて(下記は要約)

・農林漁業や観光業以外の風評被害、間接被害及び一部の財物価値の喪失や減少等については、合理的に見積ることができないため計上していない。

・放射性物質による汚染を除去による廃棄物の処理や除染費用についても、具体的な実施内容等を把握できないため計上していない。

 

3.災害損失引当金の見積りについて(中長期ロードマップ関係)

原子力発電所の廃止措置の実施にあたっては予め原子炉内の燃料を取出す必要があるが、その具体的な作業内容等の決定は原子炉内の状況を確認するとともに必要となる研究開発等を踏まえての判断となる。従って、中長期ロードマップに係る費用または損失については、燃料取出しにかかる費用も含め、今後変動する可能性があるものの、現時点の合理的な見積りが可能な範囲の概算額を計上している。

 

4.原子力発電施設解体費の見積りについて(福島第一の1号機~4号機)

福島第一原子力発電所1号機~4号機の解体費用の見積りについては、被災状況の全容の把握が困難であるため、今後変動する可能性があるものの、現時点の合理的な見積りが可能な範囲の概算額を計上している。

 

2については、何度も記載して恐縮だが、機構による資金的、損益的なサポートを受けるため、引当金が計上されていないとしてもまだ財務情報の価値を毀損する程度は低い。しかし、B/Sに計上された債務の網羅性に欠けること、しかもそれが巨額になることは問題だ。

 

そこで僕は、昨年7/6の記事で、計上できない金額がどれほどの規模になるかをイメージできるような情報を注記すべきと書いた。昨年は大混乱の中での決算だったので、そこまでやれないのはやむを得ないと思うが、いまだにそういう工夫ができないのは残念だ。「できないものはできない」ではなく、読者が見たいものをできる限り工夫し、読者が実態に近づけるよう努力する姿勢が重要ではないだろうか。社内的には目安の数字は持っているだろうし。それが目的適合性のある情報だと思う。

 

3については、2とは異なり、東電が自ら負担する費用だ。2012/3期は、2011/3期に見積もった金額が足りずに3千億円弱追加の損失を計上している。見積額の大きな変動は、株主にとっても債権者にとっても重要な影響をもたらす。GCにも直撃する。そこで次回にもう少し詳しく検討したい。

 

ただ、3の見積額が妥当かどうかについては「中長期ロードマップ」の理解が前提になるが、このロードマップ、正式には「東京電力㈱福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」(平成23年12月21日)は、原子力や土木建築関係の門外漢である僕には、理解が難しい。したがって、金額が過大とか過小とか、そういうことは分からない。ここではあくまで引当金計上額ではなく、「注記を開示する姿勢」を考えてみたいという趣旨なので、その点をご了解いただいたうえで、次回お読み願いたい。

 

4については、何故ここに記載されるのか、僕には良く分からない。「原子力発電施設解体費」というのはP/L科目で、会計方針を見ると相手勘定のB/S側は資産除去債務になるようだ。そして、資産除去債務は、将来の資産除去時の支出額を見積り予め負債計上したもので、同時にそれを資産にも計上して減価償却(や利息計算)の対象にし、資産の使用期間にわたり資産除去債務を費用配分する。ところが、今回のような災害による損失が、資産計上されたり、減価償却の対象となることなど考えられない。一時に損失計上すべきだ。よって、災害による損失は、資産除去債務には関係ないはずだから、被災状況次第で見積りが変わるような損失や費用は、3の災害損失引当金(B/S科目)や災害特別損失(P/L科目)で扱うもので、「原子力発電施設解体費」ではないように思われるからだ。

 

しかし、もしかしたら、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」や「原子力発電施設解体引当金に関する省令」の規程に基づくと、被災状況により変動するような損失・費用についても、原子力発電施設解体費に含まれるのかもしれない。このあたり、僕はこの法律や省令を知らないのでなんとも言い難いが、強調事項として追記するような重要項目なら、会計方針等の記載をもっと分かりやすくしておいて欲しかったという気はする。

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