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2012年11月17日 (土曜日)

のれん ー 毎期規則的に減損するのはどう?(3)のれんの構成要素

2012/11/17

今回は、のれんを会計がどのように考えているかをお伝えしたい。その際に便利なのが、IFRS第3号の結論の根拠の段落BC313から始まる「資産の要件を満たすのれん」の記載だ。この内容を僕なりに整理して報告したい。

 

(のれんに関連するIASBの動き)

IASBは、20044月にIFRS第3号「企業結合」を公表し、旧IAS第22号「企業結合」に置き換えた。このプロジェクトは2001年に開始されたが、その間の20029月に、FASB(米国財務会計基準審議会)と、あの有名なノーフォーク合意を結び、IFRSとUS-GAAPのコンバージェンス作業をスタートさせている。したがって、2004年時のIFRS第3号も、持分プーリング法を禁止するなどUS-GAAPと共通点が増えている。しかし、現在のIFRS第3号は、両審議会の共同作業により2008年に改定されたものであり、2004年時よりさらにコンバージェンスが進んでいる。

 

このような経緯があるので、IFRS第3号の結論の根拠には、FASBによる関連テーマの検討内容や結論も記載されている。また、この一連の改定作業によって、関連するほかのIFRSも一緒に改定されている(IAS第36号「資産の減損」、IAS第38号「無形資産」、IAS第27号「連結および個別財務諸表」)。SFAS(米国財務会計基準書)も同じような時期に同じような改定がされている。このため、今後の僕の記載には、FASB(米国財務会計基準審議会)とか、SFAS(米国財務会計基準書)などの4文字熟語ならぬ4文字アルファベット?がたくさん出てくるかもしれないが、ご容赦いただきたい。

 

 

(のれんの構成要素)

さて、本題に入ると、IASBはFASBが出したSFASの公開草案(1999年及び2001年)から引用する形で、投資額と売却された企業の価値の差額(のれん)は、6つの要素から構成される可能性があるとした。そして、この6つを大きく2つに、「のれんに含まれてよいもの」(2つ)と「のれんから排除されるべきもの」(4つ)に分けて考えている。

 

そしてIASBは、「のれんに含まれてよいもの」を“コアのれん”と呼び、コアのれんについて、資産計上すべきか否か、償却か非償却か、減損かなどを検討している。そして、残りの「のれんから排除されるべきもの」については、IFRSの改善によってのれんに含まれないようにするか、影響が小さくなるようにしたとしている(末尾に後述するが、実は例外があり、不純物が残る)。

 

ということで、のれんの不純物は除去されて、純粋なのれん、即ち、コアのれんが見えてきた。それは次の2つの要素で構成される。

 

① 前回(11/14説明した(買収される)会社が積上げてきたのれんに対する対価

IASBは、これを「被取得企業の既存の事業における継続企業要素の公正価値」と呼んでいる。前回記載したように、企業が存続しているのは、社会から相応の存在価値を認められているからだ。その面からこのような表現をしていると思う。

 

② 買収によるシナジー効果によって生まれる新たな価値に対する対価

 

(シナジー効果によるのれん)

①については前回説明済みなので、ここでは、②のシナジー効果によるのれんの特徴を説明する。IASBは、②について「取得企業と被取得企業の純資産及び事業を結合することにより期待される相乗効果およびその他の便益の公正価値。IFRS3 BC313)」といっている。IASBの説明につけ加えると、②ののれんは、買収側の事業や技術(経営技術を含む)と買収される側の事業や技術が接触することで発生する“化学反応”により期待される新たな将来キャッシュフロー(もちろんインフロー)だ。それは以下のような特徴があると思う。

 

 (①と同じ特徴)

・コアのれんに物理的実体はないが、買収対価として具体的に支出されている。

・買収する側には、コアのれんが将来キャッシュフローを生むとの期待がある。

・買収することで買収側がコアのれんを支配する(法的にも、経済実態的にも)。

 

 (①と異なる特徴)

・②は、買収時点では、まだ“期待”でしかない(化学反応は起こってない)。

・①は日常業務が源泉だが、②はだいたい意図的創出される。

・②の成果は買収する側の事業にも現われる。

 

これらの特徴は、コアのれんを会計上どのように扱うかに大きな影響を与える。次回以降に重要になるので、これらの特徴を頭に入れていただくか、またここに戻って読み返していただけるとありがたい。

 

 

(のれんは人が生み出す価値)

ちょっと余計なことを書かせてもらうと、僕は企業同士のシナジー効果は、イノベーションだと思っている。まあ、イノベーションというのは便利で格好いい言葉だが、漠然としているのでもう少しイメージを固めるために、その定義をWikipediaから拾ってみよう。

 

イノベーション(innovation)とは、物事の「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと。

 

定義を読んでもやはり漠然としているが、何か「新しい」手段で、価値を「創造」することのようだ。その「新しい手段」を如何にスタートさせるかが、②を引出すポイントなのだろう。実は「新しい」というのもなかなか難しいもので、昔からあるものでも突然「新しい」と言われたりする。そもそも科学における「発見」だって、もともとあったものを人間が初めて認知できたというだけであり、そのもの自体は昔からあり続けてきたのだ。ただ、人がそれを知らなかっただけに過ぎない。

 

企業同士のシナジー効果もそういう面がある。企業Aにとっては当然のことが、企業Bには未知・未体験のことだったりする。それが企業Bに役立つ知識や技術、機能であれば、それを利用することによって企業Bにはイノベーションが起こる。それがシナジー効果の始まりとなる。どちらかが、或いは、双方が、相手の持ち物の中になにか「新しい」ことを発見するのが、シナジー効果を起こす化学反応のきっかけとなる。したがって、重要なのは、「新しいこと」をが分かるように情報がオープンにされることだ。両社の人と人との交流、接触面をどれだけ作れるか、そしてそこで行われる双方向のコミュニケーションが重要だ。

 

ところが、買収側と買収される側の人間関係はそううまくはいかない。買収したらすぐに相手と良好なコミュニケーションが成立するわけではない。だから買収する側は、買収される側にシナジー効果を説明し、買収される側のメリットを認知させ、協力的な姿勢を引出さねばならない。買収してからシナジー効果を探すようでは時間の無駄で、折角熱せられた鉄も冷めてしまう。予めメインストリートの基本設計をイメージしておき、買収後速やかに相手に説明できるようにしておく必要がある。それでこそ、人の交流がスムーズになり、多くの接触面を設定でき、同じ方向を向いてコミュニケーションができる。そうすることで(=両者のコミュニケーションが進むことで)詳細設計ができ、また、当初想定しなかった分野でのイノベーションのきっかけを得ることができる。事前準備、戦略策定が必要だ。

 

上記の②が①と違うところとは、まさにこういう面が反映されている。①は既に存在しているものだが、シナジー効果は、買収時点では単なる期待でしかなく、その後に意図的に創造していかなければならない。そしてその結果、買収した側にもイノベーションが伝播する。それは、人と人が接することで起こる化学反応が双方の企業価値を高める部分であり、単に、土地や建物、生産設備、さらには現金や有価証券などの物理的なものを手に入れることで、実現するものではない。

 

もう一つおまけを書くと、①も、買収される企業に関わった人々が創業時から積上げてきたもので、物理的な個別科目の評価に含められない価値が、買収額に上乗せされたものだ。①も②も、“人の働き”の評価額だと思う。だからこそ、B/Sの個別勘定では評価しきれない価値として、「のれん」を独立科目にするのだと思う。即ち、僕は「のれんは人が生み出す価値を直接評価したもの」だと思う。そして、②は買収される企業の価値だけでなく、買収する側の価値が高まる要素も含んでいる。

 

 

以上が、のれん(コアのれん)の中味だが、読んでいただいて、イメージがより具体的になっただろうか。もしそうなっていれば、のれんの会計処理について、具体的な検討をする準備ができたことになる。

 

 

------------------IFRSの改善による不純物の排除ついて--------------------------

IASBは、2004年改定前の段階で、買収額と買収される企業の純資産の評価額との差額(のれん)には、次のような、本来のれんに含めるべきでない不純物が含まれていると考えた。

 

① 買収される企業の決算上の過大評価額

② 買収される企業の決算上の過小評価額

①や②は、買収する企業が、買収時に用いる資産・負債の評価方法(IASBはこれを公正価値と考えている)と、実際に記帳する際の評価方法の相違による差額。

もう少し具体的には、会計基準や法規制等の何らかの理由で、買収後も公正価値で認識されなかった買収される会社の資産・負債と公正価値との差額は、計算上のれんに含まれる。また、買収される企業が、資産に計上していなかった無形資産等も、計算上のれんに含まれる。

 

③ 買収する側の支払方法に起因する差額

例えば、現金購入か、株式を使うかで実質的に買収額が変動することがあるが、その差額は計算上のれんに含まれる。

 

④ 買収プロセスで起こる買収額の変動額

例えば、買収価格交渉において買収価格が吊りあげられることによる過大支払額、逆に投売されたことによる過小支払額など。この過大額、過小額も計算上のれんに含まれる。

 

IASBは、①と②については、IFRSの改善で差額を出さないようにしたとしている。また、③についても、少なくとも問題は改善はされたと考えているようだ。④については、本来、過大支払額も過小支払額ものれんに含めるべきでなく、買収に関連する損益として認識すべきとIASBは認識している。そこで、過小支払額については、差額がマイナスになる場合に利益計上することとした。

 

このIFRS改善の内容は、例えば、買収される企業の資産・負債を、すべて公正価値評価するようにしたとか、資産として識別可能な無形資産の資産計上を定めたとか、差額がマイナスの場合の規程を充実させたとか、買収の対価として株式が使用される場合に、その株式の評価は買収公表日ではなく、他の取得する資産・負債と同様に“取得日(買収日)”の公正価値で評価するようにしたことなどが含まれる。

 

しかし、④の過大支払額については、「高過ぎたか?」と思うことはあっても、買収時点で具体的に過大支払額を算定することが実務的に困難であるため、のれんから排除することができないとIASBは判断した。また、改定後のIFRSでは、高過ぎる分はその後の減損手続で損失計上されることになるので、現実的な判断として、のれんに含まれても止む無しとした。

 

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