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2013年1月31日 (木曜日)

のれん ー 毎期規則的に減損するのはどう?(24)本質に合った減価償却、減損の方法

2013/1/31

なんと、一カ月にもわたって「のれんは人の評価だ」と言い続けてきた。かなりシツコイ。しかし、まだ続く。このシリーズの前々回(1/24の記事)では、買収後の減価償却や減損の意味を考えるにあたって、買収時に想定した目標が重要になると記載したが、今回は一歩進めて、減価償却や減損の方法について検討したい。もちろん、「のれん=人の評価」を前提とした場合の検討だ。シツコイ、シツコイ。

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重要なことは、のれんがなんであるかが明確になると、償却や減損の意味もその分はっきりしてくるということだ。その結果、償却期間(=耐用年数)や償却方法をどのように決めるか、減損の兆候が発生しているかどうかといった判断が、より適切に行えるようになると思う。

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すでに2012/12/27の記事「“再”のれんの本質」にも一部記載したが、改めて考えてみよう。

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(減価償却)

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・関係する人々の、予想残存勤務期間に渡って減価償却すると収益費用が対応する。

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のれんは、買収時に関係する人々が将来に行うであろう判断や行動に対する期待だから、償却期間は、それらの人々のその事業に関わる残存勤務年数を見積って決めることになる。個人別に見積もるか、それとも、一定のグループの平均残存年数を適用するか、考え方は2つがありえる。もちろん、現実的なのは、部署や役職などのグループごとの見積りだろう。

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償却方法は、上記で在籍期間を個人別に見積もった場合は、その個人別の見積り退職・異動時期に応じた償却、或いは、実際の退職・異動に基づく償却(生産高比例法のようなイメージ)が考えられる。グループの場合も基本的には同様だが、もしかしたら、単純に定額法や定率法のような方法の採用もあり得るかもしれない。

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加えて、関係する人々が将来キャッシュフローの獲得にどれほど貢献するかを見積って、重み付けをする方法も考えられるかもしれない。例えば、スティーブ・ジョブズのような革新的な付加価値を生むアイディアを実現する能力を持った人がいれば、その人に重み付けをするなど。でも、かなりハードルが高い。

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もちろん、IFRSではのれんの償却が禁止されているから、実際には、このような処理は行えない。これは妄想の世界の話だ。しかし、日本基準では、のれんの償却期間をどのように決めたらよいか悩むことは多いはずだ。妄想でも、多少はその参考になるかもしれない。(このように考えると、日本基準の最長20年というのは、かなり良い線だと思う。退職給付の注記を見ると、残存勤務期間はだいたい20年未満が多い。)

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一つ注意が必要なのは、シナジー効果があるので、「買収側の人々」ものれんの対象になっていることだ。

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(減損)

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 関係する人が、退職したり異動した場合に減損する。

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単純に、買収時に関連した人々の在籍者人数の減少の度合いだけで減損の判断を行うことも考えられるが、それでは「収益性の低下による回収可能性を測る」という減損会計の趣旨には合わない。やはり、のれんが将来キャッシュフローによって回収できるかどうかを判断する必要があると思う。個人別の将来キャッシュフローを見積ることが理想だが、困難だろうから、部署ごとや組織階層別のある程度のグループごとに見積って、個人別の単価を計算し、それに離職者の状況を加味することになるだろうと思う。

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 事業から生じる予想将来キャッシュフローがのれんを回収できると見込めなくなった場合に減損する。

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これは通常ののれんの減損の考え方だ。基本的には現状の方法とあまり変わりはないと思う。

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だが、のれんが人の評価であるとすれば、ここで起こっていることのイメージが湧いてくる。即ち、減損が起こる状況とは、買収時に予想したほど人々の判断や行動がキャッシュフローの獲得に貢献しなかったということになる。例えば、環境変化への対応力やシナジー効果の発揮が期待ほどでなかった、或いは、買収時には想定しえないほどの大きな環境変化が起こったなど。日本基準で開示される減損理由は後者のニュアンスで記載されることが多いと思うが、実態はどうなのか。読者としてはそれを読み取ることが重要だ、と素直に思えるだろう。

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のれんが人の評価であることを前提とすれば、今のままではダメだから事業責任者や幹部社員を変えよう、とか、買収時の計画にはない追加の大きな投資をしようとか、環境変化に合わせて事業の方針・内容を変えようといった時が、減損のタイミングかもしれない。.

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ここで、「買収時に在籍した、或いは、関係した人々にしか、のれんがないのか」という疑問が沸くかもしれない。即ち、あとから異動してきたとか、あとから入社した人々が、のれんを引継いでいるのではないか、という疑問だ。もし、引継いでいるとすれば、のれんを償却・減損しなくてよいのではないか、それに、予想残存勤務期間では耐用年数を決められないのではないか、ということになる。

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もちろん、引継いでいる。でもそれは、M&Aに関係なく普通にあらゆる部署で行われていることなのに、どの部署でもそれを資産計上することはない。ということは、M&Aの場合も資産計上しないということだ。これが、いわゆる自己創設のれんだ。人の評価、しかも、将来の判断や行動への期待に基づく評価が、資産計上されることは、M&Aの時以外はない。なぜなら、将来事象は非財務情報であり、会計処理の対象にはならないからだ。M&Aの時は、それを評価し買収額が実際に支出されるので、会計の対象となる(1/17の記事など)。

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さて、いよいよ、このシツコイのれんシリーズもフィナーレを迎える。残るは、このシリーズのタイトル「毎期規則的に減損」についての検討だ。なぜ、このタイトルを掲げたか。それは『きっと、のれんの本質が分かりさえすれば、原則主義の奥深いIFRSならば、ことの本質に合った形の会計処理、即ち、「IFRSに於いてのれんを規則的に減損する方法」が考案できるのではないだろうか』と思ったからだ。

 

ということで、僕はこれから、IFRSの規程をしっかり読み込む。そしてこれに成功すれば、「のれんを償却しないからIFRSは日本の製造業に合わない」という主張を退けることができる。果たしてどうなるか・・・、でもそれは来週! ん~、残念!!

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