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2012年12月21日 (金曜日)

【金融緩和】良いインフレ?

2012/12/21

「まさか、インフレが良いってことはないでしょう。精々、デフレよりは多少マシって感じですかね。」

 

大抵の人は、こんな認識だと思うのだが、世の中、インフレは良いものだと誤解している人もいるようだ。Twitterで、もっと早く教えてくれと嘆く呟きが拡散されているのを見かけた。しかし、まだ全然遅くない。これからが本当に必要な時期であり、政府・与党の在り方をしっかりチェックする必要がある。そこで、あくまで僕の考えに過ぎないが、もう少し、誤解しそうなことを並べてみようと思う。下記の太字の見出しは、すべて誤解しそうなことを書いているのであって、決して肯定しているわけではない。ご注意を。

 

・インフレになれば景気が良くなる

500億のGDPが、インフレで翌年は510兆円になる。すると経済成長しているように錯覚する。だから、そのまま500兆であったり、デフレで490兆に下がるより景気が良くなったように感じる。しかし、実質は変わらない。“気のせい”ってやつだ。

但し、この錯覚が投資増加のきっかけとなることがある。投資が増えれば景気は良くなる。ただ、残念なのは、この投資先が国内とは限らないことだ。もし、海外へ投資したら、国内の景気に与える影響はかなり限定的だ。雇用も需要も増えない。だから、なるべく国内に投資されるように、投資環境を整えておく必要がある。それはイノベーションと規制緩和。民も官も発想の転換が求められている。インフレより、こちらの方が肝だ。

 

・インフレになれば会社が儲かる

500億円の売上が、翌年にインフレで510億円になる。数字が増えたからよくなったような気がする。でも販売数量は良くて横ばいだ。とはいえ、原材料や人件費の上昇を遅らせられることができれば、利益がその分増える。そして、過去に設備投資した設備の償却費は値上がりしないので、その分の利益も増える。

しかし良いことばかりではない。変動金利の借入が多い企業は、名目金利が上昇して利払いが増加するので、その分の利益が減少する。みなさんの会社の借入金と償却資産の残高を比べてみると、利益への影響をある程度想像できるかもしれない。

 

・インフレになれば給料が上がる

まあ、経営者が上げるって言ってくれれば。ちなみに経団連は厳しいことを言っているらしい。

 

定昇「聖域ではない」=ベア余地なし―経団連・春闘指針

 

・インフレになれば円安になる

「欧米や韓国・中国よりインフレ率が高ければ」という前提が必要だ。この前提があれば、中長期的には円安になる可能性が高い。だが、短期的にも“インフレ期待”のみで(今の為替相場のように)、円安に振れる。

ところで、今のゼロ金利下の金融緩和がインフレにつながるか否かの議論があるが、あまり僕は重要でない気がする。というのは、実際に円相場が動いているから、今の金融緩和に向かう姿勢が、(外国投資家の)インフレ期待を高めていることは間違いないと思うからだ。(むしろ、期待を生むだけで、実際のインフレにつながらない方が嬉しい。)

 

・円安になればデフレ脱却に貢献する(良いインフレになる)

デフレを悪者にするあまり、輸入価格の上昇がデフレ脱却に貢献するみたいな論調があるが、これは典型的な悪いインフレだ。現在、LNG価格を石油連動から米国シェール・ガス連動へ変更し、輸入価格を下げようとしているが、そういう努力が極めて重要だ。単に円安だけでは、国内の富の海外への流出が増える上に、庶民は値上がり分の消費税も余分に支払わせられるので、ダブルパンチを受ける。

 

・インフレになれば国の財政再建が進む

既に、何度も書いたが(10/15の「加工貿易と円高」12/15の「英国メディアの記事から」)、インフレになれば国債の金利が上がって、国債価格が下落し、利払いが増える。この結果、金融機関が大打撃を受け、かつ、利払いのために国債を増発するという最悪の自転車操業に陥りかねない。大事なのは「成長によって税収を増やすこと」であって、インフレになることではない。

 

 

アベノミックス。新政権は着々と大胆な金融緩和の準備を進めている。そして、日銀もそのプレッシャーに戦々恐々としているようだ。しかし、願わくば、これらの動きは新政権と日銀の息の合った「芝居」であって欲しい。重要なのは「インフレ期待が高まり、かつ、それが相当期間継続すること」であって、本当にインフレになることではない。

 

インフレは基本的に生活者には害だ。しかし、政府と日銀が芝居を打ち続けると、そのうち本当にインフレが起き、痛みを受けることは、我々も覚悟しなければならないだろう。そして、なるべくその時期が遅くなることを願おう。その前に本当に景気が良くなって、インフレ以上に給料が上がれば最高だ。

 

そんなときに、上記の経団連の春闘指針は、タイミングと内容が悪い。政府・日銀・国民が息を合わせて芝居を打とうという時に、経営者団体が従業員に強い鞭を入れると、チーム日本のチームワークが崩れかねない。それに、さらなるデフレ・スパイラルを連想させるような内容だ。まるで芝居の進行を妨げる下品な野次のようだ。これは、コリンチャンスやチェルシーを相手にするような難しいゲームなのだから、せめてチームワークぐらいは良くしないと太刀打ちできない。

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