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2013年3月 7日 (木曜日)

223.IFRS財団モニタリング・ボードとは

2013/3/16 モニタリング・ボードはIFRS財団の定款に記述されたIFRS財団の機関であることが分かりましたので、関連個所を訂正しました(茶色1か所)。

2013/3/8 正確な表現と根拠を示すため、赤字2か所を追加しました。

 

2013/3/7

前回(3/5)の記事で予告した通り、今回は金融庁から公表されたIFRS財団モニタリング・ボードのプレス・リリースについて記載したい。このプレス・リリースの主な内容は、ボード・メンバーの選定基準(メンバー要件の評価アプローチ)の改定と新議長に日本人の就任が決定したことだ。

 

しかし、このプレス・リリースの主体である「モニタリング・ボード」とはそもそも何者か。日本語にすれば“監視会”。一見、取締役会のように見えるかもしれない。しかし、ちょうどそれに当たる役割は「IFRS財団評議員会」が担っている。そしてIASB(国際財務報告審議会)は、その評議員会の下で具体的な職務執行に当たる“執行役員会”のような位置づけだ。やはり、モニタリング・ボードとは謎だ。

 

というわけで、今回は、プレス・リリースの内容に入る前に、「モニタリング・ボード」について見てみよう。なお、IFRS財団の組織構造については、日本公認会計士協会のHPが分かりやすく詳しいので、正確に知りたい方は、そちらの(IASBとは)をご覧いただきたい。

 

 

(モニタリング・ボード)

 

「IFRS財団モニタリング・ボード」というと、IFRS財団の定款に規定された機関であるが、その実質はそう単純ではない(金融庁のHPにあるモニタリング・ボードへのリンクは、IFRS財団ではなくIOSCOWeb Pageに繋がっている)。株式会社の株主総会にやや似た感じがあるが、もっと複雑で微妙な緊張関係があると思う。まず、モニタリング・ボード自身による説明を見てみよう。これはプレス・リリースの末尾に記載されていたものだ。

 

モニタリング・ボードのメンバーは、証券監督者国際機構(IOSCO)新興市場委員会及び専門

委員会、金融庁、欧州委員会(EC)、米国証券取引委員会(SEC)であり、バーゼル銀行監督

委員会がオブザーバーとなっている。各法域において用いられる財務報告の形態と内容を

決定する資本市場規制当局は、モニタリング・ボードを通じて、投資家保護、市場の健全性

や資本形成に関する責務を、より効果的に果たすことが可能となる。

 

要点は3つ。

・メンバーは各国の資本市場の規制当局や国際規制組織

・各規制当局の目的は、複数の政策効果を上げるためにIFRS財団と関係を持つこと。

・各規制当局は、モニタリング・ボードを通じてIFRS財団と関係を持つ。

 

IFRS財団は、世界中から信用・信頼される組織でなければならない。しかし、IASBを擁するIFRS財団は単なる民間団体だ。その民間団体が作った会計基準を各国が採用するには、IFRS財団に何らかの公的な信用・裏付けが必要なのだと思う。特に、IASBは、IFRSを単に参考にしてくれといってるのではなく、最終的には丸呑み(アドプション)してもらうことを目標としているので、相当高い信頼感・信用が必要だ。それには各国でIFRSを採用するか否かに大きな影響を持つ規制当局と関係を持つのが良い。もちろん、この信用度合はIFRS財団への寄付金の多寡(IFRS財団の資金調達)にも影響する。

 

一方、会計基準は経済実態を忠実に開示するという目的以外の思惑に左右されるべきでない。そこで、IASBは、どの団体・勢力からもプレッシャーのかからない、これらの影響を受けない独立した存在でありたい。ところが、規制当局は、各国内の利益団体の影響を受けやすい政治の影響下にあって、しかも、IFRSをどのように適用するかを含めた法的な強制力を操る権力者だ。したがって、規制当局というのは、IASBが直接関わりたくない「特定の団体・勢力」の筆頭といってもよいかもしれない。

 

信用は欲しいけど、関わりたくない。この相反する微妙な関係を繋いでいるのがモニタリング・ボードだ。個々の規制機関と直接の関係を持てば個別利益を背景にした要求を受けやすいが、規制機関の集合体であれば個別利益丸出しの要求は控えられるだろう。

 

出資は欲しいけど、経営に細かく口出ししてほしくない。この株式会社の所有と経営の分離の感じが、個々の規制当局とIFRS財団、特にIASBとの関係にちょっと似ている。株主は株主総会を通じて、決められた範囲の議題と、主に取締役等の選任・解任などのガバナンス面で権限を行使する。規制当局も、モニタリング・ボードを通して限られた権限、主にIFRS評議員会のガバナンスの監視を通じてIASBへ影響を与える。モニタリング・ボードの影響は、IASB(IFRS財団の執行機関)に直接及ばないが、IFRS財団評議員会(IASBの監督機関)を通して行使される。

 

但し、会社は株主のものだが、IFRS財団はモニタリング・ボードのものではない。モニタリング・ボードとIFRS財団は、それぞれが別個の独立した組織であるため、モニタリング・ボードは株主総会と違い、IFRS評議員会評議員等の選任・解任権までは持っていない。もし、選任・解任まで握られていたら、IFRS財団はもはや独立してることにならない。しかし、IFRS評議員会評議員の選任過程に参加しそれを承認する権限はある。したがって、IFRS財団の独立性は、意外と薄氷の上に立ったものなのかもしれない。

 

 

(モニタリング・ボードの性格)

 

より詳しく正確に知りたい方は、「IFRS 財団のガバナンスレビューに関する最終報告書(2012/2/9」(金融庁のHPの資料5)をご覧になると良い。いずれにしても、モニタリング・ボードがIFRSに影響を与えうる重要な立場にいることがご理解いただけると思う。特にIASB議長に、モニタリング・ボードが認識している問題を参照できるという権限(問い掛け、回答をもらう権限だと思う)は重要だ。この権限を通じて、IASBの取り上げる議題や議論の方向性に影響を与える可能性があるからだ。

 

加えて、モニタリング・ボードは、おっとり構えたお大臣な人々ではない。上記資料5を読むと、参照権限だけでなく、直接IASBの議題を決めたりIASB議長の選出に関わる権限を持ちたいと思っているらしい。要するに、より権限の範囲を広げ、IFRSの内容に強い影響力を持ちたいと思っているようだ。IASBにとっては相当手強い(煙たい?)存在だろう。

 

 

さて、このようなモニタリング・ボードが、メンバー選出基準を改定したとプレス・リリースした。これが、IFRS財団、IASBに影響するかどうか。次回は、僕の憶測、想像、妄想を記載したい。興味のある方はご覧ください。

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