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2013年2月26日 (火曜日)

219.のれん ー 毎期規則的に減損するのはどう?(31)客観的に検証できる割引率

2013/2/26

このシリーズの前回(2/21の割引率は、実務で想像がつかないとか、現実的でない、といったご批判があると思う。ん~、そうかもしれない。ここはもっと具体的なアイディアを提示することが必要だ。そこで、ここまでは、IAS第36号の本体規程を読んできたが、今回は付属文書の「結論の記載」も読んでみよう。

 

 

(復習と問題提起)

 

前回(2/21)の記事では、投資の意思決定時に使用される割引率は、経営者が感じる我慢と不安を上回る成果が期待できる投資案を選別するもの(=一定レベルを超えるかどうかを判定するものであり、投資案を順位付けするものではない)であり、割引率の高さは、経営者が求める投資案の革新性の高さと関連すると記載した。革新性を求める企業姿勢は、投資家の重要な判断材料として株価に反映される。投資家が要求する利回りは、この逆の経路で経営に利用される割引率に反映されていく(と考えたいが、現実には株価がそこまでのプレッシャーになっていないかもしれないし、割引率は経営的に重要と認識されていないし活用されていない)。

 

また、割引率は資産(投資案)に固有のものなので一律でないことや、投資のシュミレーション(投資計画)は、その後の実績によってフォローされるべきものとも書いた。しかし、そもそも、固有のリスクを反映させるため、投資案にどれぐらいの高さの割引率を適用したらよいか分からないし、フォローするといっても、割引率は固定で良いか、それともその後の状況の変化に応じて変えるべきものかも分からない。このままでは実務にしようがない。

 

 

(IAS第36号の結論の根拠)

 

上記の問題提起に関連しそうなところを抜き出すと・・・。(BCZ253BCZ255

 

  • 割引率はヒストリカル・レートではなく、現在の状況を反映するカレント・レート(実勢レート)。

 

  • 論理的に、使用価値算定のための割引率は、企業自身の評価を基礎とすべき。しかし、客観的に検証できないため、できる限り「市場のリスク・フリー・レート+市場が要求するリスク・プレミアム」を反映すべき。

 

  • しかし、資産ごとの市場レートが殆ど存在しないので、できる限りリスク・プロファイルが類似する資産の市場割引率を出発点に調整する。

 

 

「カレント・レート」と「リスク・プロファイル」。どうやら、この辺りが肝になりそうだ。

 

前者は、リスク管理の観点からは当然の発想だが、割引率にとどまらず、将来キャッシュフローについても現状を反映させる見直しが必要なので、手間がかかる。こういうものは、決算のためだけにやろうとしても、とてもできるものではない。今まで何度か書いているように、事業計画策定や予算管理の中に組込んでいく必要がある。

 

しかし、すべての資金生成単位で使用価値の見積りを毎年見直す必要はない。目的は事業のリスク、経営上のリスクを把握し対応するためだから、順調に経過している事業は任意の扱いでも良いと思う。これを強制するか否かは、減損会計でいえば“減損の兆候”の有無をチェックすることに相当する。IAS第36号では“減損の兆候”に関する規定が7項~17項にあるが、これは例示であって、本来は企業自らが、事業のライフ・サイクルも踏まえた長期的な観点で自ら具体的なラインを設けるべきだと思う。もし、これが経営管理のプロセスに組込まれていれば、「減損会計の規程に当たらないから経営上考慮すべきリスクはない」などと考える企業はないだろう。むしろ、減損会計の規程は最低線であり、それに当たる前に改善策を実施すべく、より厳しいラインを設定するのではないか。

 

例えば、投資意思決定時に10%のリスク・プレミアムを割引率に見込んでいたのであれば、10%のキャッシュフローの減少は、計算上、想定内ということになるかもしれない。そういう判断が有効な状況もあると思うが、みなさんも、このような形式的な判断には感心しないのではないか。経営的に重要なのは、直近のそのような状況が将来にわたってどのように影響するかを検討することだ。状況によって、対応策を考案する必要がでてくる。このようなステップを踏んで、使用価値を最新の状況に更新する。即ち、割引率や将来キャッシュフローの見直しを行う。

 

 

その際に検討されるのが、後者の「リスク・プロファイル」だ。普通にプロファイルといえば、例えば人物紹介のようなものを連想するが、「リスク・プロファイル」も、その事業や資金生成単位のリスクを拾い出して、事業継続の観点から整理したものという意味だと思う。経営的には、より積極的に「利益を逃すリスク」もプロファイルへ含める場合があると思うが、減損会計としてはそこまで考慮しない。

 

もし、将来の不確実性が増し、不安が大きくなっているようなら、その内容によって、割引率を高く引き上げる必要がある。不安の内容としては、販売市場によるもの、生産技術上の問題、原材料の調達の問題、人的な問題、新たな規制など色々あると思うが、一時的なものか、永続的なものか、対応は容易か、などが、評価分析されると思う。それが「リスク・プロファイル」になる。

 

しかし、僕のイメージでは、「改善策のリスク・プロファイル」がより重要ではないかと思う。改善策があるのか、ないのか。あるとすれば、それは容易に実現できるのか、それとも研究開発を伴うのか。自らの努力のみで成果に結び付くのか、それとも顧客や仕入先などの外部の反応に依存するのか等々。そして、減損会計では、改善策がすでに着手され期待通りの成果が上がっているとすれば、将来キャッシュフローに見込むことができるし、不安も大きくなっていないので、割引率のリスク・プレミアムを引上げる必要はなくなる。一方、改善策がないとか、あるが、その実現可能性が低そうだということであれば、不安なので割引率を引上げることになるだろうと思う。

 

このような割引率の調整方法は、投資案のシュミレーションに使用される割引率にも応用できる。ただ、投資の意思決定時は新規性のあった案件でも、事業化されその経験を積めば、将来への不安が低くなる可能性がある。したがって、事業開始後は割引率を低下させるケースもあると思う。

 

 

さて、みなさんはお気づきかもしれないが、僕は一つ大きなポイントを避けている。それは、「市場割引率を出発点に調整する」件だ。上記の「リスク・プロファイル」のような細かいところまで類似する上場会社、市場割引率を探すのは困難だ。探すなら、事業のライフ・サイクルの段階が同じぐらいとか、為替、原材料単価の変動、販売市場の変化のスピードなど、大きな不安要因の類似性に注目することになると思う。

 

だが、経営としては、自らの目標収益率、或いは、将来キャッシュフローの成長率も重要なので、そういうものも考慮してみてはどうか、と思う。IAS第36号にはそう書いてないが、僕はこれが一番合理的な気がする。単に上場会社のデータなら客観的で検証しやすいというのも、対象会社の選択に恣意性が入る余地があるので、どうだろうか。IFRSにしては、若干短絡的な気がしないではない。

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