【中間的論点整理】7.原則主義への対応等
このタイトルは、次の小見出しに分かれているが、最後のまとめ部分には、実務的な取組みを積上げ、関係者が連携していくことの必要性、特に任意適用企業による経験を活かしていけることへの期待が述べられている。
① 原則主義と比較可能性
② 作成者に対する要請
③ 監査人に対する要請
④ 関係者間の連携
⑤ 当局に対する要請
そしてどうやら当局は、プレクリアランス制度(企業と監査人の意見の相違についての事前審査制度)やガイダンス(明確な強制力のない教育的文書)の策定を行っていく方向性のようだ。
ところで、このような小見出しがついたのは、「2.国際会計基準の適用」とこの原則主義だけだ。「2.国際会計基準の適用」の方は、実にバラエティ豊富な意見を系統づけるための苦心の小見出しという感じだが、こちらの小見出しは一つ特徴がある。「~に対する要請」というパターンでも分かるとおり、特定の関係者を想定していることだ。ただ、①の「原則主義と比較可能性」は、財務諸表の利用者を想定して原則主義による比較可能性の特徴を説明しているとも読めそうだが、もう一つ、原則主義がうまく機能しない場合の弊害を最初に印象付けることで、②以降の要請を名指しされた関係者に受入れやすくするための導入部とも読める。いずれにしても、「論点整理」の段階で関係者に要請されるというのは、新しい会計制度にとって重要な事柄に違いない。
このうち、以下の監査人に関連する要請について、次回に深掘りしてみたい。
(監査人に対する要請)
○ IFRSを適用する場合はもちろん、日本基準においても、今後わが国の公認会計士はIFRSの知識が必須になってくる。
○ 監査とセットで考えないと、会計基準が原則主義か細則主義かだけでは決着がつかないのではないか。監査のあり方、監査人がどのぐらい原理原則に基づいて判断できるのかという、監査の成熟度に密接にかかわる問題ではないか。
○ 現行の会計処理のほとんどはIFRSの下でも継続可能と考えるべきであり、監査人においても、費用対効果を踏まえたスムーズな導入を考えていただきたい。
○ 中堅上場企業においてもIFRSの準備が必要になってくるとすれば、中堅監査法人も、対応を十分行っていく必要がある。
○ 監査において会計処理の妥当性を判断するためには、取引の内容、その背景を適切に理解し、また、財務諸表の作成者の考え方についても理解することが重要である。監査法人においては、そうした対応ができるような人材を育成するための研修も行っている。
○ IFRSに基づく財務諸表監査は、日本基準に基づく財務諸表監査と同様の枠組みで監査意見を表明しており、監査意見形成は基本的に日本の監査法人の中で完結している。
(関係者間の連携)
○ 何らかの形で適切な判断基準が共有されるべきであり、作成者と監査人などの関係者が一体となって共通理解を形成していくような取組みを行っていただければありがたい。
○ 作成者と監査人で合意した、実務に照らしたベストプラクティスのようなものが必要になってくるのではないか。
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