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2012年9月 6日 (木曜日)

【OxRep】やはり中止します。~トモ・スズキ氏?

2012/09/06

既にご存じの方も多いと思うが、このオックスフォード・レポートの作成者である「トモ・スズキ」氏の資格詐称が報じられている。しかも、これを正そうとした日本公認会計士協会(以下、「協会」と記す)が、金融庁から「よいではないか」と怒られたらしい。あり得ない。本当だろうか。ご興味のある方は、下記をご覧いただきたい。他にも、あり得ないことが色々記載されている。

 

 金融庁が「詐称」を容認した学者(磯山友幸のブログ)

 

さて、あまりに信じがたいことだったので、僕は協会のホームページにある会員検索(会員専用ページ)で「スズキ トモ」を検索してみた。よみがなで検索したところ、10名が検索されたものの、いずれも「スズキ トモ◯◯」というような読み方の方々であり、ずばり「スズキ トモ」という人は、9/5現在、会員・準会員には存在しなかった。公認会計士を名乗るなら、ずばり「スズキ トモ」で登録しなければならない。どうやら「スズキ トモ」氏が公認会計士ではないことは本当のようだ。

 

しかし、問題は「公認会計士です」と名乗ったかどうかだ。これについては検証方法のアイディアが浮かばない。磯山友幸氏を信じるしかないのか。

 

だが、「スズキ トモ」氏は、大手監査法人に勤務した経験があり(Saïd Business SchoolHPによれば、Arthur AndersenとKPMGの東京事務所)、旧公認会計士二次試験、三次試験に合格したとオックスフォード・レポートに紹介されているので、その期間は日本公認会計士協会に所属していたはずだ。であれば、退会後に公認会計士と名乗れば資格詐称になることを知らなかったはずがない。また、オックスフォード大学の研究者である「スズキ トモ」氏が、そのような資格詐称をする動機が分からない。「オックスフォード大学教授」で十分だろう。

 

ところで、公認会計士という職業は、法律上、日本公認会計士協会に登録した個人名で成り立っている(公認会計士法 17条、第46条の2、第48条)。賛否両論あるが、監査報告書に監査人が自署・捺印するのもその流れで来ている。協会は、協会規則を運用し、公認会計士が規則違反を行ったかどうかの判定も行う。規則違反と判定されれば、同時に公認会計士法や証券取引法などの違法行為となることもある。このように協会は、単なる業界団体組織ではなく、監査制度など、公認会計士に関わる国の諸制度運営の一端をも担っている。その要となるのが、協会に登録しないと公認会計士という肩書を名乗らせないこのルールだ。このルールがないと、協会が規制できない公認会計士がいることになってしまう。だから、登録されていない「公認会計士」に警告を与えるわけだ。法律違反を犯してますよと。そして協会に登録した個人名が重要であることもお分かりいただけると思う。

 

さて、僕はこのオックスフォード・レポートや「スズキ トモ」氏について8/25の記事で、「好意的に考えてもやっつけで作成されて、内容が作成責任者によってちゃんと推敲されていないか、或いはレポート作成者に日本の会計基準を評価する実力がないのではないか」などと書いて、レポートの信頼性と学者としての倫理観を疑った。さあ、それでも「スズキ トモ」氏を信じるか、それとも磯山友幸氏を信じるか。

 

何を信じたらよいのか難しいことになってきたが、一つだけはっきりしてきたことがある。それは、このオックスフォード・レポートに対する僕の関心がグッと失せてきたことだ。ということで、続きを期待されていた方がいたら申し訳ないが、このシリーズは中止にさせていただきたい。

 

 

ところで、こんなことを書くと「匿名でブログをやってるお前はどうなんだ。会計士と名乗るなら協会へ登録した個人名を出せ」と怒られそうだ。確かに「はみだし会計士」で会員検索したところでそんな会計士は検索されるはずがない。何とも怪しいブログだ。だから、実名を出していないこのブログには、なんの権威もない。(実際には実名を出しても権威がない。。。) 

 

しかし、実は、権威があっては困るのが、このブログだ。

 

このブログは、IFRS解釈に関する草の根の議論を盛り上げたいという意図があってやっている。ご存じのとおり、僕は原則主義が大好きなのだが、その原則主義のIFRSを上手に適用していくには、IFRS解釈について、IASB(国際会計基準委員会)やIFRIC(国際財務報告解釈指針委員会)頼みではダメだと思うのだ。日本の取引慣行の会計処理は日本で判断・解決できるように、そして個別企業のことは各社(と監査人)で解決できるようにと願っている。そのためにはもっと草の根のIFRS論議が盛上り、IFRSに対する理解が深まっていくことが必要というのが僕の持論だ。そして、そのきっかけやヒントになるようなことをこのブログで提供できれば、と思っている。

 

だが、もし仮に、IFRS解釈の根拠とされるような権威を持ってしまったら・・・。まあ、あり得ないが、でも仮にもしそうなったら、逆に、このブログが草の根議論を抑制してしまうかもしれない。それでは困るのだ。自意識過剰か、単なる妄想だと失笑されそうだが。

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コメント

金融庁の随意契約の相手は、オックスフォード大学 鈴木智英となっています。
http://www.fsa.go.jp/common/budget/buppin-zuii/201111.pdf

http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/10091301.html

AYさん、貴重な情報をありがとうございます。そういう情報が開示されているとは知りませんでした。
また、ご紹介いただいた記事(RIETIのHPともう1件のインタビュー記事)も拝見させていただきました。その結果、鈴木智英氏の印象は随分変わりました。僕も静岡県人なので、同郷にオックスフォード大学で活躍している人がいることには、むしろ心を強くしたぐらいです。続きを読むかどうか、もう少し考えたいと思います。

また、改めて、JICPAの会員検索をやってみましたが、やはりその方の登録はありませんでしたので、一応ご報告いたします。しかし、問題はそこではなく、本当に公認会計士と名乗ったのかどうかであることは、僕も理解しています。

僕も、RIETIのHPの範囲であれば、主張として理解できるのです。単なる会計基準改革ではなく、関連する社会システムの改革につなげることが日本にとって重要だと思っています(ただ、IFRSが原因なのか、どこを直せば社会システムが改善されるのかといった、問題の理解の仕方が鈴木氏とは異なります)。
しかし、オックスフォード・レポートでは、オリンパスや大王製紙といった不正事例を持ち出して、公正価値会計に問題があると、公正価値会計の批判材料にしています。でも、これらは公正価値会計と関係ないのです。きっと多くの人は誤解したことでしょう。そして、それを狙っているようです。その姿勢にはやはり不信感をぬぐえません。また、「IFRS=公正価値会計」ではないと知っているのに、そういう扱いをしてますね。

そうはいっても鈴木智英氏の人柄とか人生の目標とか、そういうものに触れられて、ふわっと暖かい気分になったのは事実なのです。また、いろいろお教えいただけるとありがたいです。

スズキ氏は素晴らしい方のようですよ。

よろしければ、下記の2つの記事をご参照下さい。

http://oxford2010.exblog.jp/12027434/

http://ameblo.jp/oxford-2010/entry-10372794229.html


それに比べ、磯山友幸氏は自身のブログの中で、レポートの内容には
まったく触れず、人の揚げ足のみを取っているように見えます。
そんな磯山氏の人格を疑わずにいられません。


また、磯山氏はブログの中で、


‥‥オックスフォード大の教授といえば、ふつうそのカレッジの教授だが、
スズキ氏は所属するハートフォード・カレッジでは「オフィシャル・フェロー」
という肩書きに過ぎない。‥‥


などと、いかにも知ったかぶりで書いていますが、
事実をまったく理解できていないのは明らかですね。


※ そもそもオックスフォード大学のカレッジには「Professor(教授)」
という地位は存在しないのです。


※ Professor(教授)という地位はオックスフォード大学から授与
されるものであり、カレッジから与えられるものではありません。

磯山氏におかれては、おそらく大学(University)とカレッジ(College)の
違いさえわかっていないように見受けられます(笑)。


少し調べればわかる事実関係を調べもせず、上記のように言い切ってしまう
人物の発言を信じることができるでしょうか‥‥疑わしいものです。


そもそも重要なのは、レポートの内容であるというのに、磯山氏のブログには
その点が完全に抜け落ちているというところにも合理性がなく合点がいきません。


ですので、はみだし会計士さんも

「続きを読むかどうか、もう少し考えたいと思います。」

とされていらっしゃいますが、レポートすべてを読まれてから、
再考され、ブログをお書きになった方が良いかと思われます。

MNさん、なるほど、「熱血の名物教授、しかもつまらない科目の会計学の」ってことですね。この手の評判をとる人に悪い人はいないというのは非常にわかる気がします。

磯山氏のFellowかProfessor かという論点は、僕も気になってOxfordのホームページでTomo Suzuki 氏を検索し、調べてみました。すると、なんと両方の記述があったのです。しかし、そもそも僕にはOfficial Fellowというのがどういう人なのか、全くわかりません。それでこの点には触れなかったのです。日本で大学教授をしてる僕の友人にOfficial Fellowのことを聞くと、「たぶん、偉い人じゃない?」なんて言うし(^^;; でも、磯山氏が間違えているのですね。

実は、前回のコメントをもらった後、再チャレンジしたのですが、やはり集中力が続かず読めませんでした。それで製造業シリーズを始めたのです。物事には色々な面がありますから、それを論ずる人の立場によって、色々な表現になります。スズキ氏の立場からIFRSを見れば、一般によいと思われていることでも悪い面が見えてくるしそれを強調する、そこまでは僕も分かるのです。しかし、(繰り返しになりますが、)スズキ氏は、関係ない話を持ち出してIFRSが悪いと書いたのです。それで僕の許容範囲を超えてしまいました。僕が小さな人間なのかもしれませんが・・・。

しかし、せっかくまたコメントをいただいたので、もう少し時間を開けてまたチャレンジしてみます。ご要望をいただいたのに私のわがままで申し訳ありませんが、お許しください。お礼が最後になり申し訳ありませんが、コメントをありがとうございます。日本人の熱血名物教授の話はしっかり頭に入りました。


早々のお返事をありがとうございます。


そうですね、お時間をおかれてぜひレポートをお読みになってください。
「許容範囲」を超えたところに、素晴らしい意見が書かれていると思いますので‥‥。


ちなみに、Fellow というのは College の地位で、確かに「偉い人」で
あることには違いないのですが、オックスフォード大学独特のシステムであり、
ここで説明するには複雑すぎるので、この場では端折らせていただきます。


そして Professor というのが、University の地位で College の地位とは別物となります。


日本語では College も University も単に「大学」と訳されてしまう傾向があるので、
ややこしいかもしれませんが、オックスフォード大学には独特のシステムがあります。


オックスフォード大学では College は University の下位に位置するものとなり、
Professorship(教授職)は University からのみによって与えられます。


ですので、スズキ氏が College の Official Fellow でありながら、University の
Professor であるということには、何の矛盾もありません。


そのような事実も知らず、磯山氏は知ったかぶりをして、


「オックスフォード大の教授といえば、ふつうそのカレッジの教授だが‥‥」


などと書かれていたたことが、あまりにも滑稽でしたのでコメントをさせていただきました。


前回の私のコメントにも書かせていただきましたが、これらの事実は
誰でも簡単に調べることができる事柄です。


事実を追求せずに、無責任にブログ記事にするというようでは、磯山氏は
ジャーナリストを名乗ることはできないと思います。


そんな磯山氏こそ「詐称」していると言われても仕方がないのではないでしょうか。


また、磯山氏には経済ジャーナリストを名乗りながらも論点が完全にずれている
ブログ記事を投稿するなど、知識人または常識人と思えない不快さを感じてしまいます。


>「許容範囲」を超えたところに、素晴らしい意見が書かれていると思いますので‥‥。
ふふふっ、そんなもったいぶらずにMNさんが素晴らしいと思っているところを教えてください。きっととても参考になると思います。

スズキ氏に対する愛情というか尊敬というか、そういう気持ちがよく伝わってきます。良い先生なんですね。

当時、確かに日本国内ではトモ スズキ先生のことを知らない人が多かっただろうけど、それは先生が国際的に活躍されて日本を顧みたことさえなかったからじゃないの?ヨーロッパではすごく尊敬されていた先生で、中国やインドでも極めて影響力の高い先生。何より、人への思いやりが思想の基礎をなしていて、オックスフォードでは生徒から絶大な信頼を得ていた。ビジメススクールでは会計という科目を超えて全科目でいつもトップの投票を得ていた。最終講義は毎年スタンディングオベーションで、涙を流す学生も出てくる先生です。磯山氏のプロフィールを読んだら、自分で「硬派経済ジャーナリスト」とのこと。こんなでたらめ記事で真に尊敬される先生に汚名を着せるような行為を「硬派」というのか、、、日本のジャーナリズムのレベルの低さが悲しいよ。

“Tomo Suzuki 先生を知らない磯山こそどうしようもないジャーナリスト“さん、コメントをありがとうございます。スズキ先生の今後のご活躍をお祈りしております。

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