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2013年5月10日 (金曜日)

243.【製造業】減損戻入~ここまでの振返り

2013/5/10

ゴールデンウィークあたりから、僕のところは、ちょっと涼しめの過ごしやすい気候が続いているが、みなさんのところはどうだろうか(昨日は真夏日のところもあったらしいが)。ここ数年、春や秋の気候が短く、すぐ暑くなったり、寒くなったりしていたが、今年は心地よい。

 

しかし、このブログはそんな穏やかな状況にない。減損や減損戻入の際に「固定資産台帳(=減価償却台帳)を個別資産ごとに修正する手間」という壁に突き当たり、縦パスを出したり、サイドに振ってドリブルを試みたり、センタリングをしたら逆サイドに突き抜けてしまったので、壁パスを2度もしたりと、相手ディフェンスを揺さぶろうと必死だ。だが、そろそろ、議論を収束させなければならない。そこで、今回はここまでの振返りをして、ラストパスの出しどころを探りたいと思う。

 

 

(きっかけ、目的)

 

オックスフォード・レポートのP119に次のような記載があって、減損戻入処理は、IFRSが日本の製造業に合わない理由の一つとされていた。(3/12の記事

 

事務作業を複雑にし、新たな減価償却を通じて原価計算・投下資金回収・マークアップ計算等に影響を及ぼす。

 

このうち、僕は「事務作業が複雑」というところに焦点を当てて書いてきた。というのは、その後の部分は、投資時から変化した新しい事業環境に合わせるために当たり前のことであり、その影響は経営にとって、或いは、投資家が見る数値にとって適切なものと思うので、何が問題か良く分からないからだ。

 

むしろ、日本基準が「“確実な減損の発生”のみを減損の対象にしている(≒減損戻入処理は禁止)」ことが、経営上遅すぎる減損認識となり、リスク認識と対応を遅らせ、多額の減損損失を生む一因になっているのではないかと心配している。IFRSのように、早めに減損を認識する(代わりに戻入もある)という扱いの方が、経営にマッチしていないか。早めにリスク対応ができて、結果的に減損損失の計上を減らすことができるのではないかと思っている。しかし、それには上記の「事務作業が複雑」という問題を解決する必要がある。(3/19の記事

 

 

(奇策とその問題点)

 

そこで僕が提案した奇策は、「減損損失(累計額)は、減損案件ごとの総額で、償却(戻入)スケジュールと減損理由を管理しよう(但し、償却資産に限る。)」ということだったが、日本基準もIFRSも、「個別資産に配分せよ(=固定資産台帳を修正せよ)」と言っているようだ。(3/22の記事

 

しかし、この奇策は、IFRSの規程「個別資産に配分せよ」に合わないようだし、なぜそのような規程になっているか理由を想像してみると、奇策には次のような問題があった。

 

A.(個別資産に配分すれば)減損時は事務負担が大きいが、それ以降は事務負担がない。奇策には負担が残る。

 

B. 除却、移動時に減損損失累計額の個別資産ごとの明細が必要だが、奇策ではその明細がない。

 

C. 奇策では、減損損失累計額の取崩スケジュールの計算が大変。

 

D. 減損は資産評価手続だから、個別資産ごとに評価額を持つことが自然だが、奇策だとそれがない。

 

E. 奇策では、減損損失累計額は、明細不明で管理不能の危ない勘定になる可能性がある。

 (3/26の記事

 

 

(問題点に対する解決策の模索)

 

ここで困ってしまったが、簡単に諦めずに、そもそも「減損会計とは何か」へ立ち戻って考えてみることにした。(3/284/2の記事) その結果得られた成果は次のようなものだった。

 

  • 減損はビジネス(≒自己創設のれん)評価手続であり、個別資産の評価手続ではない。(4/9の記事

 

  • 個別資産に減損損失を配分する手続は、減損会計のために行われるのではなく、減損後の減価償却費を適正にするための要求であるらしい。(4/9の記事

 

  • IFRSでは減価償却の「手続・プロセス」より「計算結果(=消費パターンの反映)」の方が重要。(4/16の記事

 

  • 即ち、計算結果が同じになるなら、或いは、近似するなら、計算単位(≒個別資産か否か)や償却方法等の減価償却の前提項目(=会計上の見積り項目)は、ある程度柔軟に決められる。(4/164/19の記事

 

  • 耐用年数は、事業のライフ・サイクルに関連するが、特に減損を認識するような事業の場合は耐用年数の見直しが必要なことが多いはず。その結果、多くの資産は同じ“残存”耐用年数になる可能性がある。(4/224/25の記事

 

但し、耐用年数の変更は自主耐用年数の設定に繋がるので、ここでも「税務上の固定資産台帳と会計上の固定資産台帳」という二重帳簿の管理が発生する。そこで、自主耐用年数の設定にどんな意味があるのか、経営上の重要性があるのかについて検討してみた。僕としては、特に近年の環境変化に対応するため経営戦略に関連した重要事項であり、手間の問題ではないと考えたいが、決め付けることもできないので、「壁パス」が戻ってくることを期待して、みなさんにボールを預けた。ついでに、その手間を省けるよう税制側の対応(=トライアングル体制、確定決算主義の正式な放棄?)への要望を企業会計審議会で検討してほしいとも書いた。(4/295/2の記事

 

 

以上が、これまでの振返りだが、あとは、これで僕の奇策の問題点が解決できたのかどうか、固定資産台帳の個別資産の簿価修正が回避できるのかどうかについて、最後の考察を行う段階に来ている。ということで、さあ、果たして良いラストパスが出せるかどうか、乞うご期待。

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