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2013年3月

2013年3月29日 (金曜日)

231.【番外編】キプロスの実験

2013/3/30

先週月曜の朝に「キプロスで預金課税」のニュースを見た僕は、強烈に興味をそそられた。

 

「キプロスってどこ?」「預金課税って何?」

 

しかし、第一印象はこんなところだった。キプロスについては、内戦のイメージと世界史の最初の方に名前が出てきたなあ、という程度。恥ずかしながら、ユーロ圏にいたことも知らなかった。

 

ただ、「預金に課税」は、非常に驚きだった。

 

みなさんもご存じのように、預金は銀行事業の根幹資産(会計上は負債)であり、預金なしに銀行業は成り立たない。製鉄業でいえば鉄鉱石のようなもの。その預金を突然封鎖して税金を徴収することは、預金者の信用を失わせ、取付騒ぎによって銀行を崩壊させかねない。そうなれば経済活動には大打撃だ。それをユーロ圏(財務相会合)はキプロスに強いたのだ。きっと、何か訳があるに違いない。

 

しばしば、金融は経済の血液と称される。預金課税はそれを途中で抜き取るのだから、まるで吸血鬼の所業だ。当初預金課税の対象とされた58億ユーロは、GDPが170億ユーロのキプロスにとっては巨額で、抜き取られたら生死にかかわる量だ。そんな吸血鬼が正当化される理由とはなんだろうか。

 

これが、僕の最初の興味だった。しかし、次第に違うところに関心が移って行った。というのは、途中で、やはり正当化できないと分かったからだ。むしろ、そういう困難に直面しても目的を達成しようとする姿勢や手法と、一方で、その難しさが印象的だった。

 

 

では、僕の視点からキプロス危機の現在までの経過をざっとまとめてみよう。

 

3/16(土) 預金封鎖、預金課税を公表(ユーロ圏とキプロス政府の合意)

3/18(月) アジアのマーケットに動揺・懸念が広がるが、ヨーロッパは比較的に落着いていた。

3/19(火) ユーロは下落、主要株式市場で株価下落。キプロス議会による預金課税法案否決観測で。 

     (夜)キプロス議会が賛成ゼロで預金課税を否決。

3/20(水) 代替案の協議入りやロシアの支援報道で、懸念後退

3/22(金) ECBによる流動性支援が25日までと報じられ、懸念復活。

     (夜)キプロス議会代替案(銀行整理、資本規制など)を可決。やや懸念後退。

3/24(日) 可決案では不足との報道。ユーロ圏との協議再開。再び預金課税案協議と報道。懸念復活

3/25(月) 未明にユーロ圏と銀行破綻処理案で合意。懸念後退。円安、株高。

     (夜)ユーロ圏高官の「キプロスはテンプレート(ひな型)」発言でまた懸念復活

3/26(火) 円高、株安基調続く。

3/28(木) キプロスの銀行営業再開。預金引出等は制限。

 

赤い太字は「預金課税⇒懸念」となっており、青い太字は「代替案⇒懸念後退」となっている。したがって、基本的にマーケットは、預金課税に対して良いイメージを持っていないと考えることができる。

 

但し、18日の時点でヨーロッパのマーケットは「預金課税」に対して比較的落ち着いたのに、19日に預金課税案がキプロス議会で否決されそうだという観測が流れてリスク・オフとなった。このことから、マーケット(特に欧州)は、預金課税に良いイメージを持っていないが、それ以上に、キプロスとユーロ圏の合意がより重要という反応を示したといえると思う。

 

但し、オレンジの太字はまた観点が異なっていて、合意はされていてもその内容に対する評価、即ち、預金者に負担を強いるやり方に対する積極的な評価をユーロ圏の高官が与えたらしい、と懸念している。

 

さて、預金課税、特に当初の少額預金者にも負担を強いる方法には、キプロス国民及び議会が強い拒否反応を示した。僕は、18日のアジア・マーケットの動揺と共に、これは正常な反応だと思う。

 

むしろ、落ち着いていたヨーロッパの18日の反応が気になった。そうなったきっかけは、イタリアやスペインの長期債利回りが、いったん上昇したものの直ぐに下げに転じたことだという。即ち、イタリアやスペインの投資家は、「俺たちはキプロスとは違う」と意地を示し、それを他の投資家たちも「なるほどそうだ」と納得したと見ることができる。では、何がキプロスと違ったか?

 

これはみなさんもご存じの通り、キプロスの大口預金はロシアの地下資金(課税逃れの資金)が多く、それを保護するために貴重な血税が使われることを(ドイツなどが)嫌ったという解説がなされていた。ロシア首相が、ユーロ圏にクレームをつけたのも、逆にちょうど良いサポートになったが、どうやらこれはユーロ圏(特に北の諸国)の本音とは違ったらしい。それは後にオレンジのところで表出してくるが、この時点では隠していた。隠しながら協議していた代替案は、最初に少額預金より大口預金に傾斜して課税する案、そして最終的には、大手銀行を整理し、銀行の債権者という意味で預金者に貸倒損失を負担させる案(10万ユーロ以下は全額保護)となっていく。

 

ここでみなさんは、次の2点に気付かれただろうか。

 

「課税」ではなく、「会社整理」にしたことで、

 

  • 普通の企業倒産になった。

 

  • 10万ユーロ以下の預金は自動的にEUの預金保険制度の対象になった。

 

報道によれば、整理されるのはキプロス第2位の銀行で、第1位の銀行へ優良資産を移したうえで、第1位の銀行の大口預金もカットされるという(第2位の銀行をバッド・バンク、第1位をグッドバンクとして整理)。しかし、程度の差こそあれ、第1位の銀行もギリシャ国債で痛んでいた。実際には両方の銀行を整理したのだ。

 

なんだ、それじゃ、全然普通の破綻処理じゃないか。なぜ最初からこの案を採用しなかったのか?

 

みなさんは、そう思われないだろうか。僕は思った。だって、現代に吸血鬼を呼び起こすなんて・・・。もともと、この案が本命だったのだ。そこに戻ってきたに過ぎない。しかし、何か事情があって、預金課税案という吸血鬼が公になったのだろう。

 

さて、ここで僕が想像するユーロ圏の本音を披露しようと思う。その“事情”に関連する。

 

その国にとって大き過ぎて潰せない名門銀行でも遠慮なく潰します。
(そして、株主、債権者に、応分の負担をしてもらいます。)

 

これを公言すればナショナリズムに火がつきかねない。銀行、特にその国を代表するような名門行というのは、国の誇りであり、国民にも非常に馴染んだ存在だ。それが破綻処理されてなくなってしまうのは、かなり耐え難いことだと思う。特に緊縮策に音を上げている南の諸国にとっては素直に受け入れにくいと思う。

 

恐らくキプロスも、金融業を主産業にしていることもあって、今回の騒動になる前段階の交渉で、銀行整理案に激しく抵抗し、やむなく預金課税案を受入れたのだと思う。当初の小口預金にも課税する案はキプロス側が提案したらしいという報道があったが、僕はもしかしたら、預金課税案自体が、キプロス側の提案だった可能性もあると思う。それほど、キプロス政府は、一国の経済インフラである名門銀行を潰したくなかったと思うのだ。これが、上述した“事情”ではないだろうか。

 

また、この本音の薬が効きすぎると、リーマン・ショック後のユーロ危機のように疑心暗鬼を生み、銀行間取引さえ不自由になるような状況にも発展しかねない。もちろん、ユーロ圏の銀行が厳しく資産査定していればそんな心配はいらないと思うので、これは書き過ぎかもしれないが。(しかし、IFRSの金融減損は認識が遅すぎると批判を受けたのに、改正作業が遅れ気味で先日公開草案が出たばかり。)

 

ところが、上記のオレンジの「テンプレート」発言は、ちょっとポイントのずれた波紋を生んでいる。

 

上述したユーロ圏の本音は、政治的にはリスキーでも、経済的には極めて普通の発想だ。しかし、僕の知る限りは、「預金課税が一般化されるのではないか」とか、「シニア債(=リスクの低くおさえた債券)をもカットすることが一般化されるのではないか」といった報道がされている。これはちょっとポイントがずれている。預金課税案は吸血鬼だし、シニア債云々は、通常は、個別の破綻状況による、というのが当たり前だろう。

 

仮に本音が公表されたとしても、マーケットは動揺するだろう。それなら、ずれたポイントで「一般化されるのか」「いや、キプロスは特殊だ」とやりあっていた方が平和だ。恐らく、銀行監督権限がユーロ圏に統合されるまでは、ナショナリズムなどの政治リスクを抑えるために、この本音は隠され続けるのではないだろうか。しかし、それなのに、この「テンプレート」発言が出てしまった。このユーロ圏の高官、オランダの高官は、裏で相当責められているだろう。本来はなくてもよい騒動を引起したのだから。

 

EUがノーベル平和賞をもらうほど、かつてヨーロッパは戦乱の絶えない地域だった。というか、ついこの間まで酷い内戦をしていた地域がいくつもある。それが経済統合を進め、いずれは政治的な統合も目指すという。そんななかで、今回のように一国の経済インフラである大銀行が破綻してなくなってしまうのは、その国の国民にとっては大ショックだ。しかし、ユーロ圏レベルで見れば、大銀行といっても数多くの1行に過ぎない。そこには、国単位の感覚とユーロ圏レベルの感覚の大きなギャップがある。しかし、こういう実績を積上げながら、少しずつ慣れながら、このギャップを乗り越えていくのだろう。

 

一方、ドイツなど常に血税を他国に使われてしまう立場の国にとって、安易な援助には強い抵抗感がある。しかし、日本でも東京など大都市の税収を地方に分配しているが、大都市の税収も地方があってこその利益から生み出されるとの認識があるので、そこまでの抵抗感はない。経済統合を勧め、政治統合にまで進めていくには、この抵抗感を弱める必要があるだろう。ここにも国単位の感覚とユーロ圏レベルの感覚のギャップがある。しかし、報道を眺めていてもこの感覚的なギャップは、なかなか埋めるのが難しそうだ。とはいえ、今回のケースでもキプロスへ100億ユーロは提供される。ドイツ等は負担を受入れているのだ。こうやって、一歩ずつ歩みを進めている。

 

そう考えると、キプロスで起こっていることは、ナショナリズムを抑え、ユーロリズムに置き換える凄い実験だと改めて感じさせられる。日本もアベノミクスは先例のない実験といわれるが、特に第三の矢である成長戦略については、既存概念にとらわれない果敢なトライをしなさい、と後押しされるようだ。

2013年3月28日 (木曜日)

230.【製造業】減損資産の個別簿価修正。ん~、2連敗か?

2013/3/28

26日深夜のヨルダン戦は大変残念な思いをした。そのせいか、珍しく熱っぽく軽くだるい。

 

しかし、冷静に考えれば決して悲観すべき状況ではない。日本の勝ち点13に並ぶ可能性があるのは、現在勝ち点7で2試合を残すヨルダン。ただ、ヨルダンは昨年6月の日本戦での失点が多過ぎて、2連勝して並んでも、得失点差で日本を逆転するのは非常に困難だ。むしろ強敵なのは、勝ち点6だが3試合を残すオーストラリア、勝ち点5で3試合を残すイラクの両国だ。しかし、日本は6月にこの両国との直接対決を残しており、それを2連敗しないかぎり自力で2位以上を確保しW杯出場を決められる。

 

ではそこで2連敗したらどうなるだろうか。

 

この両国は、リーグ戦最終日(6/18)に直接当たる。勝ち点で日本を上回るためには両国とも3連勝が必須だから、両国が同時に日本の上に来ることはない。そこまでともに2連勝(日本は2連敗)したうえで、オーストラリアがこの最終戦を勝利するか引分ければ、オーストラリアと日本がW杯出場権を得る。一方、イラクが勝利すれば、イラクと日本が出場権を得る。えっ、それじゃ、日本はもう出場確定?

 

いやいや、ヨルダンは、オーストラリアとオマーンに2連勝し日本との得失点差16をひっくり返し、かつ上記の最終戦でイラクが勝利した場合のみ、日本に代わってW杯に出場できる。しかし、得失点差16はひっくり返せまい。上述したように非常に困難だ。すると・・・

 

な~んだ、日本はもう決まりじゃないか!?

 

ということで少し元気になったので、前回の続きを書くとしよう。

 

 

前回(3/26までの流れ=

僕は、減損を早めに認識し、一定の場合は戻入を行うことが経営に役立つと主張している。しかし、日本基準では事務作業が大変ということで、遅め(=確定した減損)の処理を要求し、かつ、戻入を禁止することで、事務負担を増やさせないとしている。しかし、そもそも事務負担が大きいのは、固定資産台帳(=減価償却台帳)など個別の資産ごとの簿価を修正することを日本基準が前提としているからではないのか。

 

この縛りを外す奇策が適用可能ならば、事務負担が軽減し、減損会計を経営に役立てやすくなる。そこでこの奇策として、減損損失累計額を減損案件ごとの総額で、取崩スケジュールと減損理由を管理しよう(但し、償却資産に限る)という提案をした。しかし、IFRSの規程(IAS36.63)を見ても、日本基準と似たような表現がされていて、果たしてIFRSでも奇策を採りえるのか疑問だ。

 

そこで、なぜ固定資産台帳の修正が必要と考えられているのか、その理由を拾い出してみた。

 

・減損時は事務負担が大きいが、それ以降は事務負担がない。

・除却、移動時に減損損失累計額の個別資産ごとの明細が必要。

・減損損失累計額の取崩スケジュールの計算が大変。

・減損は資産評価手続だから、個別資産ごとに評価額を持つことが自然。

・減損損失累計額は、明細不明で管理不能の危ない勘定になる可能性がある。

 

これらをひっくり返さない限り、奇策も採りえない。

 

 

=減損会計の目的と手続=

 

ある問題を解決するためには、より大きな目的に戻って考えてみるのが良い。これはこのブログを始めた時からの僕の主張だ。今回もそうしていく。

 

IAS第36号「資産の減損」の1項には、次のように目的が記されている。

 

本基準の目的は、企業が資産に回収可能価額を超える帳簿価額を付さないことを保証するための手続を定めることである。資産は、その帳簿価額が使用又は売却によって回収される金額を超過する場合には、回収可能価額を超える価額を付されていることになる。このような場合には、資産は減損しているものとされ、本基準は企業が減損損失を認識することを要求している。・・・

 

別に目新しいことは何も書いてない。目的に戻ったが何が分かる? とみなさんは言いたいかもしれない。でも、このように引いて眺めた結果、僕は次の点に着眼した。

 

償却資産の回収可能価額は、通常、個別資産ごとではなく、資産グループに対して見積りされる。それは資産グループという資金生成単位を想定しないと意味のある回収可能価額が見積もれないためだ。ならば、減損損失(累計額)も、資産グループごとにしか意味を持たないはずだ。

 

この点をサポートするような記述がIAS第36号「資産の減損」にないかと眺めていたら、104項(b)に、次のような変な規程があるのに気が付いた。

 

次に、当該単位内の各資産の帳簿価額に基づいた比例按分によって、当該単位内のその他の資産に対して配分する。IAS36.104.(b)

 

前後の規程の内容と合わせて説明すると、「当該単位」とは減損損失を認識した資金生成単位のことで、まず「のれん」を減額し、それでも減損損失が余る場合は、「のれん」以外の個別の資産に、それぞれの帳簿価額に比例するように損失額を配分せよ、ということだ。即ち、個別資産単位に減損損失(累計額)を配分せよといっている。

 

これに前々回(3/22)の記事に紹介したIAS第36号63項の、「減損損失を認識した後には、当該資産の減価償却(償却)費は、資産の改定後の帳簿価額から・・・」を合わせて読めば、日本基準と同様に、固定資産台帳の修正まで要求していると読める。この「資産の改定後の帳簿価額」とは、上記の減損損失を比例按分した後の帳簿価額をいうのだろう。

 

あれれ、これではまさに、固定資産台帳の修正だ。

 

 

ん~、原則主義と言いながら、意外にIFRSも細かい。

 

恐らく、耐用年数や償却方法の異なる各資産に減損損失を恣意的に配分することで、その後の減価償却費を操作されてしまうことを心配したのだろう。それだけIFRSがB/Sだけでなく、減価償却、即ち、適正な損益計算に関心を持っている証拠でもある。

 

しかし、これは苦しい。「のれんの規則的な減損」問題に引続き、2連敗か。

 

いやいや、そんなに簡単に負けを認めては、SAMURAI BLUE(サッカー日本代表)に顔向けができない。まだ諦めない。しかし、このような規定がある以上、IFRSでも原則はやはり固定資産台帳の修正だろう。例外的にそうしないことが認められるかどうか、そういう小さな問題になってしまう気がする。ん~、やはり2連敗か・・・。ああ、熱が・・。

2013年3月26日 (火曜日)

229.【製造業】減損資産の固定資産台帳を修正する理由

2013/3/26

今日はキプロスの銀行が営業を再開させる予定だったが、急遽、3月中は休業となったようだ(ロイターの記事)。いくつかのニュースから推測すると、どうも預金の引出しや海外送金を制限することで、営業再開後も例の名寄せと伝票処理作業が可能になるようだ。現場の混乱を心配したが、ちょっとほっとした。ただ、キプロスの人々は、自分の預金が自由に引き出せない不安が続くことになる。

 

 

前回(3/22の復習=

 

さて、前回は、減損損失を計上した固定資産については、固定資産台帳(=償却台帳)を個別資産単位で修正する実務が行われており、それは日本基準に沿ったものであると記載した。それに対して僕は、個別に固定資産台帳を修正することなく、減損損失累計額を減損案件ごとに管理するだけでも良いではないかと書いた。しかし、IFRSの書き振り(IAS36.63)も、日本基準と似ている。やはり、IFRSでも固定資産台帳の修正作業が必要なのだろうか。だとすると減損戻入は面倒だ。

 

 

=奇策の詳細=

 

ここで改めて、僕の奇策を記載したい(前回のコピー)。

 

減損損失(累計額)は、減損案件ごとの総額で、償却(戻入)スケジュールと減損理由を管理しよう(但し、償却資産に限る。)

 

上記の勘定処理について少々説明しよう。

 

減損損失を計上すると、相手勘定を資産勘定にして、資産価額を直接減額する会社もあるし、相手勘定を減損損失累計額にして、間接的に資産価額を減らす会社もある。前者(=直接減額する会社)だと、固定資産台帳も修正するイメージが強いので、後者の状況を想像していただきたい。

 

具体的には、減損しても固定資産台帳は修正せず、翌期以降もそのまま償却計算を続ける。その結果減損後も減価償却費が減らないことになるが、それではまずいので、減損損失累計額を取崩し、その取崩益と減価償却費と相殺する。その結果、減価償却費は減損して小さな簿価となった資産を減価償却したのと同じ金額となる。

 

減損損失累計額と減価償却累計額を対比する形で、もう一度説明する。

 

減損損失は、あたかも減価償却費の減価償却累計額のように、減損損失累計額に蓄えられる。減損損失累計額は、減価償却累計額と同様に対応する資産の控除科目なので、B/S上の簿価は、直接減額された場合と同じ金額となる。

 

ただ、減価償却累計額と異なるのは、翌期以降取崩しされることだ。その取崩益を原価償却費と相殺することで、結果として減価償却費が減額される。あたかも減損で減額された簿価で減価償却を行ったかのごとく、少ない減価償却費となる。

 

減価償却累計額は、固定資産台帳上で個別資産ごとに計算されたものがB/Sに集計される。しかし、僕の提案している減損損失累計額は、個別資産ごとには計算しない。ただ、減損したときに、減損した単位、減損案件ごとに、その後の減損損失累計額の取崩スケジュールを決めておく。そして、翌期以降、原則としてそのスケジュール通りに取崩していく。

 

 

 

=僕の奇策の問題点(≒日本基準の意図)=

 

「それは楽だけど、そんなことはとっくに考えたよ。でも、監査人にダメと言われたよ。」 そんな声が聞こえてきそうだ。僕も現役時代はダメと言っていた口だ。前回記載したように、「日本基準では固定資産台帳の修正を前提にしているから」という理由の他に、例えば次のような実務的な理由もある。

 

固定資産を除却したり移動すると、減損損失累計額も直さなければならないが、そのとき個別資産ごとに累計額が分からないと困る。

 

また、耐用年数や償却方法が異なる多数の資産を含む資産グループの減損を行う場合は、減損損失累計額の取崩スケジュールを計算するのは大変。

 

確かに、楽と苦の両方がある。日本基準のように固定資産台帳を直してしまえば、翌年度以降は、追加の事務負担はないので楽だ。だが、前回の記事に記載したような事項と比較衡量した場合はどうだろうか。それでもやはり、奇策は次世代に負担を残すので、日本国債みたいで後味が悪い、と思われるだろうか。

 

さらに、問題はこれだけではない。理論的にも、減損は資産評価手続だから、個別資産ごとに減損損失累計額を把握しておく方が自然だ。例えば、債権に対する個別貸倒引当金のように。

 

加えて、会計管理面からいえば、「明細の分からない残高(=奇策にいう減損損失累計額)は管理不能なので、絶対に避けなければならない」となる。

 

例えば、明細の分からない残高は、不正の温床になりかねない危険な存在だ。これは極端と思われるかもしれないが、少なくとも、間違いが発見されにくいことには、容易にご同意いただけると思う。まるで、濁ったドブ川のようで中身が見えず、臭くても足を踏み入れたくない。だから、間違いがあっても発見できない。恐らく、(明細の分からない)一般繰入率による貸倒引当金は、決算ごとに洗い替えてしまうが、こうすることで濁ってドブ川になる前に綺麗に洗浄しているのだと思う。ということで、帳簿残高の内訳は常に、具体的な物体や権利、義務等と、個別・具体的に関連付いていなければならない。

 

しかし、そうだとすると、奇策にいう「減損案件ごとの減損損失累計額」は、何に結びつくのだろうか。減損後も追加投資や移動、除却といった形で資産グループの中味は変わり続けるが、それでも個別・具体的な関連性を維持できるのだろうか。やはり、減損損失累計額は個別資産ごとに固定資産台帳で把握されなければならないのではないか。

 

僕が想像するに、以上のようなことが日本基準が固定資産台帳の修正を前提に置いている理由ではないかと思う。(間違っていたらごめんなさい。)

 

 

書いているうちに、どんどん自分で提案した奇策を自分で否定しているが、もちろん、このままでは終わらせない。しかし、長くなってきたので、これらへの反論は次回に。

 

ところで、今日26日は、サッカーW杯ブラジル大会への出場がかかったヨルダン戦がある。キックオフが日本時間の深夜23時。みなさんも応援よろしくお願いします。

2013年3月22日 (金曜日)

228.【製造業】減損戻入の大変さ

2013/3/22

前回(3/19)の記事で触れたキプロスの預金税は、月曜日に東京やアジアの株式市場に激震をもたらしたものの、欧州では、初報の入った16日から時間が経過していたせいか、比較的冷静に受けとめられたようだ。僕はロシアとキプロスの関係を知らなかったので驚いたが、この機会にキプロスの悪弊を正そうというドイツやIMFの気持ちも分かる気がする(もしご存じない方は、ロイターのコラムをどうぞ)。ただ、月曜(18日)時点の日本から見れば、このような奇策に対するEUの説明(或いは報道)が十分でなかったし、遅かったと思う。

 

さて、面倒な減損の戻入れにどう対処するか、というのが今回のテーマだ。実は僕の提案は、誰でも思いつくありふれた案だ。それが実務にならなかったのはそれなりの理由があってのこと。それなのに、あえて提案しても、奇策とか、邪道とか、そんな評価にしかならず、僕は、色々な方々から冷笑を浴びせられるかもしれない。しかし、言いたい。「減損会計の目的はなんでしょう。それを実現できればよいではないですか。」と。

 

ということで、僕の奇策は次の通り。

 

減損損失(累計額)は、減損案件ごとの総額で、償却(戻入)スケジュールと減損理由を管理しよう(但し、償却資産に限る。)

 

 

 

ではまず、なぜ戻入が面倒なのか、そうなる理由を考えてみよう。

 

 ・そもそも減損の帳簿管理が面倒

 

減損したら、減損後の減価償却計算に備えて、固定資産台帳(=減価償却計算の台帳)の帳簿価額を減損後の状況に修正しなければならない(或いは、別の計算システムを使うか)。資産グループには通常数多くの個別資産がある。特に製造業にその傾向が強いと思う。減価償却計算は台帳に登録している個別資産単位で行われるため、減損損失を個別資産に配分計算したうえで、システムに修正入力(或いは、新規入力)する作業は、手間がかかる。

 

システムによっては、年度繰越処理前にこの作業を終わらせないと余計な作業が発生するし、そうでなくても、翌月の月次決算は減損後の減価償却費を反映させたい。だが、決算発表や招集通知、有価証券報告書の作成で忙しいので後回しにしたくなる。それでも、株主総会、税務申告ぐらいまでには終わらせないと、翌期の第1四半期の作業が入ってくる。こうして忙しい時に追加の作業に追われる。(ただ、システムの減損会計への対応状況によって、作業の難易度と量は雲泥の差といって良いほど異なるようだ。)

 

こうなる理由は、減損会計の意見書「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書(企業会計審議会)」などの日本基準にあると思う。例えば、この意見書はわざわざ減損処理後の減価償却について触れ、

 

  • 減損処理を行った資産についても、減損処理後の帳簿価額をその後の事業年度にわたって適正に原価配分するため、毎期計画的、規則的に減価償却を実施する

 

  • 減損の存在が相当程度確実な場合に限って減損損失を認識及び測定することとしていること、また、戻入れは事務的負担を増大させるおそれがあることなどから、減損損失の戻入れは行わない

 

としている(四、3.減損処理後の会計処理)。即ち、「事務作業の大変な減損戻入をしないから、減損については固定資産台帳を個別資産ごとに修正して、その後の減価償却してください」と読める。

 

また、減損損失は税務上の損金にならないため、上記とは別に減損なしの税務上の減価償却計算を行わなければならない。そして、その差額は一時差異であり、税効果会計の対象となる。この結果、減損された資産グループの固定資産は、その後延々と二重の個別管理が必要になる(いわゆる「二重帳簿」状態)。

 

 

 ・戻入にも同様以上の作業が必要

 

戻入を行うには、固定資産台帳から以前減損対象となった資産を拾い上げる作業に加え、減損時と同様の(但し、評価増し)作業が必要になる。それだけでなく、IFRSでは、減損自体がより頻繁に行われるはずなので、上記の減損の作業も頻度が増えることになる。したがって、減損とその戻入の両方の頻度が増え作業が増える。いわゆる往復ビンタを喰らう状況だ。(なお、戻入は、減損がなかった場合の簿価が上限となるが、そこまで戻るとは限らない。もし戻れば、二重管理は解消され、税効果会計の一時差異項目も減るので、救われる面もあるのだが。)

 

 

 ・加えて自主設定耐用年数になると・・・

 

以上は、「税務上の耐用年数=自主耐用年数」の前提で記載してきたが、両者が異なればそれだけで二重管理が必要だから、さらに減損した資産グループの帳簿は、減損ありの台帳、減損なしの台帳、税務上の台帳の三重管理になる。もし、そういうことに対応したシステムでなく表計算ソフトなど手作業でやろうとした場合は、もはや悪夢でしかない。

 

 

ということで、個別資産の単位で簿価と償却計算を管理するのが大変な作業になっている。これでは減損戻入を敬遠したくなるのも良く分かる。そこで、減損案件ごとの総額で管理する僕の奇策が出てくるというわけだ。

 

ところで、上記に「日本基準のせいで作業が煩雑になっている」ように記載したが、IFRSならこれを避けられるだろうか。実は、IFRSにも、日本基準とあまり変わらない次のような記載がある(IAS第36号「資産の減損」63項)。

 

減損損失を認識した後には、当該資産の減価償却(償却)費は、資産の改定後の帳簿価額から(もしあれば)残存価額を控除した金額を残存耐用年数にわたって規則的に配分することにより、将来の期間にわたって調整しなければならない。

 

これでは、IFRSでも個別資産ごとに減損後の簿価を計算し管理しなければならないのではないか? う~ん、そうかもしれない。だとすれば、僕の提案は、奇策というより駄策かもしれない。みなさんは、きっとがっかりされただろう。しかし、お菓子でも駄菓子にはそれなりの良さがある。好きな人は好きだ。そこで、駄策を味わってみたい方は次回をお楽しみに。

 

 

 

・・・と、本来はここで終わりにしたかった。みなさんはお気づきでないかもしれないが、最近は、特にのれんシリーズ以降長文になっていたので、短くしようと努力している。しかし、今回は、もう一つ話題を付け加えさせてもらいたい。

 

上記の減損とその戻入作業の煩雑さについて書きながらふと思ったのだが、キプロスの預金税は、キプロス議会が受入れたとしても実現可能なのだろうか。僕が気になったのは預金の名寄せ作業と、徴税する伝票(銀行内で使用する振込依頼書みたいなもの)の起票・チェック・入力作業だ。

 

最近は、マネー・ロンダリングを防止するために、システム的に名寄せができることが銀行に求められている。しかし、キプロスではそのマネー・ロンダリングが盛んに行われているという。名寄せは大丈夫だろうか。当初案では免税点も低く、累進性もそれほど高くなかったから、最悪、名寄せをしなくても不公平は大きくなかったかもしれない。しかし、免税点が上がり、より累進性の高い案へ関心が移っているようだ。そうなると、名寄せをやる、やらないで、かなり徴税額が変わるし(EUに課せられたノルマに不足したり、多過ぎたり)、課税の公平性にも影響がでる可能性がある。

 

また、キプロスは週明け(25日が休日で26日)から銀行の営業を再開するとしている一方で、21日も課税案の採決をしない見込みだ。果たして、伝票処理は間に合うだろうか。預金課税はシステム化などされていないだろうから、伝票処理に関してかなり手作業が多いのではないか。預金者の数、或いは預金口座の数だけ作業があるのだから、まるで減損対象となった製造業の資産のように大変だと思う。余計なことだが気になる。

 

でも、IFRSの減損戻入れに慣れたEUの銀行なら大丈夫?

2013年3月19日 (火曜日)

227.【製造業】減損戻入は面倒だが・・・

2013/3/19

みなさんはキプロスの債務危機問題をご存じだったろうか。僕は昨日、月曜の朝に知ってびっくりした。なんと銀行預金が凍結され、そこから税金(課徴金)が強制的に徴収されるという(19日に議会で承認されれば)。詳しくはこのページ(ロイター)をどうぞ。これはEUがキプロスに財政支援する条件というが、いくらキプロスがEUの中で小さな国といっても、預金から強制徴税するなど直感的に「あり得ない」と感じる異例の措置だ。これではマーケットが驚くのも無理はない。

 

マーケットが驚くと言えば、“多額の”減損損失もそうだ。そして、「そんなに悪くなるまで分からなかったのか?」「(経営者の)打つ手が遅れたのではないか?」「経営者に責任はないのか?」などといった方向の話題になる。次の総会で経営者が交代することもあれば、そうでないこともある。

 

確かに経営者は結果責任を負っている面は免れない。しかし、あまりに急激な外部環境の変化は誰が経営者であっても悪影響を避けるのは困難だ。これを経営者の責任にするのは酷だ。一方で、環境変化を察知する能力に欠け、ずるずると事業内容が悪化していたにもかかわらず適切な組織運営ができず、最後にドカ~ンと減損を出す経営者は責められるべきだ。(しかし、そうなってからでは株主にとっても経営者にとっても遅い。僕ごときが僭越だが、ニュースを見てそういう日本企業がかなりあるように感じる。)

 

この、外部環境か、経営者の責任か、を見分けるにはどうしたら良いだろうか。

 

 

問題は“多額の”減損を出す場合だ。少額であれば、経営の軌道修正の結果通常発生しうる前向きのものと考えられる思う。いや、「減損を出してあればよい」という趣旨でなく、「減損を出したんだから、何か今までと違う対応がとられるに違いない。じゃあ、何をするのか。」とスムーズに思考が前向きに展開できる。しかし、突然多額の減損損失を突き付けられるとびっくりして思考が止まってしまう。そして「じゃあ、(株を)売ってしまおう」ということになりかねない。会社内でも前向きな議論の前に、内向きの責任論へ目が向きがちだ。

 

見分けるより、“多額の”ドカ~ンは、外部環境が著しく変化した場合にのみ発生する、というイメージが定着する方が望ましい。即ち、それだけ経営に信頼感があるという状況だ。まさか、兆候を見逃したりはしないだろうと。(理想主義過ぎるだろうか・・・。でもそれを目指さなければ進歩がない。)

 

 

僕が思うに、ドカ~ンと減損損失が計上されるケースというのは、次のような場合ではないかと思う。(もちろん、これらは複合的に絡まって減損に至るのであり、それぞれが単独に減損に結び付くという趣旨ではない。)

 

A.外部環境の急激な変化

B.減損の兆候に気付かず、或いは、見て見ぬ振りして真の対応が遅れたケース

C.資金生成単位が大きな括りになっているケース

 

Aはやむを得ないとして、BとCに関連する要因の発生をなるべく防ぎたい。それには経営層は当然のこと、それより下の階層、さらに若い人にも、より将来志向的な、長期的なリスク管理を浸透させることだと思うが、これは最近では「のれんシリーズ」の「使用価値」や「割引率」のところ、その前は脱線シリーズなどで何度も触れたので、ここでは止めにする。(僕は、Bを突き詰めていけば、Cも解決できると思う。即ち、大きな資金生成単位を設定している会社が、「資金生成単位をもっと分割できる」と思えるようになると思う。)

 

ところで、「長期的思考」というと、過去だけ振返って済ませてしまう方がいるが、そういう「長期志向」はあまり役に立たない。投資回収という「将来志向」と結びつけてこそ価値がでる。それと、計画を実績が下回る場合に、“不安が高まった”として割引率を引上げることは不思議なことではない。早めの減損に役立つ。こういう将来志向のスタンス、リスクに対する感覚が議論の共通の土壌にならないと、組織決定のタイミングが遅れる。もちろん、この共通の土壌作りに会計の果たす役割は大きい。

 

要は減損の兆候に対する感度を上げて、早めにリスクを識別し対応しましょうということだが、それには日本基準よりIFRSの方が合っている、やりやすい、という話も今まで折に触れて書いてきた。

 

そうすると必然的にちょこちょこ減損が出てくる。そしてIFRSであれば、その戻入が発生する可能性が出てくる。早めに対処することで、減損の原因となった事象が取り除かれ、改善されるケースが増えるからだ。ところが、減損戻入は帳簿管理など事務作業が面倒だ、という話になっている。じゃあ、やっぱり早めの減損は止めよう、戻入が生じる可能性が十分低下してから、即ち、減損が確定するところまで認識するのをやめよう、ということになりかねない。現に、日本基準はそういう発想だ。しかし、それでは本来の経営が求めるスピードには遅い。このままIFRSが導入されたとしても、会計が、IFRSが、経営に役立つ機会は失われてしまう。

 

これはまずい。対処し解決すべき問題だ。何が問題で、それを克服するためにはどうしたらよいだろうか。事務作業の煩雑さが日本企業の経営の進化を阻害するなんて、これこそ国益につながる重要なテーマだ。ということで、こういうテーマが企業会計審議会で議論されたら面白いと思う。例の時代遅れのトライアングル体制にも関連する大問題になるはずだ。

 

ところで、3/12の記事で予告した「僕の工夫」は次回に。済みませんが、たいしたものではありません。

 

2013年3月14日 (木曜日)

226.【製造業】再評価モデルの存在意義~社会背景と会計処理

2013/5/29 追記

この記事に、「本社ビルを建てると会社が傾く」というジンクスがあると記載しましたが、同様のジンクスは米国にもあるようです。参考までにロイターの記事『アングル:米IT大手4強の新社屋、「転落ジンクス」回避なるか』を紹介します。

 

2013/3/14

前回(3/12)の記事でこの半年間のまとめを行ったが、今回はそこで未検討とされた「再評価モデル」を検討したい。まあ、検討といっても、オックスフォード・レポートも認めているように、製造業が採用しなければよいだけなので、もともとたいした問題ではないかもしれないが、しかし、なぜこんな、固定資産を時価評価する会計処理が認められているのか、と疑問に思う人がたくさんいると思う。今回は、それについて考えてみたい。

 

 

(再評価モデルの概要)

 

再評価モデルに関してIAS第16号「有形固定資産」の31項は、次のように規定している。

 

資産として認識した後、公正価値が信頼性をもって測定できる有形固定資産項目は、再評価実施日における公正価値から、その後の減価償却累計額及びその後の減損損失累計額を控除した評価額で計上しなければならない。再評価は、帳簿価額が報告期間の末日における公正価値を用いたならば算定されたであろう金額と大きく異ならないような頻度で定期的に行わなければならない。

 

注意していただきたいのは、再評価モデルは原価モデル(通常の減価償却するだけの会計処理)と、IFRSにしては珍しく選択適用が認められており(29項)、「公正価値を測定できるものはすべて再評価モデルが強制される」わけではないということだ。また、再評価モデルを選択した資産については、その資産が属する種類全体についても再評価モデルが適用されなければならず(36項)、その種類とは、企業活動に於いて性質と使用目的の類似した資産のグループとされている(37項)。

 

 

(英国などヨーロッパの影響?)

 

僕は、この会計基準を初めて知った時、その遙か昔、十数年前に読んだ記事を思い出した。それは「会計・監査ジャーナル」の前身である「JICPAジャーナル」のコラム欄にあったと記憶している。イギリスで活躍されている日本人が寄稿されたものと思うが、そのコラムは、世界統一の会計基準であるIFRSとは逆に、「ところ変われば会計も変わる」という内容だったと記憶している。

 

当時日本は、例のトライアングル体制による法人税法の縛りが強い時代だったから、会計は税法規程に、今以上に、非常に強い影響を受けていた。しかし、しばしばそれが実態を歪めていたことは、僕の恥ずかしい体験を以前に書いた(2012/9/25の記事)。「(税法等の)規程通りに処理することではなく、実態を反映することが会計の役割」と思いながらも、実際にはそうならない現実を見ていた僕には、我が意を得たりの面白いコラムで、印象深かった。

 

記憶によれば、(その当時の)イギリスでは数年おきに固定資産を評価増しする会計処理が行われている、とされていた。この再評価モデルと同じ感じだ。そのときは強い違和感を感じたが、コラムを読み進めていくと次のような社会的背景があることが分かった。

 

みなさんもご存じのように、ヨーロッパには百年以上前に建設された古い建物がたくさん残っている。例えば、ロンドンにもゴシック調の古そうな建物がたくさん残っている(第二次世界大戦の空襲を免れたり再建されたもの)。日本にも寺社仏閣など木造建築を中心にたくさん残っているが、ロンドンに於いて注目すべきは観光資源というより、実際に使用されている建物が多かったということだ。もちろん、企業が所有しビジネスに使われているものもある。

 

日本では建物を、例えば法人税法の規定により、淡々と45年で償却してしまうが、イギリスではそうしなかった。減価償却はするのだが、ときどき、時価を見積って再評価していたのだそうだ。なぜなら、イギリス社会では古いものに価値があるとされており、実際に不動産取引は、古いものほど高額となっていたようだ。(古い建物に需要がある。)

 

もちろん、放っておけば価値が出るというものではなく、常に十分なメンテナンスをして外観にも気を付け、空調や電気設備などなるべく時代に合わせるような改修もある程度はしていた。そのための支出もかなり多かったようだ。それでも古いものは使いにくかったと思うが、古いものに価値を感じる度合いが日本と違うので、価値が上がってしまう。その結果、ときどき再評価をしないと実態と大きく乖離した過小評価が発生してしまう。そういう社会的背景や価値観とマッチしているので、この会計処理が正当化されるというのだ。

 

当時、「なるほど~、価値観が違うと固定資産(建物)の評価増しまで正当化できるんだ。発想が柔軟だなあ~。」と妙に感動した。しかし、今考えると「発想が柔軟だな~」という感想はおかしい。現地の人にとっては、古いものに価値を感じるのが当たり前なのだから、これが当然の会計処理なのだろう。

 

恐らく、他のヨーロッパ諸国でも、程度の差こそあれ同様の社会背景と会計慣行があっただろうと思う。それが、IFRSにも再評価モデルとして残ったのだろう。この会計基準を初めてみた時にそう思った(し、今もそう思っている)。

 

 

(再評価モデルの存在する意味)

 

では、これは、古い建物にそれほど価値を感じない、或いは、そういうメンテナンスや改修をしない日本には役に立たない会計処理だろうか。役立たないなら関心をもってもしょうがないが・・・

 

最近、インフラ危機が叫ばれて、橋やトンネルの維持管理が社会問題として認識されている。これが「作り直すより適切に維持管理して長く使う方が良い」という発想への転換につながるなら、いずれこの会計処理も役立つかもしれない。

 

そういえば、東京駅丸の内駅舎も、免震機能など時代に合わせた改造を加えて大正時代の創建当時の姿に復元された。日本でも歴史的な建造物、特に最初から“価値”を考慮して建築されたものにはとても価値がある。三菱一号館は美術館になってしまったが、こういうものがオフィスや店舗として使い続けられるようになるならば、街の景観としても、中で働いたり買い物をする人々にとっても、とても贅沢、良いことに違いない。もし、社会としてそういう方向を目指す場合には、役立つ会計処理だ。

 

ただ、日本では、本社や間接部門に金をかけるのは良くないとする考え方がある。店舗や工場も、機能とコストは重視するが、資産価値を考慮して建設するイメージはあまりない。実際、「本社ビルを建てると会社が傾く」というジンクスがあって、これは侮れない。ちょうどバブル崩壊とタイミングが重なったからか、僕は何社もそういう関与先を見た。すると日本の固定資産は、これからも再評価モデルの対象外であり続けるだろうか。

 

この問題については、どちらが正しいのか良く分からない。しかし、「会計は実態を反映するし、社会背景が違えば会計処理も変わりうる。IFRSにもそういう面がある。」ということを、この再評価モデルが示しているのは明らかだ。そこで重要になるのは、日本やアジアの社会背景や価値観で世界に紹介すべきものを識別し、それを分かりやすくIASBに伝える役割を担う人が必要ということだ。だからこそ、日本がIASBで重要な位置を占め続ける必要がある。

 

 

ところで、2/24の記事に記載した「IFRS財団の会計基準諮問フォーラム(ASAF)のメンバーに日本のASBJ(会計基準委員会)が入れるかどうか」について、「入れそう」という記事が日経電子版に掲載された(「国際会計基準づくり、企業会計基準委が参加 4月発足の新組織」3/13有料会員限定記事)。今までASBJが地道に行ってきた国際基準作りへの貢献が評価されたのかもしれない。上記の趣旨に照らしてとても良かったと思うし、素直に嬉しい。

 

また、TPPも、自民党のTPP対策委員会が交渉参加を事実上容認する決議をしたという。しかも、「国家百年の計に基づく大きな決断をしてほしい」と訴える内容が盛り込まれたそうだ(3/13日経電子版「TPP交渉入り容認を決議 自民対策委」)。そして、今週中にも安倍首相が参加表明するらしい。まだ安心するのは早いが、ちょっとホッとしている。このまま順調にアベノミクスの3本目の矢の1段目のロケットに点火されることを願う。(ちなみに、自見氏はまだ自民党に復党する見込みが立たないらしい。まあ、これはどうでもよいことだが。)

2013年3月12日 (火曜日)

225.【製造業】残っている論点は?(まとめ2)

2013/6/27 この色で2か所追加記載を行った(「(2)保守主義と持続的成長に関する懸念」の後段についてと、一番最後)。

2013/6/17 この色で3か所追加記載を行った(再評価モデル、減損戻入、非上場株式)。

 

2013/3/12

このシリーズを始めたのは昨年9月14日だった。僕には謎だった「IFRSが製造業に向かない理由」が、オックスフォード・レポートに記載されていたので、それを検討しようという趣旨だった。今回は、その記事に掲げたIFRSの問題点をどこまで検討できたかを、確認をしていきたい。各タイトルの次の<>内は、オックスフォード・レポートの問題提起を僕が要約したもの(だが、正確を期したい方は、ページ数を添えるのでオックスフォード・レポート(金融庁HP)を直接ご確認いただきたい)。茶色がこのブログでの検討結果の要約。

 

(1)各勘定科目レベルでの懸念

 

<下記★印の意見のすべてに一定の真理があると考えるが、これらが日本経済に与える影響については評価できない。;P119

 

結論;「各科目レベルの意見のすべてに一定の真理がある」というのは間違い。

理由;間違った情報に基づいた意見がいくつかある。具体的には下記をご覧いただきたい。

 

★原価計算

 

<① のれんが非償却になることで償却費が原価計算の対象外となる。②開発費の費用処理・資産計上の判断が恣意的となり、それが保守主義的思考を減退させ、内部統制に悪影響を与える。③退職給付債務の数理計算上の差異の変動がOCIに一括計上され、かつ、そのリサイクリングが禁止されるこが、原価計算の対象外になることを通じて、投資管理を阻害する。;P116117

 

2012/10/26 【製造業】原価計算~嗚呼、勘違い

結論;それほど重要な問題ではなさそう。

理由;

・のれん償却費は日本基準でも原価計上されていない(全額販管費処理)ので、もともと原価計算には関係ない。オックスフォード・レポートの指摘は勘違いに基づくもので間違っている。

・開発費は下記の2012/10/30の記事で検討しているが、企業の実態を反映してB/S計上額に差異が出るのであり、そんな大げさな問題ではなさそうだ。

・退職給付は下記の2012/11/5の記事で検討しているが、IFRSで原価計算の対象から外れてしまうというのは間違い。

 

★のれん

 

<M&Aのコストであるのれんの償却費が計上されなくなること、経営者の裁量による費用化(=減損処理のタイミングや金額に関する創造的会計)が可能になり、保守主義的思考の内部統制が弱体化すること。;P109P114にも記載あり>

 

2012/11/2 のれん ー 毎期規則的に減損するのはどう?(1)問題提起

 ~ 2013/3/5 222.のれん ー 毎期規則的に減損するのはどう?(33)結論。悪あがき、負け惜しみ。 まで

結論;償却は実施すべきだが、製造業だけの問題ではない。

理由;

・のれんは「M&Aに関わり、M&Aに対する期待を実現する人々」への評価を表すものであり、その期待を実現していく過程で費用認識(=償却)すべき。

・製造業に限定する理由が見当たらなかった。

 

このほかIFRSに対する改善点も見つかった。例えば、IASBはFASBの「企業買収額には公正価値(市場価格)がある」という意見の影響を受け過ぎている、のれんの不純物を会計基準でもっと取り除いてほしい、M&Aで取得した研究開発プロジェクトの一部を資産計上しているが費用処理すべき、など。

 

「投資回収」という発想は、日本の経営管理の実情及び会計基準よりIFRSの方が強く意識しているので、むしろIFRSの根底にある長期志向を学び取ることで、日本的経営がより改善されるのではないか。

 

★開発費

 

<経営者の裁量による費用化が可能になり、保守主義的思考の内部統制が弱体化するが、創造的会計の内容については、事前に監査人の了解も得られる。;P113115

 

2012/10/30 【製造業】開発費~辻褄が合わない!から

結論;それほど重要な問題ではなさなそう。

理由;

・イメージほど大きな金額にならない。開発費は無形資産部分のみで、有形固定資産等は別処理される。また、研究費が費用処理なのは日本基準と同じだし、日本の税法ベースで研究費と開発費を区分していると、IFRSの方が研究費の範囲が広い(=費用計上額が大きい)可能性がある。

・業種ごと、企業ごとに開発費の資産計上額が異なるのは、製品市場性質や企業のマーケティング手法等の差異を反映したものであれば当然である。

・「日本の監査人がいい加減」みたいな記載があり多いに反論したいところだが、僕も客観的に書ける立場ではないので止めた。

 

但し、のれんシリーズの2012/12/11の記事で記載したように、今後、一部の研究費も資産計上される方向で、IFRSが改正される可能性がある。

 

このほか、次のような疑問が生じた。

 

もともと、1990年代まで日本の会計基準は開発費を資産計上するか費用処理するかを経営者の判断に委ねていた(IFRSより遙かに恣意性が高い)。これは経験豊富な経理出身の経営幹部ならみんな知っている。そして、これが当時の日本経済に悪影響を与えたとは思っていない。なのに、なぜ、“創造的会計”などというセンセーショナルな言葉が出てきたり、保守的思考が衰えて日本企業の経営がおかしくなるなどという大袈裟な意見がたくさん提出されたのか? インタビュー手法に問題があるのではないか?

 

★退職給付債務

 

<退職給付債務の数理計算上の差異の変動がOCIに一括計上されることで、①この変動額が原価計算の対象外となる。②この処理は、企業の包括利益の変動を大きくするので、確定給付型の退職給付制度を廃止させる方向へ影響を与える。;P116117

 

2012/11/2 【製造業】退職給付~不思議な誤解

結論;①はオックスフォード・レポートの誤解による指摘。②は経済実態がそうであるならば、それを認識して経営判断する方が適切。

理由;

・IAS第19号「従業員給付」、IAS第2号「棚卸資産」を読むと、上記変動額も原価計算の対象となることは明らか。

・実際に変動するものは、会計上もその通り表現され、そのリスクが経営者に識別されるのが適切。

 

「会計基準を読めばわかる誤解が、研究者に正されずにレポートされている」という状況が不思議だ。しかも、多くの企業幹部等が証言しているという。誰かが誤解を広めたのではないか?

 

 

★長期的な労働力の資産計上

 

<日本の優れた労働力を長期に確保することによる利益、すなわち資産は認識されない。;P117

 

2012/11/5 【製造業】人の評価の資産計上

2012/12/12 のれん ー 毎期規則的に減損するのはどう?(9)自己創設のれんの裏口入学

結論;人の評価は「のれん」を除き、資産計上できない。ただ、これはIFRSだけの問題でなく、日本基準も同様。

理由;

・人の評価は、会計上自己創設のれんの問題と考えられるが、日本基準でもIFRSでも資産計上が認められていない。その理由は不確実性が高過ぎて金額を決められない(=測定・評価できない)から。

・もし、人の評価をちゃんとできるのであれば、現在の会計は不要になる。それができないから会計があると言ってもよい。それほど人の評価の資産計上は難しい(僕の意見)。

 

非常に興味深い論点だった。会計の根本に触れる重大問題と思う。しかし、残念ながら人の評価(=自己創設のれん)は、資産計上できない。

 

★有給休暇引当金(おまけの論点)

 

<有給休暇引当金は、従業員の有休消化を促進するインセンティブになり得るという(IFRSを擁護する)意見;P118

 

2012/11/6 【製造業】引当するなら有給休暇を買取って!

結論;僕の意見では、有給休暇引当金は有休消化のインセンティブにならない。

理由;

・一見、IAS第19号は未消化の有給休暇をすべて引当計上させるように読めるが、よく読めば、そして、概念フレームワークの負債の定義を考えれば、そうではないことが分かる(というのが僕の意見)。

・有給休暇が未消化となることで、将来追加の支出が生じるなら引当の対象。

・将来の追加の支出とは、次のようなケースが考えられるが、日本の正社員の場合には該当しないことが多いのではないか。その場合は、追加の支出がないので引当不要ということになる。

 

a.有給休暇消化時に、代わりの人を臨時に雇うので、追加の給料等を支出する。

b.有給休暇消化時に、その分に相当する追加の残業代が発生する。

c. 未消化の有給休暇を会社が買取る(=企業の支出)。

 

IAS第19号に示された設例は、時間給の従業員が想定されている。確かに、時間給の従業員が有給休暇を取得すると、「働かない時間に対して給料を払う」という形で追加の支出が生じるが、日本の正規雇用ではそうならない。この点に注意する必要がある(というのが僕の意見)。

 

ということで、折角のIFRS擁護の意見だが、正社員の有給休暇の消化を促進させる効果はないのではないかと思う。

 

再評価モデル

 

<製造現場での地道な原価低減・改善活動の役立たない。;P118

 

未検討。オックスフォード・レポートでも、製造業は採用しなければよい。EUでも採用例は殆どない、とされていて、あまり問題として扱っていないようだ。

 

その後の参考記事;3/14の「226.【製造業】再評価モデルの存在意義~社会背景と会計処理」

 

減損の戻入れ処理

 

<事務作業を複雑にし、新たな減価償却を通じて原価計算・投下資金回収・マークアップ計算等に影響を及ぼす。;P119

 

未検討。手間がかかるという話はこのブログでも触れたことがあるが、工夫の余地はあるのではないかと思っている。

 

その後の検討記事;3/19「227.【製造業】減損戻入は面倒だが・・・」

  ~ 6/15「256.【製造業】減損戻入シリーズのFinal Answer」

 

非上場株式の公正価値評

 

<非上場株式への投資の差し控えや、OCIに影響を与える持合株式や海外への投資を控えることが懸念される。;P119

 

このシリーズとしては未検討。ただ、非上場株式の評価については、すでに、2012/8/3の記事「Oxford Report】この「序」の意味するところは?」に、実務に落し込むときの僕の考え方を紹介させてもらった。IFRSは原価主義による評価を全否定しているわけではない。あまり、公正価値に振り回されない方が良いのではないかと思う。

 

上の段落では「未検討」としているが、・・・

 

公正価値評価については、公正価値測定の教育文書(IFRS財団のHP)が公表された現在も、上記の『この「序」の意味するところは?』(2012/8/3の記事)の修正は特に必要ない、と僕は思う。多くの会社では、経営上の重要性を考えながら(あまりテクニカルなことに振り回されず)、「この値段で買い手がつくか? 買い手に説明できるか?」というシンプルな問い掛けを評価対象に向ければ良いと思う。原価が公正価値となることもありうる。以上はラフな表現だが、重要なら説明の根拠を深掘りするだろうし、買い手が納得しそうならそれは公正価値になりうる。

 

オックスフォード・レポートに「懸念される」とされている内容については、経営者が(そして株主も)、投資リスクを認識した上で、持ち合ったり、解消したり、海外投資をしたり、止めたりすることは当然のことと思う。むしろ、そういうリスクに向き合わないで意思決定することの方が懸念される。また、事実として資産の評価に重要な変動があるなら、資金の出し手等の関係者へ報告すべきだ。企業の財務報告に限らず、一般論としても、この手の情報が知らされなかったらその関係者は怒るだろう。上記のオックスフォード・レポートのような批判はたまに聞くことがあるが、そういう変動要因も含めて、経営者は理解し、関係者へ説明する責任があると思う。

 

さらに言えば、株式持合いは、個別には例外もあるだろうが、全体を見ればすでに相当解消されていると言われているし、海外投資に為替変動リスクを考慮しない経営者も珍しい。生産拠点、販売拠点として長期投資を行う際も、為替レートの長期見通しや長期のリスクヘッジを考える時代になっている(実際にリスクヘッジしているかどうかは別だが)。オックスフォード・レポートは認識が古いのではないかと思う。

 

ということで、以上で、一応検討済みとして扱いたい。ただ、IFRS第9号、第13号については、興味をそそるところなので、また別の機会に詳しく検討してみたい。

 

 

(2)保守主義と持続的成長に関する懸念

 

<根本的なレベルでIASBが保守主義を排し、長期開発、投資資金回収、再投資を得意とする日本の製造業の合理的な経済行動としての保守主義的会計行為が、IFRSでは認められないのは不合理である(P120)。>

 

<IFRS推進派の関心は投資家のため会計の推進という点(或いはもっと狭義にIFRSという投資家のための会計とその技術論)に限られているのに対し、IFRS慎重派は会計が投資家のためのものになっていること自体に懸念ないしは不満があり、そもそもの議論のスターティングポイントが異なる(P124)。>

 

前段について

 

2012/9/18 【製造業】マーフィーの法則と保守主義

2012/10/18 【製造業】(まとめ1)IFRSは長期志向

2/15 のれん ー 毎期規則的に減損するのはどう?(28)長期志向の使用価値

などあちこち。

結論;「IFRSが保守主義を排し」というのは根拠がない。保守主義は単に会計の問題ではなく、もっと根本の問題であり、会計基準が排除することなどできない。

根拠;

・この主張の根拠が分からないが、恐らく、概念フレームワークの財務情報の質的特性から「慎重性」とか「保守主義」が落とされたことを言っているのだと思う。しかし、不確実性に対応するのが経営なのだから、経営(のリスク管理)に保守主義が必要なことは、誰の目にも明らか。リスク管理は会計以前の問題。

・個別の規準(減損会計など)を見ても、十分保守的になっている。

 

後段について

 

強いて挙げれば・・・2/21 のれん ー 毎期規則的に減損するのはどう?(30)投資者の要求する割引率 (大変恐縮だが、ズバリこの記事、という具合に指定することができない。このテーマでは直接記事を書いていないことに気が付いた。)

結論;基本的には「投資家=経営者」と思うが・・・検討未了

 

そもそも、株式会社の所有と経営の分離によって、株主に代わって経営を行う「経営者」ができたのだから、経営のために会社の実態を把握し報告する手法である会計は、両者に差はないと考えるのが基本のように思う。

 

しかし、実際はそう単純でもない。株主と経営者の間の利害衝突はある。株主が経営から退き、株式投資から利益を得ることに傾斜した結果、特に株式の短期売買を繰返す投資家と経営者では大きく利害が相違するのが現実だ。

 

この利益相反は別に目新しい問題ではなく、この利益相反があるからこそ、企業開示制度が生まれたともいえる。したがって、オックスフォード・レポートは、この古い問題が、保守主義や持続可能性の面でいまだに解決されておらず、特にIFRSは投資家に寄り過ぎていないか、と問題提起しているのだと思う。

 

上記で「検討未了」としたが、6/25の記事「260.【製造業】最後のテーマ;投資家のためじゃない会計」で検討を行った。その結果、「IFRSが投資家のための会計」というのは、まだIFRSが良く理解されていないためであり、むしろ、IFRSは経営管理に親和的であると結論付けた。

 

 

ということで、黒い太字の斜体の4か所がまだ未検討だ。実は、もうあまり大きな問題は残っていないと思っていたのだが、(2)の後段は、基本的であるがゆえにかなり難しそうだ。もちろん、のれんのように1テーマで何カ月も、というようなことはもうないと思うので、最後までお付き合いいただけるとありがたい。

 

(最後に)

この製造業シリーズは、「IFRSは製造業に合わない」という主張を検証したものだが、オックスフォード・レポートが金融庁のホームページに掲載され、中間的論点整理が企業会計審議会から公表されたのを最後に、この主張が企業会計審議会で行われなくなったことに気が付いた。どうやら、この主張は時代遅れになったようだ。これについては、6/27の記事「261.【製造業】最後に驚愕!~3年目に突入」をご覧いただきたい。

2013年3月 9日 (土曜日)

224.モニタリング・ボードの選任基準~あと3年か?

2013/3/16 モニタリング・ボードは、IFRS財団の定款に規定されたIFRS財団の機関であることが分かりましたので、関連個所を訂正しました(赤字1か所)。

 

2013/3/9

前回(3/7)の記事では、3/1のプレス・リリースの主体であるIFRS財団モニタリング・ボードが何者かについて確認した。ポイントは以下のとおり。

 

実態はIFRS財団とは別団体(IOSCO;証券監督者国際機構の一部)であり、規制当局者の集団。

・IASBは、このモニタリング・ボードと微妙な距離感を保とうとしている。

・一方、モニタリング・ボードは、IASBが思っているより深く関わろうとしている。

 

IASBにとっては、お節介な(口喧しい)本家の叔父さん、という感じだろうか。上下関係ではなく斜め関係なので、一応、IASBの独立性は保たれた形になっている。IASBには少々煙ったいが、後ろ盾としては頼もしい。

 

さて、それでは、今回はプレス・リリースの内容に入っていこう。

 

3/1のプレス・リリースの概要)

これも前回記載した通り、モニタリング・ボードのボード・メンバーの選任基準(メンバー要件の評価アプローチ)と、日本人が議長に選出された旨が公表されたのだが、これが日本やアメリカに対するIFRS採用のプレッシャーになっているように思う。詳しく見てみよう。

 

 

(ボード・メンバーの選任基準)

・メンバーは資本市場規制当局者(日本であれば金融庁)

・メンバー国(又は法域)は、IFRSの使用とIFRS財団への資金拠出を要求される。

 

要するに、ボードに残りたければ「IFRSの使用」が必要ということだろう。しかし、何をもって「IFRSの使用」というかが問題だ。それは次をご覧いただきたい。

 

IFRSを使用しているか否かの評価)

・強制適用でも任意適用でもよい。

・但し、市場においてIFRSが顕著に使用されることとならなければならない。

・妥当な期間のうちに移行するというコミットでもよい。

・適用されるIFRSはIASBが開発したものと本質的に同列のもの(カーブ・アウト等は許容)。

2016(次回のメンバーの改選後)から、この評価が行われる。

 

上記の他にも細かい要件がある。例えば、規制当局が規制している市場が、国際的に主要な市場であることとか、会計基準の適切な実施のための仕組み(監査制度等のことと思われる)が整っていること等々。また、上記には「2016年から」と書いたが、既存メンバーの見直しを2013年に開始するとか、必要に応じて臨時に見直すなどとも書いてある。読み方が難しいが、一応、厳格に適用されるのは2016年以降だろうと解釈した。

 

 

以上から、みなさんは日本の状況をどう感じられるだろうか。任意適用が十数社では「顕著に使用」とはいえまい。ということは、このままの状況で推移すれば、今は議長国だが2016年以降はボード・メンバーにも入れなくなる可能性もある。では、「顕著に使用」とはどういうことだろうか。「顕著に使用」という言葉のあとに次のような記載がある。

 

歴史的に見れば、クロス・ボーダーにおける資本調達を容易とすることが、IFRS を使用する誘因であったことをモニタリング・ボードは理解している。しかしながら、国内における財務報告制度において、IFRS は次第により顕著な役割を果たしていくことになるであろうとモニタリング・ボードは予想している。

 

これは意外に重いことを言っているような気がする。「国際的な資本調達をしている企業」が任意にIFRSを採用している状況では十分でなく、「国内向けの財務報告でも使用」されている必要があるのではないか。ぱっと思い浮かぶのは、アメリカが外国企業にIFRSの採用を許容し、国内企業には禁止していることだ。この状態はNGだろう。

 

では日本はどうか。国内企業にもIFRS使用を容認している。しかし、日本の場合もすべての国内企業にIFRSの使用が許されているわけではない。「国際的な財務活動または事業活動を行っている企業」という要件がある。やはり、今のままではダメだろう。では、この要件を取り除けばOKか?

 

「顕著な」とは、原文では「prominent」であるが、webiloの研究社新英和中辞典によれば、次のような意味があるという。

 

  1. 卓越した,傑出した,有名な.
  2. (周囲のものより際立って)顕著な,目立つ.
  3. 突起した,張り出した.

 

どうやら、他のもの(=日本基準)より出っ張ってないとダメらしい。少なくとも任意適用十数社とか、数十社程度では出っ張ったことにならないだろう。社数か、時価総額か、日経225銘柄か分からないが、とにかく、(任意適用の結果として)日本基準より意味のある何かが多くなっていなければならないと思う。

 

 

 

(深読みし過ぎ?)

 

さて、IASBはすでにFASB(米国財務会計基準審議会)と距離があっても止む無しという構えだが、小うるさい叔父貴はさらに進んで、米国(と日本)をメンバーから外すぞと脅しているようだ。米国は、心を入替えれば喜んで復帰させてもらえると思うが、日本は、日本の代わりに中国が入った場合、果たして復帰できるだろうか。

 

この背景には、IFRSを採用していない国に発言権はいらないだろうと、採用国から強いプレッシャーがあるようだ。今回モニタリング・ボードでは、それが具体的なボード・メンバーの選任基準のなかに取り入れられた。恐らく、IFRS財団評議員会やIASBの内部でも同じだろう。そして、本家の叔父貴は同じようにしなさいと、口うるさく言うに違いない。今は日本人の席が確保されているが、これからどうなるか心配だ。近々には2/24の記事に記載した「会計基準諮問フォーラム(Accounting Standards Advisory Forum ;ASAF)」メンバー選任の件もある。しかし日本は今寝ている状況だ。せめて、企業会計審議会の議論を早期に開始していただきたい。

2013年3月 7日 (木曜日)

223.IFRS財団モニタリング・ボードとは

2013/3/16 モニタリング・ボードはIFRS財団の定款に記述されたIFRS財団の機関であることが分かりましたので、関連個所を訂正しました(茶色1か所)。

2013/3/8 正確な表現と根拠を示すため、赤字2か所を追加しました。

 

2013/3/7

前回(3/5)の記事で予告した通り、今回は金融庁から公表されたIFRS財団モニタリング・ボードのプレス・リリースについて記載したい。このプレス・リリースの主な内容は、ボード・メンバーの選定基準(メンバー要件の評価アプローチ)の改定と新議長に日本人の就任が決定したことだ。

 

しかし、このプレス・リリースの主体である「モニタリング・ボード」とはそもそも何者か。日本語にすれば“監視会”。一見、取締役会のように見えるかもしれない。しかし、ちょうどそれに当たる役割は「IFRS財団評議員会」が担っている。そしてIASB(国際財務報告審議会)は、その評議員会の下で具体的な職務執行に当たる“執行役員会”のような位置づけだ。やはり、モニタリング・ボードとは謎だ。

 

というわけで、今回は、プレス・リリースの内容に入る前に、「モニタリング・ボード」について見てみよう。なお、IFRS財団の組織構造については、日本公認会計士協会のHPが分かりやすく詳しいので、正確に知りたい方は、そちらの(IASBとは)をご覧いただきたい。

 

 

(モニタリング・ボード)

 

「IFRS財団モニタリング・ボード」というと、IFRS財団の定款に規定された機関であるが、その実質はそう単純ではない(金融庁のHPにあるモニタリング・ボードへのリンクは、IFRS財団ではなくIOSCOWeb Pageに繋がっている)。株式会社の株主総会にやや似た感じがあるが、もっと複雑で微妙な緊張関係があると思う。まず、モニタリング・ボード自身による説明を見てみよう。これはプレス・リリースの末尾に記載されていたものだ。

 

モニタリング・ボードのメンバーは、証券監督者国際機構(IOSCO)新興市場委員会及び専門

委員会、金融庁、欧州委員会(EC)、米国証券取引委員会(SEC)であり、バーゼル銀行監督

委員会がオブザーバーとなっている。各法域において用いられる財務報告の形態と内容を

決定する資本市場規制当局は、モニタリング・ボードを通じて、投資家保護、市場の健全性

や資本形成に関する責務を、より効果的に果たすことが可能となる。

 

要点は3つ。

・メンバーは各国の資本市場の規制当局や国際規制組織

・各規制当局の目的は、複数の政策効果を上げるためにIFRS財団と関係を持つこと。

・各規制当局は、モニタリング・ボードを通じてIFRS財団と関係を持つ。

 

IFRS財団は、世界中から信用・信頼される組織でなければならない。しかし、IASBを擁するIFRS財団は単なる民間団体だ。その民間団体が作った会計基準を各国が採用するには、IFRS財団に何らかの公的な信用・裏付けが必要なのだと思う。特に、IASBは、IFRSを単に参考にしてくれといってるのではなく、最終的には丸呑み(アドプション)してもらうことを目標としているので、相当高い信頼感・信用が必要だ。それには各国でIFRSを採用するか否かに大きな影響を持つ規制当局と関係を持つのが良い。もちろん、この信用度合はIFRS財団への寄付金の多寡(IFRS財団の資金調達)にも影響する。

 

一方、会計基準は経済実態を忠実に開示するという目的以外の思惑に左右されるべきでない。そこで、IASBは、どの団体・勢力からもプレッシャーのかからない、これらの影響を受けない独立した存在でありたい。ところが、規制当局は、各国内の利益団体の影響を受けやすい政治の影響下にあって、しかも、IFRSをどのように適用するかを含めた法的な強制力を操る権力者だ。したがって、規制当局というのは、IASBが直接関わりたくない「特定の団体・勢力」の筆頭といってもよいかもしれない。

 

信用は欲しいけど、関わりたくない。この相反する微妙な関係を繋いでいるのがモニタリング・ボードだ。個々の規制機関と直接の関係を持てば個別利益を背景にした要求を受けやすいが、規制機関の集合体であれば個別利益丸出しの要求は控えられるだろう。

 

出資は欲しいけど、経営に細かく口出ししてほしくない。この株式会社の所有と経営の分離の感じが、個々の規制当局とIFRS財団、特にIASBとの関係にちょっと似ている。株主は株主総会を通じて、決められた範囲の議題と、主に取締役等の選任・解任などのガバナンス面で権限を行使する。規制当局も、モニタリング・ボードを通して限られた権限、主にIFRS評議員会のガバナンスの監視を通じてIASBへ影響を与える。モニタリング・ボードの影響は、IASB(IFRS財団の執行機関)に直接及ばないが、IFRS財団評議員会(IASBの監督機関)を通して行使される。

 

但し、会社は株主のものだが、IFRS財団はモニタリング・ボードのものではない。モニタリング・ボードとIFRS財団は、それぞれが別個の独立した組織であるため、モニタリング・ボードは株主総会と違い、IFRS評議員会評議員等の選任・解任権までは持っていない。もし、選任・解任まで握られていたら、IFRS財団はもはや独立してることにならない。しかし、IFRS評議員会評議員の選任過程に参加しそれを承認する権限はある。したがって、IFRS財団の独立性は、意外と薄氷の上に立ったものなのかもしれない。

 

 

(モニタリング・ボードの性格)

 

より詳しく正確に知りたい方は、「IFRS 財団のガバナンスレビューに関する最終報告書(2012/2/9」(金融庁のHPの資料5)をご覧になると良い。いずれにしても、モニタリング・ボードがIFRSに影響を与えうる重要な立場にいることがご理解いただけると思う。特にIASB議長に、モニタリング・ボードが認識している問題を参照できるという権限(問い掛け、回答をもらう権限だと思う)は重要だ。この権限を通じて、IASBの取り上げる議題や議論の方向性に影響を与える可能性があるからだ。

 

加えて、モニタリング・ボードは、おっとり構えたお大臣な人々ではない。上記資料5を読むと、参照権限だけでなく、直接IASBの議題を決めたりIASB議長の選出に関わる権限を持ちたいと思っているらしい。要するに、より権限の範囲を広げ、IFRSの内容に強い影響力を持ちたいと思っているようだ。IASBにとっては相当手強い(煙たい?)存在だろう。

 

 

さて、このようなモニタリング・ボードが、メンバー選出基準を改定したとプレス・リリースした。これが、IFRS財団、IASBに影響するかどうか。次回は、僕の憶測、想像、妄想を記載したい。興味のある方はご覧ください。

2013年3月 5日 (火曜日)

222.のれん ー 毎期規則的に減損するのはどう?(33)結論。悪あがき、負け惜しみ。

2013/3/5

そろそろ、「のれんをあたかも償却するがごとく、毎期規則的に減損することができるか?」という問題に結論を出す準備ができたのではないかと思う。みなさんには大変長い間お付き合いいただいて、感謝を申し上げたい。ありがとうございます。

 

ざっと振り返ると・・・ (斜体文字はあまり一般的でないかもしれない僕の意見)

 

1.のれんとは何か?

A.関連する人々の評価である。

B.主に、継続企業要素の公正価値とM&A後に創造されるシナジー効果への期待から構成される。

 

2.望ましい会計上の扱いは?

A.関わる人々の残存勤務年数で、その人々の貢献度合いを示すように償却できるのが好ましい。

 

3.IFRSにおいて、のれんを減損する手続はどんなものか?

A.一般的な資産は減損の兆候があれば減損テストを行うが、のれんについては毎期テスト。

B.簡略化できるが、毎期必ず実施。時期は任意だが減損の兆候がある場合はそのタイミングでも実施。

C.減損テストは、簿価と回収可能額(使用価値と処分費用控除後の公正価値の大きい方)を比較する。

D.のれんは関連する資産に配分してから減損テストするが、その関連する資産とは別にテストする。

E.減損テストに引っかかったら、のれんから先に減損する。

 

4.使用価値をどのように見積るか?

A.〔5年以内の正式計画ベースの将来キャッシュフロー  その期間経過時点の売却額〕の現在価値。

B.計画からの調整は概念フレームワークの“過去”の範囲に収まるように行う(改善案は排除)。

C.成長率、割引率、売却価値は、会社のリスク管理の中で揉まれたもの(が僕の好み)。

D.成長率、割引率、売却価値も原則的にはその都度最新情報に更新する(特定の場合は省略可)。

 

 

以上から考えるに、「毎期規則的に減損できるか」とは、「使用価値を毎期規則的に引下げられるか」という問題になる。しかし、4.Dにあるように、使用価値は毎期更新され、その時々の状況で増減するものだとすれば、あたかも償却であるかのように、予め各期の減損額を決めておけることなどありえない。

 

ただ、更新は“原則”であって、例外がある。例外であり続ければ、予め決めた使用価値をずっと使える。では例外とはどんなケースだろうか。これについては2/5の記事では「特定の場合」としか記載しなかったが、要するに詳細な検討をしなくても減損がないと判断できる場合だ(IAS3699項)。しかし、ここでは毎期減損したいのだから、明らかにこの「特定の場合」には当てはまらない。ん~、早くもここでギブ・アップか。

 

もう少し粘ろう。

 

毎期更新するにしても、割引率や成長率であれば、それらの影響は程度問題だ。むしろ、段々使用価値が小さくなるように更新できるのであれば、その方が好都合だ。その可能性を見てみよう。

 

まず、割引率は「我慢+不安」だった(2/19の記事)。「我慢」の部分は国債等の信用度の高い債券の市場利子率だから、必ずしも好都合な方向へ動くとは限らない。市場任せだ。では「不安」の方はどうか。

 

実は「不安」の方は、都合の悪い方へ動く可能性が高い。のれんの構成要素のうち、とくにシナジー効果に対する期待が実現するかどうかに不安が大きいと思うが、実績が出てくるにつれ、不安は解消されていくと考えられる。すると、割引率は小さくなる傾向なので、回収可能額は大きくなってしまう。これでは減損にならない。(逆に、実績が出て不安が増す場合は、計画や期待通りにならない実績不振のケースだ。この場合は下方修正された直近の計画をベースに将来キャッシュフローが更新されるので、本来の減損が発生する。この減損は、IFRSであろうが日本基準であろうが関係なく発生するので、この議論から省く。)

 

したがって、割引率は都合の悪い方へ変動する可能性があることを受入れざるを得ない。

 

では、成長率はどうか。事業のライフ・サイクルを前提とすれば、事業は「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」と遷移する。そのライフ・サイクルの長さや成長率が変化する勾配は事業によって異なるし、どのフェーズにいるかという判断によっても異なる。しかし、ライフ・サイクルの長さの予想は、いったん決めれば比較的安定していると思われる。しかも、1年経過するごとに、残りのライフ・サイクルが短くなっていく。それを成長率に毎期反映させると、使用価値が年々下がる方向へ作用する。

 

これは都合がよい。もう少し考えよう。少なくともライフ・サイクルの期間で徐々に減損しきれるかもしれない。

 

成長率は、中長期計画(5年以内)の期間経過後の売却価値算定に影響する。但し、2/28の記事で示した売却価値算定の考え方①から④の考え方のうち、②の「処分を想定した時点以降の将来キャッシュフローを見積って割引く」方法をベースにしていないと、成長率と関係しない可能性もある。しかし、①(市場価格)はほとんどないし、③(競合先等の欲しがる値段)や④(再調達価格)も、実務的には②をサポートする程度にしか機能しないと思うので、やはり、事業のライフ・サイクルを想定した成長率を見積ることで、都合の良い方向の使用価値の計算が可能だ。

 

よしよし。更に検討してみよう。

 

しかし、まだ問題がある。事業のライフ・サイクルの長さと関係者の残存勤務年数が一致しない。それに、事業が好調のまま5年なり10年が推移すると、ライフ・サイクルの長さを伸ばす必要があるかもしれない。

 

IFRSでは、追加投資が事業業績の改善に寄与した場合に、その改善された業績に基づいて使用価値を計算するという立場をとっていて、すでに実績となっている追加投資の効果を使用価値の算定から除外しない(2012/12/12の記事の「当初の資産」の議論)。したがって、追加投資の効果で予想より業績が良くなり、ライフ・サイクルの長さが伸びたと判断された場合は、それを売却価値の計算に反映させなければならない。すると売却価値が増加し、使用価値も増加してしまう。或いは、売却価値も使用価値も減少しない。やはり、毎期規則的な減損は無理か?

 

しかし、この追加投資というのは、一般的な事業用固定資産を想定しているのではないか。のれんはこれとは別に考えられないか? ・・・いや、難しそうだ。

 

せめて、のれん単独で減損テストが実施できるのであれば良いのだが、のれんは配分されて関連資産と一緒に減損テストを受けなければならないようだ。上記の3.Dには、配分された資産と別に減損テストすると書いてあるが、それはのれんの減損テスト用に、関連資産と別の回収可能額や使用価値を計算できるという趣旨ではない。関連資産の側に、以前の日本の臨時償却にあたるような状況があることを想定したものだ。

 

一般の事業用固定資産では、「当初の資産」と追加投資分の区分管理は実務上困難というIASBの上記の主張は理解できるが、のれんについては「当初の資産」と追加投資を分けることは比較的容易だ。加えて、特にのれんの構成要素のうち「シナジー期待」部分は、将来便益を生じさせる可能性・確実性に於いて、一般の資産と大きな差がある。だから、「のれんから先に減損する」というだけでなく、一般の資産と別に減損テストを考えても良かったと思う。もし、関連資産とは別の回収可能額を計算できるなら、追加投資の影響(=自己創設のれんの資産計上)を避けて、関連資産とは別のライフ・サイクルを想定することも可能だったかもしれない。

 

しかし、IFRSでは、のれんは単独で将来便益を生まないので、将来便益を生む関連資産と合わせて減損テストを行うことになっている(2/5の記事)。この縛りがあると、上述のような追加投資による関連資産のライフ・サイクルの伸長の影響から、のれんを外すことができない。即ち、自己創設のれんの計上を許してしまう。これはIFRSの悪いところだが、そうなっている。

 

さらに、上述したように割引率が小さくなってしまう可能性があるので、使用価値が毎期小さくなる保証がない。したがって、関係者の残存勤務期間に渡って毎期そこそこの減損を出し続ける保証ができない。

 

 

 

ん~、ここまでか。これが結論か。折角「毎期規則的に減損」とタイトルにつけて長々と4ヶ月もの間検討してきたのに・・・。まったく面目ない。

 

 

 

しかし、最後に負け惜しみを言わせてもらえば、書いていて、実に楽しいシリーズだった。特に、のれんの本質が人の評価であるとする議論の中で、統合報告を踏まえた会計情報の意味を僕なりに理解できたことは大きな成果だった。

 

また、みなさんもご経験をお持ちだと思うが、会計基準を勉強する際、一定の視点をもつと意外と頭に残るものだ。そういう視点としては良いテーマだったのではないかと思う。(ちょっと長過ぎたが。)

 

 

 

さて、みなさんはお忘れかもしれないが、このシリーズは、「IFRSが製造業に合わない」という主張をオックスフォード・レポートの記述に従って検証していく、『ものづくりとIFRS』(2012/9/14の記事)の一部だった。その趣旨に沿って次のような結論にしたい。

 

のれんの本質はそれに関わる人々への期待の評価なので、関わった人々の事業への貢献の状況を反映するよう償却が必要だが、IFRSでは減損しかできない。そのために、M&Aが期待が外れと判断されたときに突然多額の損失が計上される。しかし、それは本来、期待が実現する都度認識されるべき費用が認識されなかったため遅れて損失となったものだから、適切な会計処理ではない。したがって、のれんに関しては、IFRSは改善されるべき。なおこれは、のれんは通常の事業性資産と同様に、費用配分されるべき資産である(=公正価値評価される資産ではない)という認識に立っている。

 

但し、この結論は「ものづくり」に関係なく、他の産業においても同様だと思う。必ずしも「製造業に合わない」と主張する根拠にはならない。

 

ということで、次回はちょっと寄り道して、「国際会計基準(IFRS)財団モニタリング・ボードによるメンバー要件の評価アプローチの最終化及び議長選出の公表について(金融庁のHP)」について記載したい。年内に交渉妥結を目指すとされているTPPよりはマシかもしれないが、日本は追い詰められている。そして、また「ものづくりとIFRS」シリーズへ戻っていきたい。

2013年3月 3日 (日曜日)

221.【金融緩和】デフレの本当の原因と対応~斎藤誠一郎氏

2013/3/3

言葉は役立つときとそうでないときがある。例えば、美しい景色を見たり、美味しい食事を食べたことを言葉にしても、ありきたりな表現になってしまい伝わらない。そういう時は「とにかく、行ってみて!」ということにして、言葉をクビにする。一方で、何かが頭に引っかかっていて、もやもやして気持ちの悪い時に、誰かがそれを上手に言葉にしてくれると、とてもスッキリする。ちょっと違うが、思い出せなかった固有名詞がぱっと思い浮かんだ時の気持ち良さが近いかもしれない。そういう時には言葉にボーナスを支給したい気分だ。

 

有難いことに後者の体験ができたので、みなさんにご紹介したい。

 

斎藤誠一郎氏をご存じだろうか。Nikkei BP netの紹介文によれば、「2012年まで24年間、「ワールドビジネスサテライト」(WBS、テレビ東京系)のコメンテーターを務める。」とされているが、僕はWBSを見たことがないので知らなかった(僕が住んでる地域ではテレビ東京は視聴できない)。

 

僕は、日経電子版に気になるタイトルのリンクを見つけて辿って読んでみたのだが、それが、その斎藤氏の記事だ。そして、これだ!っと思った。そうそう、こういうことだったと。僕は、当面この記事(4回シリーズ)の見方に沿って、経済や政治の推移を眺めて行こうと思う。僕は早速、斎藤氏の近著を近所の本屋に発注した。みなさんも、時間が許せば、下記のリンクをクリックしてこの記事を読んでいただけるとありがたい。

 

(日経BPネット)

齋藤精一郎 デフレ突破のための「真の処方」は何か((

 

 

長文の記事が4つあるので、もう読み疲れた方は、下記の僕の意見は読み飛ばしていただいた方が良い。いや、4つも記事を読めないなあ、という方は、僕の見方で良ければ少しは下記が参考になるかもしれない。

 

 

<僕が頭に入れたポイント>(⇒ 僕の理解)

 

  • 現在のデフレの原因は新興国の台頭(⇒ 金融政策論議は、そろそろ脇へ退いてもらった方が良い)

 

  • 国の経済力の根本は製造業(⇒ イノベーションを起こす力)

 

  • 政府は企業の変化を邪魔しない(⇒ 旧産業構造の温存・保護政策はダメ、本来の役割に専念せよ)

 

  • 企業は真のグローバル化を(⇒ 「国ごとの顧客重視 vs グローバルを意識した製品開発」のバランス)

 

  • 根本は人材(⇒ グローバル人材とは、既成概念にとらわれない、オープン・マインドな人)

 

 

確かに今の株式相場の上昇は素晴らしいが、見事に金融相場になっている。個々の銘柄を見るとそう見えないかもしれないが、日経225などのインデックスは「為替レート+金融緩和期待」で動いている。為替レートも、結局、金融緩和期待(各国の政府債務問題を含む金利差やインフレ予想の変動)で動く。株価が上がると確かに気分が良いが、安心して良いわけではなさそうだ。実態がついてきていない。もう、金融政策論議は専門家と投資家の方々に任せておいて、実業に精を出してイノベーションを起こさないと、そのうち麻酔(アベノミクスの1の矢、2の矢)が切れて、さらにひどい痛みに悩まされることになる。

 

さて、麻酔が切れた時に、以下がどれだけ改善できているか。日本が変化できているか。

 

・農業生産者と生産・流通の仕組み、販路の拡大

 

誰か、日本の農産物の国際的なマーケティングができる人は現れないだろうか。本来は、「農業生産力の増進と農業者の経済的・社会的地位の向上を図るための協同組織」である農協が積極的に取組むべきだと思うが、あまりそういうイメージがない。農家など小規模事業者が不得手なそういうマーケティングや物流などを、農協に代わってできないだろうか。海外進出している流通業とか。

 

・企業のグローバル・ローカルな戦略

 

既によく言われていることだが、欧米の新興企業は起業の段階で世界を目指すという。中国や韓国でもそういう発想のようだ。有難いことに「日本製品は高品質(農産物も)」というブランド・イメージは健在だ。日本らしさ、というか、我社らしさをグローバルに、研究開発・生産・流通・販売のすべての面で発揮するにはどうすればよいか。経営理念を達成するための戦略的思考が必要だ。一方、顧客は多様性に富んでいる。ローカル対応も同様に重要だ(有料会員限定だが、日経電子版3/1の「お国柄を吸収する花王「ロリエ」、アジアに浸透」が面白い)。情報入手や現地での体制作りや維持をどうするか。主役は各個社で、リスクを取るのも各個社だが、商社や金融機関は、物流や金融という役割を超えた目利き力、サポート力が増々期待される。

 

・日本内外、企業内外のコミュニケーションのオープン化

 

日本や日本企業が良さを生かしきれないのは何故か。多分、既成概念や決め付けがたくさんあるのだと思う。その具体的なところを気が付かせてくれるのは多くの場合第三者、というのはみなさんも数多く経験されていると思う。この場合の第三者とは、今まであまり意見を頂戴してこなかった人々、即ち、部下、目下の人、部外者、社外、仕入先、異業種、異職種、外国人、そして顧客だ。但し、これらの人々は答えを持っているわけではない。だから単純に問いかけても答えは得られないし、場合によっては逆にワガママな要求を突き付けられる。だから、日常的に良好なコミュに―ションを取るなかで察知するのが良いと思う。しかしそれにはオープン・マインドなコミュニケーション能力が必要だ。これは企業だけでなく、国も同様だと思う。日本は、政府も国民も、意外と外国の言うことを聴いてないし、相手の立場に立った想像を巡らしてないような気がする。僕もそうだが・・・。

 

・政府は環境づくり

 

エネルギー確保、セイフティ・ネット構築・整備、CO2問題などの環境対策、諸外国との良好な関係作り(国防・外交)、治安維持。特にエネルギーについては、兆単位の予算が必要ではないかと思う。シェール・ガス革命が騒がれているが、地下3000メートルを横に掘り、岩の中の天然ガスや石油を取出すことができるぐらいなら、深海に眠るメタンハイドレートや希少金属を含む天然資源開発もそう難しくなく取り出せるのではないだろうか。政府は、官製ファンドで成長産業を育成するなどと意気込むより、シンプルに政府の課題、必要な事業に予算を使った方が、自然に必要な産業が育つような気がする。例えば、地熱・風力・太陽・バイオ、その他新エネルギー源の開発促進。5年、10年の単位で腰を据えて、かつ、研究開発を民間に競争させる方法はないだろうか。Wikipediaによれば、アメリカはアポロ計画に2005年当時の貨幣価値に換算して1,350億ドル(100/$としても135千億円)かけたという。でも、それで月へ行って帰ってきた。日本もエネルギーの自立ができないだろうか。いや、完全に自立すると貿易黒字がたくさん出て(円高になって)困るので、ほどほどで良い。それでも、化石燃料の輸入が減る分は、国内での調達に支出されるので、その分GDPが増加する。

 

ときどき、日本人は変化を嫌う保守的な国民と言われることがある。でも、さすがに第二次世界大戦後は高度成長ですっかり国土も生活も変わった。いま中国が悩まされている公害のような悪いこともあったが、それ以上に良いことがたくさんあったと思う。なにより、未来が明るいと思えていたのが良かった。もう一度そういう気持ちになりたいと願っている。しかし、それには自らが主体的に変化を起こす必要がある。そうすれば、安倍首相が頼まなくても、経営者は喜んでボーナスを弾んでくれるに違いない。

221.【金融緩和】デフレの本当の原因と対応~斎藤誠一郎氏

2013/3/3

言葉は役立つときとそうでないときがある。例えば、美しい景色を見たり、美味しい食事を食べたことを言葉にしても、ありきたりな表現になってしまい伝わらない。そういう時は「とにかく、行ってみて!」ということにして、言葉をクビにする。一方で、何かが頭に引っかかっていて、もやもやして気持ちの悪い時に、誰かがそれを上手に言葉にしてくれると、とてもスッキリする。ちょっと違うが、思い出せなかった固有名詞がぱっと思い浮かんだ時の気持ち良さが近いかもしれない。そういう時には言葉にボーナスを支給したい気分だ。

 

有難いことに後者の体験ができたので、みなさんにご紹介したい。

 

斎藤誠一郎氏をご存じだろうか。Nikkei BP netの紹介文によれば、「2012年まで24年間、「ワールドビジネスサテライト」(WBS、テレビ東京系)のコメンテーターを務める。」とされているが、僕はWBSを見たことがないので知らなかった(僕が住んでる地域ではテレビ東京は視聴できない)。

 

僕は、日経電子版に気になるタイトルのリンクを見つけて辿って読んでみたのだが、それが、その斎藤氏の記事だ。そして、これだ!っと思った。そうそう、こういうことだったと。僕は、当面この記事(4回シリーズ)の見方に沿って、経済や政治の推移を眺めて行こうと思う。僕は早速、斎藤氏の近著を近所の本屋に発注した。みなさんも、時間が許せば、下記のリンクをクリックしてこの記事を読んでいただけるとありがたい。

 

(日経BPネット)

齋藤精一郎 デフレ突破のための「真の処方」は何か((

 

 

長文の記事が4つあるので、もう読み疲れた方は、下記の僕の意見は読み飛ばしていただいた方が良い。いや、4つも記事を読めないなあ、という方は、僕の見方で良ければ少しは下記が参考になるかもしれない。

 

 

<僕が頭に入れたポイント>(⇒ 僕の理解)

 

  • 現在のデフレの原因は新興国の台頭(⇒ 金融政策論議は、そろそろ脇へ退いてもらった方が良い)

 

  • 国の経済力の根本は製造業(⇒ イノベーションを起こす力)

 

  • 政府は企業の変化を邪魔しない(⇒ 旧産業構造の温存・保護政策はダメ、本来の役割に専念せよ)

 

  • 企業は真のグローバル化を(⇒ 「国ごとの顧客重視 vs グローバルを意識した製品開発」のバランス)

 

  • 根本は人材(⇒ グローバル人材とは、既成概念にとらわれない、オープン・マインドな人)

 

 

確かに今の株式相場の上昇は素晴らしいが、見事に金融相場になっている。個々の銘柄を見るとそう見えないかもしれないが、日経225などのインデックスは「為替レート+金融緩和期待」で動いている。為替レートも、結局、金融緩和期待(各国の政府債務問題を含む金利差やインフレ予想の変動)で動く。株価が上がると確かに気分が良いが、安心して良いわけではなさそうだ。実態がついてきていない。もう、金融政策論議は専門家と投資家の方々に任せておいて、実業に精を出してイノベーションを起こさないと、そのうち麻酔(アベノミクスの1の矢、2の矢)が切れて、さらにひどい痛みに悩まされることになる。

 

さて、麻酔が切れた時に、以下がどれだけ改善できているか。日本が変化できているか。

 

・農業生産者と生産・流通の仕組み、販路の拡大

 

誰か、日本の農産物の国際的なマーケティングができる人は現れないだろうか。本来は、「農業生産力の増進と農業者の経済的・社会的地位の向上を図るための協同組織」である農協が積極的に取組むべきだと思うが、あまりそういうイメージがない。農家など小規模事業者が不得手なそういうマーケティングや物流などを、農協に代わってできないだろうか。海外進出している流通業とか。

 

・企業のグローバル・ローカルな戦略

 

既によく言われていることだが、欧米の新興企業は起業の段階で世界を目指すという。中国や韓国でもそういう発想のようだ。有難いことに「日本製品は高品質(農産物も)」というブランド・イメージは健在だ。日本らしさ、というか、我社らしさをグローバルに、研究開発・生産・流通・販売のすべての面で発揮するにはどうすればよいか。経営理念を達成するための戦略的思考が必要だ。一方、顧客は多様性に富んでいる。ローカル対応も同様に重要だ(有料会員限定だが、日経電子版3/1の「お国柄を吸収する花王「ロリエ」、アジアに浸透」が面白い)。情報入手や現地での体制作りや維持をどうするか。主役は各個社で、リスクを取るのも各個社だが、商社や金融機関は、物流や金融という役割を超えた目利き力、サポート力が増々期待される。

 

・日本内外、企業内外のコミュニケーションのオープン化

 

日本や日本企業が良さを生かしきれないのは何故か。多分、既成概念や決め付けがたくさんあるのだと思う。その具体的なところを気が付かせてくれるのは多くの場合第三者、というのはみなさんも数多く経験されていると思う。この場合の第三者とは、今まであまり意見を頂戴してこなかった人々、即ち、部下、目下の人、部外者、社外、仕入先、異業種、異職種、外国人、そして顧客だ。但し、これらの人々は答えを持っているわけではない。だから単純に問いかけても答えは得られないし、場合によっては逆にワガママな要求を突き付けられる。だから、日常的に良好なコミュに―ションを取るなかで察知するのが良いと思う。しかしそれにはオープン・マインドなコミュニケーション能力が必要だ。これは企業だけでなく、国も同様だと思う。日本は、政府も国民も、意外と外国の言うことを聴いてないし、相手の立場に立った想像を巡らしてないような気がする。僕もそうだが・・・。

 

・政府は環境づくり

 

エネルギー確保、セイフティ・ネット構築・整備、CO2問題などの環境対策、諸外国との良好な関係作り(国防・外交)、治安維持。特にエネルギーについては、兆単位の予算が必要ではないかと思う。シェール・ガス革命が騒がれているが、地下3000メートルを横に掘り、岩の中の天然ガスや石油を取出すことができるぐらいなら、深海に眠るメタンハイドレートや希少金属を含む天然資源開発もそう難しくなく取り出せるのではないだろうか。政府は、官製ファンドで成長産業を育成するなどと意気込むより、シンプルに政府の課題、必要な事業に予算を使った方が、自然に必要な産業が育つような気がする。例えば、地熱・風力・太陽・バイオ、その他新エネルギー源の開発促進。5年、10年の単位で腰を据えて、かつ、研究開発を民間に競争させる方法はないだろうか。Wikipediaによれば、アメリカはアポロ計画に2005年当時の貨幣価値に換算して1,350億ドル(100/$としても135千億円)かけたという。でも、それで月へ行って帰ってきた。日本もエネルギーの自立ができないだろうか。いや、完全に自立すると貿易黒字がたくさん出て(円高になって)困るので、ほどほどで良い。それでも、化石燃料の輸入が減る分は、国内での調達に支出されるので、その分GDPが増加する。

 

ときどき、日本人は変化を嫌う保守的な国民と言われることがある。でも、さすがに第二次世界大戦後は高度成長ですっかり国土も生活も変わった。いま中国が悩まされている公害のような悪いこともあったが、それ以上に良いことがたくさんあったと思う。なにより、未来が明るいと思えていたのが良かった。もう一度そういう気持ちになりたい。しかし、それには自らが主体的に変化を起こす必要がある。そうすれば、安倍首相が頼まなくても、経営者は喜んでボーナスを弾んでくれるに違いない。

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