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2012年9月 2日 (日曜日)

脱線2~ルール運用の知恵

2012/09/02

昔を懐古するのは年を取った証拠。だが、日本の家電メーカーなどの業績不振とか、リストラのニュースを見るたびに、学生時代に抱いていた“総合商社への憧れ”が思い出される。と言っても卒業するころには“商社、冬の時代”などといわれて、総合商社も先行きが心配されていた。(しかし、総合商社は投資と回収という事業の本筋に立ち返って事業を再構築し、しぶとく生き残っている。) 僕が憧れていたのは、海外で孤軍奮闘する商社マンの熱い魂のようなところで、その手の小説を読んで感動していた。それを思い出させるのは家電メーカーなどの業績不振の原因が、国際化の失敗やガラパゴス化などと評されるからだ。日本はなぜこんなに内向きの国になってしまったのだろうか。

 

「いやいや、あのころの商社マンはもっと自由だったよ。今みたいに管理や規則に縛られては、孤軍奮闘などしたくてもできない。」という反論も聞こえてきそうだ。前回(9/1)の記事でいうところの固いルールの運用面の弊害だ。その意見は僕も良く分かる。だがそれは、管理や規則の使い方、運用で改善できないだろうか。固い方にもルール運用の知恵がある。

 

社会の要求を満たすことで事業利益(正味キャッシュフロー)を獲得する。或いは社会に貢献して対価を得る。企業が目指すのはこれに尽きるのだが、管理や規則の運用面ではこの大目的が蔑にされることがある。或いはルール(それが細則であっても)の目的が意識されず、ルールを守ることが社会と会社のためになることだと単純化されてしまう。管理面ばかりでなく事業の現場でも目先のこと、社会の利益でなく短期的な自社の利益やもっと悪い場合は部門の利益ばかりが強調されていないだろうか。最悪の場合、組織内の特定人物の利益が強く意識されていたり。

 

法律や政令、省令などの制定・運用も同様だ。もちろん会計基準や監査も。そしてマスコミがニュースを取上げる切り口も。もっと社会的なルールの在り方や利用方法について掘下げて見直して、社会的なコンセンサスを得ていく必要があると思う。単純にルールに合っているかどうか、ルールがあるかないか、ということより、目的に対しルールをいかに役立たせるか(より大きな目的に向かっているか)という観点でルールが存在し、運用されることが、社会の知恵であるように思う。

 

僕はこのブログを始めた当初から、日英サッカー審判の違い(2011/7/4などいくつかの記事でそれを指摘してきたつもりだ。(ルールにそう書いてなくても)もっと上位の目的を目指す運用をしようと。サッカーでも会計でも、ルールが国際的に共通化されても、運用の知恵のあるなしで、成果に差が出てくるに違いないからだ。(興味のある方は、「(A02)原則主義」をご覧ください。)

 

「書いてないからダメ」とか「前例がないからダメ」というのは監査法人の中でも時々聞かれる論理だったし、社会にはびこっているように思うが、それを否定したい。「書いてないことの適否をしっかり判断できることこそ、最も尊ばれるべき能力だし、職責だ」と。それを積極的にやるんだと。もう少し書くと、目的とルールが対立するときに目的を優先したルールの運用ができているだろうか。「本来はそうだけど、ルールに書いてあるからできない」ということになっていると、それはまずいんじゃないか。

 

「会計士がそれを言うか!?」とお怒りの方もいらっしゃるかもしれない。特に同業の会計士から、そしてかつての僕の関与先の方々からもお叱りを受けそうだ。しかし、「遵守か、説明か」というルールの運用を行うことがIASBのデュー・プロセス・ハンドブックにも書いてある(最新版は確認していないが、少なくとも昨年の時点ではそうなっていた)。

 

こういう書き方だと、「書いてあるからそうするのか!」と増々お叱りを受けそうだ。しかし、そういうつもりはなく、僕だけの特殊な偏った意見、考え方ではないことを書きたかったのだ。

 

即ち、ルールに書いてある通りの運用をしない場合は、その方が本来の目的に合っているという説明責任を負う。もちろん、内輪の論理とか、時々揶揄されるような「担当会計士が了解すればよい」レベルの説明ではなく、開示を想定した一般に通用する説明だ。社内ルールの運用であっても、ベースは同じではないかと思う。他の社員に説明できるか。他の社員が、その方が会社と社会の共通利益に適うと思えるか(個人の利益ではない)。

 

ここまで読んでいただければ共感していただける方も多いのではないか。或いは、理想論だと思われた方もいるに違いない。だが、IFRSでも、目的に合わないときは逸脱しなければならないという「IFRSの逸脱規定」があり、同様の説明責任を負う(4/9の記事)。既に任意適用した会社は、会計・開示面でそのようなルール運用を迫られている。

 

企業は絶えず変化し続ける事業環境に適応していく。だから、企業経営者、管理者は、まさにルールに書いてないこと、前例のないこと、書いてあるけどそれでは最早目的に合わなくなったことを適切に取扱うことが、重要な職責(のはず)だ。政治家や官僚も。

 

そして経営者等がその職責を果たすために役立つのが「リスク管理」という内部統制の機能だ。「リスク管理」は、変化を察知し、影響を分析し、選択肢を提案する。そしてこれらが説明責任を果たす材料になる。この機能の良し悪しは極めて重要だと思うが、これが機能している姿を頼もしく実感した経験のある方はどれほどいるだろうか。もし、変化を無視して既存のルールや前例に強引に当てはめて「解決」としていては、リスク管理は不要だが、環境変化からは取り残される。

 

この続きは次回に繰越す。余談だが、実は僕はこのようなルール運用の知恵は、責任を下へ降ろす分権的な組織運営、管理組織の単純化に役立つのではないかと密かに思っている。そして当事者意識の醸成にも。もしかしたら冒頭の家電メーカー等の業績改善にも役立つのではないかと。そして日本社会全体にも。直感でしかないが。

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IFRS全般(適正開示の枠組み、フレームワーク・・・)」カテゴリの記事

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