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2013年3月 9日 (土曜日)

224.モニタリング・ボードの選任基準~あと3年か?

2013/3/16 モニタリング・ボードは、IFRS財団の定款に規定されたIFRS財団の機関であることが分かりましたので、関連個所を訂正しました(赤字1か所)。

 

2013/3/9

前回(3/7)の記事では、3/1のプレス・リリースの主体であるIFRS財団モニタリング・ボードが何者かについて確認した。ポイントは以下のとおり。

 

実態はIFRS財団とは別団体(IOSCO;証券監督者国際機構の一部)であり、規制当局者の集団。

・IASBは、このモニタリング・ボードと微妙な距離感を保とうとしている。

・一方、モニタリング・ボードは、IASBが思っているより深く関わろうとしている。

 

IASBにとっては、お節介な(口喧しい)本家の叔父さん、という感じだろうか。上下関係ではなく斜め関係なので、一応、IASBの独立性は保たれた形になっている。IASBには少々煙ったいが、後ろ盾としては頼もしい。

 

さて、それでは、今回はプレス・リリースの内容に入っていこう。

 

3/1のプレス・リリースの概要)

これも前回記載した通り、モニタリング・ボードのボード・メンバーの選任基準(メンバー要件の評価アプローチ)と、日本人が議長に選出された旨が公表されたのだが、これが日本やアメリカに対するIFRS採用のプレッシャーになっているように思う。詳しく見てみよう。

 

 

(ボード・メンバーの選任基準)

・メンバーは資本市場規制当局者(日本であれば金融庁)

・メンバー国(又は法域)は、IFRSの使用とIFRS財団への資金拠出を要求される。

 

要するに、ボードに残りたければ「IFRSの使用」が必要ということだろう。しかし、何をもって「IFRSの使用」というかが問題だ。それは次をご覧いただきたい。

 

IFRSを使用しているか否かの評価)

・強制適用でも任意適用でもよい。

・但し、市場においてIFRSが顕著に使用されることとならなければならない。

・妥当な期間のうちに移行するというコミットでもよい。

・適用されるIFRSはIASBが開発したものと本質的に同列のもの(カーブ・アウト等は許容)。

2016(次回のメンバーの改選後)から、この評価が行われる。

 

上記の他にも細かい要件がある。例えば、規制当局が規制している市場が、国際的に主要な市場であることとか、会計基準の適切な実施のための仕組み(監査制度等のことと思われる)が整っていること等々。また、上記には「2016年から」と書いたが、既存メンバーの見直しを2013年に開始するとか、必要に応じて臨時に見直すなどとも書いてある。読み方が難しいが、一応、厳格に適用されるのは2016年以降だろうと解釈した。

 

 

以上から、みなさんは日本の状況をどう感じられるだろうか。任意適用が十数社では「顕著に使用」とはいえまい。ということは、このままの状況で推移すれば、今は議長国だが2016年以降はボード・メンバーにも入れなくなる可能性もある。では、「顕著に使用」とはどういうことだろうか。「顕著に使用」という言葉のあとに次のような記載がある。

 

歴史的に見れば、クロス・ボーダーにおける資本調達を容易とすることが、IFRS を使用する誘因であったことをモニタリング・ボードは理解している。しかしながら、国内における財務報告制度において、IFRS は次第により顕著な役割を果たしていくことになるであろうとモニタリング・ボードは予想している。

 

これは意外に重いことを言っているような気がする。「国際的な資本調達をしている企業」が任意にIFRSを採用している状況では十分でなく、「国内向けの財務報告でも使用」されている必要があるのではないか。ぱっと思い浮かぶのは、アメリカが外国企業にIFRSの採用を許容し、国内企業には禁止していることだ。この状態はNGだろう。

 

では日本はどうか。国内企業にもIFRS使用を容認している。しかし、日本の場合もすべての国内企業にIFRSの使用が許されているわけではない。「国際的な財務活動または事業活動を行っている企業」という要件がある。やはり、今のままではダメだろう。では、この要件を取り除けばOKか?

 

「顕著な」とは、原文では「prominent」であるが、webiloの研究社新英和中辞典によれば、次のような意味があるという。

 

  1. 卓越した,傑出した,有名な.
  2. (周囲のものより際立って)顕著な,目立つ.
  3. 突起した,張り出した.

 

どうやら、他のもの(=日本基準)より出っ張ってないとダメらしい。少なくとも任意適用十数社とか、数十社程度では出っ張ったことにならないだろう。社数か、時価総額か、日経225銘柄か分からないが、とにかく、(任意適用の結果として)日本基準より意味のある何かが多くなっていなければならないと思う。

 

 

 

(深読みし過ぎ?)

 

さて、IASBはすでにFASB(米国財務会計基準審議会)と距離があっても止む無しという構えだが、小うるさい叔父貴はさらに進んで、米国(と日本)をメンバーから外すぞと脅しているようだ。米国は、心を入替えれば喜んで復帰させてもらえると思うが、日本は、日本の代わりに中国が入った場合、果たして復帰できるだろうか。

 

この背景には、IFRSを採用していない国に発言権はいらないだろうと、採用国から強いプレッシャーがあるようだ。今回モニタリング・ボードでは、それが具体的なボード・メンバーの選任基準のなかに取り入れられた。恐らく、IFRS財団評議員会やIASBの内部でも同じだろう。そして、本家の叔父貴は同じようにしなさいと、口うるさく言うに違いない。今は日本人の席が確保されているが、これからどうなるか心配だ。近々には2/24の記事に記載した「会計基準諮問フォーラム(Accounting Standards Advisory Forum ;ASAF)」メンバー選任の件もある。しかし日本は今寝ている状況だ。せめて、企業会計審議会の議論を早期に開始していただきたい。

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