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2012年11月12日 (月曜日)

のれん ー 毎期規則的に減損するのはどう?(1)問題提起

2012/11/12

いよいよ「のれん」について検討を始めようと思う。前回(11/6から間が空いてしまったが、その間に色々考えた結果、このテーマにじっくり腰を据えることにした。「のれん」は、会計処理という意味ではなく、企業にとって、経営の根幹に関わる意外に重要な問題だからだ。企業経営に重要なことは、投資家にとっても債権者にとっても重要だ。しかし、みなさんの関心は、会計処理に関連した下記の2点だと思う。

 

 1.のれんを償却すべきなのか、そうでないのか。

 2.のれんを償却すべきでないと考える人は、なぜそう考えるのか。

 

日本では償却すべしということになっているから、きっと、償却する理由は、みなさんも馴染みがあると思う。「のれん」なんていう得体のしれないものは、規則的に償却してどんどん資産から落とした方が良い、それが保守的な会計処理だ、という感じだ。オックスフォード・レポートにもそんなふうに書かれていた。でも、償却すべきでないと考える人々がいて、そちらの方が世界では主流だ。なぜ非償却なのだろう、その理由が良く分からない、と思われてないだろうか。

 

FASBが、金融界などの米国産業界と取引してのれんを非償却にした(その代り持分プーリング法を禁止した)。そしてIASBは、そのFASBとコンバージェンスにおける妥協の産物として、IFRSに受入れた。そんなふうに覚えるのは簡単だが、それはゴシップ週刊誌を鵜呑みにするようなもので、僕は、もっと深い本質が他にあるように思う。だから、もし、もっと深く知ってみたいと思う方は、暫くこのテーマにお付き合いいただきたい。

 

償却すべきか否かという点に関して、僕の意見は「償却すべき」だ。その理由については、これから以下を辿りながら、順に説明したい。だが、そのプロセスにおいて、非償却派の考え方も説明していきたい。

 

・そもそも「のれん」とは何か

ちょっと会計的な議論から飛び出して、「のれん」を考えてみたい。会計の世界での議論は、どうも視界が狭くて本質をとらえきれていないことがあるように思うことがある。「のれん」についてもそう思うので、日本(の会計界)では、もしかしたらあまり意識されていない「のれん」の経営的な重要性について触れてみたい。

 

・償却派と非償却派の意見

ここでは、会計の世界の議論を紹介したいと思う。これについては、ASBJのホームページに掲示されている論点整理(企業結合会計の見直しに関する論点の整理)を中心に、その他のネットに掲示されている資料を参考にしながら報告したい。

・改めて「のれん」の本質と会計処理を検討

以上を踏まえて、そして僕のはみだした意見を加えて、このシリーズの結論を出していきたい。

 

さて、「日本国憲法は米国から押し付けられたものだから改憲すべき」という主張がある。そういう人々の他の主張にはシンパシーを感じても、この言葉が出てくると僕は違和感を覚える。僕は現在の憲法制定に当たって、当時の日本人の意見が全く反映されなかったなどとは思わないが、仮に押し付けられたものであったとしても、日本人はうまく利用してきたと思う。うまく利用できたということは、それなりに日本人のためになる中味があったということだ。のれんの非償却についても、仮にそれが産業界との妥協の産物だったとしても、FASBやIASBが受入れたからには、そこに何か経済社会に良い意味があったからに違いない。だから、僕は償却派だが、非償却派の主張からも学べることがあったら学びたいと思う。そして、それをみなさんにも伝えられたらとても嬉しいと思っている。

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