企業会計審議会の中間的論点整理(7/2付)の概括的整理
2012/07/08
社会保障と税の一体改革に関する三党協議に自民党と公明党を参加させるために行われた内閣改造で、金融担当大臣が、自見庄三郎氏から松下忠洋氏へ変わった。そしてこのタイミングで、IFRSの検討項目もちょうど一巡したのだという。そこで6/14の企業会計審議会では「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)(案)」なるものが配布され、その正式版が7/2に公表された。今回は、その注目点について簡単に記載したい。
(ポイント)
① 連単分離、中小企業等には適用しないことは、ほぼ確定。
② 当面はIFRSの任意適用を進める(強制適用しない)。
③ 日本の会計基準は、主体性を持ってIFRSへのコンバージェンスを進める。
④ IFRS適用の目的、日本の経済制度への影響についての検討を進める。
⑤ IFRSの開発には積極的に参加・貢献していく。
以上は、冒頭の概括的整理を箇条書きに直したものに過ぎないが、ここが大事なところだ。しかし、これが1年間の議論の成果ということになると、IFRSの導入について再検討を要望した産業界等は満足したのだろうか。
僕の理解では、経団連等はIFRS導入に全面的に反対していたのではなく、導入の仕方(スケジュールの明示や導入範囲)や開示制度の再設計(単体開示の省略)を考えて欲しい、企業負担の軽減を考慮してほしいということだったはずで、全面的に反対したのはIFRSを良く理解していない労働界や税理士会の代表だった。
しかし、導入スケジュールはますます不透明になり、企業は準備して良いものやら良くないものやら、ますます分からなくなったし、単体開示の省略は事務局に軽くあしらわれた感じだ。連単が分離されたことで、IFRSによりコストがかかるようになったし、IFRSを単体の経営に役立たせるための余計なコストもかかる見込みとなった。どこに企業負担の軽減があるのだろうか?(いやいやそれは言い過ぎで、少なくとも市場をIFRSと日本基準で分ける、その選択権を企業が持つというアイディアは良いかもしれない。)
それにしても、IFRSは企業を短期売買の対象にするアングロサクソン流の証券資本主義の手先だとか、IFRSは日本企業風土、文化であるゴーイングコンサーン経営と合わないだとか、会計基準・会社法・税法のトライアングル体制は絶対でIFRSだとそれに合わないないだとか、良く聞いてみると、時代を昭和40年代50年代に逆行させたいのかと思うような、日本国内だけでしか通用しない情緒的な主張で、多くの人にIFRSを誤解させ、議論を混乱させ、社会の会計に対するニーズの変化を無視し、存在感が薄くなっていた日本伝統の会計理論の延命を果たさせた(一部の?でも主流の?)会計学者は喜んでいることだろう。(という僕の文章も非常に情緒的です・・・)
IFRSであろうがなかろうが、会計は、経営の道具としての価値が最重要だ。だからこそ、外部の利害関係者に開示する意味がある。そして課税所得計算や配当可能利益の計算に流用できる。その順番を間違えてはいけない。せっかく管理会計と開示用の制度会計の融合の度合いが増し、経営に良い影響、良い緊張感を与えようとしているのに、そして、それこそが会計基準が日本経済に与える影響の本源的なものであるのに、それをネガティブにとらえた議論ばかりで盛り上げるのは、会計を社会に役立たせる使命を負っているはずの日本の会計学者の怠慢ではないだろうか。いや、会計学者だけでなく、現場で企業関係者と接しながら十分そういうメッセージを伝えきれていない会計士も同罪かもしれない。自分のことも反省しながら中間的整理のこの先を読み進めていきたい。
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