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2012年7月13日 (金曜日)

【中間的論点整理】4~6の要約…国内制度の方向性

2012/7/13

今回は、中間的論点整理の4~6、即ち、単体の取扱い、中小企業等への対応、任意適用について、それぞれのまとめのところを要約してお伝えしたい。

 

4.単体の取扱い

(方向性)連単分離が現実的。単体開示については会社法の開示の活用などにより作成者負担の軽減を検討。

 

5.中小企業等への対応

(方向性)非上場の中小企業へはIFRSを影響させない(従来方針の維持)。

 

6.任意適用

(方向性)任意適用の実例を積上げ、IFRSのメリット・ディメリットを把握し対応する。

(注意点)対外的にピュアなIFRSを任意適用していることをアピールする。

 

更に要約すると、20116月以前よりIFRS導入の進め方を穏やかにし、なるべくIFRS導入の影響を直接受ける範囲を狭める、ということのようだ。

 

「連単分離が現実的」といっているが、これは、会社法や税法との調整が大変だから、ということだと思う。但し、会社法については、以前(2011/6月より前)に、法務省の方が企業会計審議会で、IFRSが導入されて会計基準が変わればそれに合わせて配当可能利益の計算を変えるだけなので、会計基準が変わること自体についてコメントはないというようなことを言われていたと思う。だから、会社法との調整は実は関係ない。実態は、税法との調整が非現実的と言っている、即ち確定決算主義を温存したいということなのだろう。変化を嫌っていた税務関係者は安堵したに違いない。

 

単体開示の省略も検討のテーブルには載っている。ただ会社法の開示の活用がなにを意味するのかはよく分からない。いまでもEdinetには、招集通知が掲示されているから、単体を有価証券報告書から省略するということで良いのか? それともXBRLの利用のため、会社法の開示をそのまま有価証券報告書に載せることになるのか?

 

 

全体的な感想としては、All Japanの人材を集めて、根本的なところから幅広く議論をやり直してきたという割には、古い体制を維持してただ会計基準が変わるだけという結果に落ち着きそうだ、と言ったら怒られるだろうか。IFRS導入が、中小企業も含め企業の事業計画の精度を上げるなどより合理的な企業経営に繋がったり、税法とのしがらみから解き放たれたり税効果項目が削減されたり、開示制度の意味を深く考えるきっかけになってくれればと思っていたが、それほど劇的な変化は起こらないようだ。だが、そういうことは、これから時間をかけて、関係者の地道な努力で勝ち取っていくべきものかもしれない。

 

しかし、今は、中小企業が海外進出を迫られていたり、起業を盛んにすべきことが社会的な課題として求められている。会計はもっと経営環境の変化に合わせて、経営に密接にリンクするよう変化していく必要がある。僕も中小企業にIFRSをそのまま導入した方が良いとは思わないが、IFRSはかなり変化に対応しているから、そういうエッセンスを取り入れていく必要があると思う。税制もそれをサポートするように、制度変更していくべきだろう。税制が変わらないと税理士も変わらない。今のままでは、中小企業は昭和に形作られた会計・税制の枠組みに取り残されてしまう。

 

そして会計教育についても検討が必要と思う。既存の簿記論とか会計学は、研究者育成の初歩にはいいかもしれないが、社会の変化やニーズに合っているだろうか。経営者育成の観点から、コンプライアンスをベースに事業計画や予算統制を含め、もっと生々しく実践的・横断的な会計教育ができるように、大学教育はその在り方を見直す必要があると思う。IFRSという会計基準は、そういう変革に活用できる側面を持っている。

 

 

さて、次回は「7.原則主義への対応等」を見ていくが、これについては書き振りがちょっと異なっていて、作成者、監査人、当局など関係者に対する要請が記載され、これまでよりは具体的だ。何かを勝ち取るには、特にそれが自由や裁量、判断する権限のようなものの場合は、即ち原則主義を生かすには、それぞれのプレーヤーが自立し、積極的に責任を負っていける能力を獲得することが大事だと思うが、そういう観点で眺めてみたい。

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