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2012年7月10日 (火曜日)

【中間的論点整理】自見氏の問題提起を振返る

2012/07/10

今日(7/9)は、梅雨明けを思わせるような強い日差しだが、僕の在所では風は意外に涼しい。しかし、今年も日本は竜巻や豪雨など相変わらず異常気象の連続で、そのうえこの夏は電力不足のために、昨年に引続き節電が必要だ。果たして夏は今日のように過ごしやすいか、それとも猛暑になるか。確実なことが分かるなら良いが、分からないならそれなりに複数案を持ちながら、状況に対応していくしかないだろう。

 

さて、企業会計審議会から7/2に公表された「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」は、2011/8/25に金融庁事務局から提示された11項目についての議論を、下記の7項目にまとめている。

 

1.会計基準の国際的調和

2.国際会計基準の適用

3.わが国としての意見発信

4.単体の扱い

5.中小企業等への対応

6.任意適用

7.原則主義への対応等

 

これらは、方向性の出ているものもあるが、両論併記的なものも多く、始めて1年経ったが、議論はまだまだ続きそうだ。

 

振返ってみるとこの議論は昨年6月、当時の自見大臣の政治主導により始まったもので、自見氏の会見で配られた資料は、次のように述べている。「この議論に当たっては、会計基準が単なる技術論だけでなく、国における歴史、経済文化、風土を踏まえた企業のあり方、会社法、税制等の関連する制度、企業の国際競争力などと深い関わりがあることに注目し、さまざまな立場からの意見に広く耳を傾け、会計基準がこれらにもたらす影響を十分に検討し、同時に国内の動向や米国をはじめとする諸外国の状況等を十分に見極めながら総合的な成熟された議論が展開されることを望む。」 今さらだが、改めて考えてみると、この問題提起の仕方に問題があったような気がしてならない。

 

もし、異常気象を防ぐ方法があるのなら、それを議論する価値がある。だが、異常気象を防げないのであれば、起こった場合の対応を検討するしかない。自見氏の問題提起の仕方は、この簡単な問題の切り分けができていない。会計基準を鳥瞰的に見下ろしたのは良いが、視界に入ったものをやたらに羅列したので、かえって会計基準がなんであるかが見えなくなった、そんな問題提起のやり方だ。

 

例えば「国における歴史、経済文化、風土を踏まえた企業の在り方」と会計基準に深い関わりがあるという。それはそうだ、会計基準が企業の財務的な姿の見え方を決める。経営者はその姿を参考にしながら経営する。金融機関や投資家も、融資や投資の意思決定に利用する。それを見ずに経営し、融資し、投資したら、デタラメと非難されるだろう。でも、関係があるといってもそれだけだ。

 

会計基準が、終身雇用制や年功序列制を日本に定着させたわけではない。逆に、会計ビックバン以降の新しい会計基準が、成果主義の人事制度やリストラを企業にもたらしたわけでもないし、派遣社員を増やしたわけでもない。為替レートの変動、新興国製造業の成長、退職年金制度の普及・充実による企業の財務的負担の増加、日本企業のマーケット対応力の低下などが、日本の企業や経済社会に変化をもたらしたものであって、会計基準がこれら諸問題の原因ではない。だから、会計基準を変えたからといってこれらの問題が解決するわけではない。会計基準は企業の実態を経営者に見せて、問題を突きつけ、対処を促すだけだ。異常気象は会計基準では防げないし、会計基準がどうあろうと異常気象は起こる。それを会計基準に絡めて論じてもしょうがない。だが、異常気象が企業に与える影響を経営者に早く認知させるにはどうしたらよいか、ということなら、それは会計の役割だ。昔の会計基準に戻せば見えなくなる問題がある。だが、見えないだけで問題が解決したわけではないのだから、放置すれば、落とし穴に転落するような恐ろしい結果を生む。問題を隠すための会計基準など、皮肉か冗談にしかならない。そんな方法で日本企業がグローバル競争に勝てるはずがない。一部の会計学者は推奨しているが。

 

課税負担も(隠れた)重要論点として意識されていると思う。しかし、課税負担が増えて企業の研究開発力が削がれるというのは、会計の問題ではなく税制の問題だ。会計は、開発費が将来キャッシュフローを生むと見込まれるのであれば資産と認め、そうでなければ費用処理する。将来キャッシュフローを見込む技術をもっと高められないかと企業に問題提起している。それは経営に役立つ。投資家や金融機関の意思決定にも役立つ。会計の問題はそこまでだ。企業の課税負担を政策的に減らしたいのであれば、税制の問題として議論すればよいのであって、会計基準で論じてもしょうがない。

 

グローバルに活躍する企業と中小企業では会計の目的が違うから、会計基準が違ってもよいという。それなら、企業会計と税務会計も目的が違うから違ってもよい。だから確定決算主義など放棄すればよい。だが、課税の負担能力や公平性という観点から、そしてそれを実現するための社会的なコストを最小化するという観点から、企業会計を前提として課税所得の計算をしたいというのであれば、会社法の配当規制のように、税制の目的に合わないところを部分的に修正すれば済むことだろう。しかし、企業会計で費用処理しないと税務上損金に認めないなどと、税制のために会計基準を歪めるようなことは、企業の実態が見えにくくなって困る。税制は、会計基準に相乗りしてきて、勝手に行先を指図してはならない。この順番を誤ってはいけない。

 

企業の外部環境は劇的に変化するものだから、企業自身も絶えず変化すべきものを変化させることを求められている。企業にとって問題となりそうなことを、なるべく早く見つけられるように企業実態を見えやすくする、それが会計の役割だ。会計基準も企業環境が変われば絶えず変化していかなければならないが、過去の日本の会計基準の歴史は、欧米の後追いだった。日本企業がより適切な経営戦略を採用できる土壌を作るために、情報インフラの一つとして、会計制度が企業をどうサポートすればよいのか、それがうまくいけば、そうでない場合より、企業の、そして社会の変化は穏やかで済む。そして、経営に有用な情報であれば、開示する価値も高い。こういう観点で問題提起がなされればシンプルだった。この役割にはIFRSが良いのか、日本独自の道がいいのかと。

 

会計は、人でいえば目や耳に相当するとても重要なものだが、直接問題解決を図る道具ではない。しかし、自見氏は、会計という道具では果しえない役割までもごっちゃ混ぜにして問題提起した。それで議論がまとまるはずがない。

 

というわけで、1年間の議論でまとまりきらないのは、そもそもの問題提起の仕方にも(大きな)一因があったと思う。特に、「2.国際会計基準の適用」、「4.単体の取扱い」、「5.中小企業等への対応」、「6.任意適用」にはその影響が大きいようだ。次回からもう少し踏み込んで各分野を見てみたいと思う。

 

ところで、前回「自分のことも反省しながら中間的整理のこの先を読み進めていきたい。」と書いたのに、早速今回他人の揚げ足を取ってしまった。だが、「7.原則主義」のところに「監査人に対する要請」という項目があるので、いまのところ、そのあたりでは反省ができそうな気がしている。お待ちいただきたい。

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