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2013年3月26日 (火曜日)

229.【製造業】減損資産の固定資産台帳を修正する理由

2013/3/26

今日はキプロスの銀行が営業を再開させる予定だったが、急遽、3月中は休業となったようだ(ロイターの記事)。いくつかのニュースから推測すると、どうも預金の引出しや海外送金を制限することで、営業再開後も例の名寄せと伝票処理作業が可能になるようだ。現場の混乱を心配したが、ちょっとほっとした。ただ、キプロスの人々は、自分の預金が自由に引き出せない不安が続くことになる。

 

 

前回(3/22の復習=

 

さて、前回は、減損損失を計上した固定資産については、固定資産台帳(=償却台帳)を個別資産単位で修正する実務が行われており、それは日本基準に沿ったものであると記載した。それに対して僕は、個別に固定資産台帳を修正することなく、減損損失累計額を減損案件ごとに管理するだけでも良いではないかと書いた。しかし、IFRSの書き振り(IAS36.63)も、日本基準と似ている。やはり、IFRSでも固定資産台帳の修正作業が必要なのだろうか。だとすると減損戻入は面倒だ。

 

 

=奇策の詳細=

 

ここで改めて、僕の奇策を記載したい(前回のコピー)。

 

減損損失(累計額)は、減損案件ごとの総額で、償却(戻入)スケジュールと減損理由を管理しよう(但し、償却資産に限る。)

 

上記の勘定処理について少々説明しよう。

 

減損損失を計上すると、相手勘定を資産勘定にして、資産価額を直接減額する会社もあるし、相手勘定を減損損失累計額にして、間接的に資産価額を減らす会社もある。前者(=直接減額する会社)だと、固定資産台帳も修正するイメージが強いので、後者の状況を想像していただきたい。

 

具体的には、減損しても固定資産台帳は修正せず、翌期以降もそのまま償却計算を続ける。その結果減損後も減価償却費が減らないことになるが、それではまずいので、減損損失累計額を取崩し、その取崩益と減価償却費と相殺する。その結果、減価償却費は減損して小さな簿価となった資産を減価償却したのと同じ金額となる。

 

減損損失累計額と減価償却累計額を対比する形で、もう一度説明する。

 

減損損失は、あたかも減価償却費の減価償却累計額のように、減損損失累計額に蓄えられる。減損損失累計額は、減価償却累計額と同様に対応する資産の控除科目なので、B/S上の簿価は、直接減額された場合と同じ金額となる。

 

ただ、減価償却累計額と異なるのは、翌期以降取崩しされることだ。その取崩益を原価償却費と相殺することで、結果として減価償却費が減額される。あたかも減損で減額された簿価で減価償却を行ったかのごとく、少ない減価償却費となる。

 

減価償却累計額は、固定資産台帳上で個別資産ごとに計算されたものがB/Sに集計される。しかし、僕の提案している減損損失累計額は、個別資産ごとには計算しない。ただ、減損したときに、減損した単位、減損案件ごとに、その後の減損損失累計額の取崩スケジュールを決めておく。そして、翌期以降、原則としてそのスケジュール通りに取崩していく。

 

 

 

=僕の奇策の問題点(≒日本基準の意図)=

 

「それは楽だけど、そんなことはとっくに考えたよ。でも、監査人にダメと言われたよ。」 そんな声が聞こえてきそうだ。僕も現役時代はダメと言っていた口だ。前回記載したように、「日本基準では固定資産台帳の修正を前提にしているから」という理由の他に、例えば次のような実務的な理由もある。

 

固定資産を除却したり移動すると、減損損失累計額も直さなければならないが、そのとき個別資産ごとに累計額が分からないと困る。

 

また、耐用年数や償却方法が異なる多数の資産を含む資産グループの減損を行う場合は、減損損失累計額の取崩スケジュールを計算するのは大変。

 

確かに、楽と苦の両方がある。日本基準のように固定資産台帳を直してしまえば、翌年度以降は、追加の事務負担はないので楽だ。だが、前回の記事に記載したような事項と比較衡量した場合はどうだろうか。それでもやはり、奇策は次世代に負担を残すので、日本国債みたいで後味が悪い、と思われるだろうか。

 

さらに、問題はこれだけではない。理論的にも、減損は資産評価手続だから、個別資産ごとに減損損失累計額を把握しておく方が自然だ。例えば、債権に対する個別貸倒引当金のように。

 

加えて、会計管理面からいえば、「明細の分からない残高(=奇策にいう減損損失累計額)は管理不能なので、絶対に避けなければならない」となる。

 

例えば、明細の分からない残高は、不正の温床になりかねない危険な存在だ。これは極端と思われるかもしれないが、少なくとも、間違いが発見されにくいことには、容易にご同意いただけると思う。まるで、濁ったドブ川のようで中身が見えず、臭くても足を踏み入れたくない。だから、間違いがあっても発見できない。恐らく、(明細の分からない)一般繰入率による貸倒引当金は、決算ごとに洗い替えてしまうが、こうすることで濁ってドブ川になる前に綺麗に洗浄しているのだと思う。ということで、帳簿残高の内訳は常に、具体的な物体や権利、義務等と、個別・具体的に関連付いていなければならない。

 

しかし、そうだとすると、奇策にいう「減損案件ごとの減損損失累計額」は、何に結びつくのだろうか。減損後も追加投資や移動、除却といった形で資産グループの中味は変わり続けるが、それでも個別・具体的な関連性を維持できるのだろうか。やはり、減損損失累計額は個別資産ごとに固定資産台帳で把握されなければならないのではないか。

 

僕が想像するに、以上のようなことが日本基準が固定資産台帳の修正を前提に置いている理由ではないかと思う。(間違っていたらごめんなさい。)

 

 

書いているうちに、どんどん自分で提案した奇策を自分で否定しているが、もちろん、このままでは終わらせない。しかし、長くなってきたので、これらへの反論は次回に。

 

ところで、今日26日は、サッカーW杯ブラジル大会への出場がかかったヨルダン戦がある。キックオフが日本時間の深夜23時。みなさんも応援よろしくお願いします。

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