245.【製造業】減損戻入~固定資産台帳の修正を最小に!(ラスト・パス)
2013/5/16
前回は「タイム!」させてもらったが、いよいよ、その時間をもらった成果をご覧にいれたい。やはり諦めないことは重要だ。どこかに道はあるものだ。
・・・っという書き出しで、みなさんの期待を煽ってみたが、果たして満足いただけるかどうかは分からない。そこで、まずは概略を記載し、興味を持たれた方がその後のディーテールに入っていけるような形式で記載しようと思う。
<概略>
これは、固定資産台帳はそのままにして、減損やその戻入に係る一切の会計処理を、減損損失累計額だけで済ませてしまおうという方法だ(場合によっては減価償却累計額も動かす)。減損損失累計額(及び減価償却累計額)は、下記Aの単位以上に細分化しないので、普通であればスプレッド・シートでも管理可能なはずだし、減損戻入を行う場合も、ちょちょいとそれをいじれば済む。税効果会計の税務上の加減算項目を(回収可能性を考慮しながら)管理するよりず~っと楽だろうと思う。くどいが、固定資産台帳には触らない。(但し、触った方が良いケースもあるかもしれない。) ということで、IFRSの減損戻入にも怯むことはない。
「経営戦略に応じて自主耐用年数を設定せよとか、面倒なことを色々書いてたくせに、減損損失累計額勘定だけでそんなことが可能なのか」、と思われた方もいらっしゃると思う。確かにそう、万能ではないのだが、それでも可能性を広げてくれたのが、上記の「償却可能額」への着目と、それを資産グループ単位(≒原価管理単位)で扱うというアイディアだ。僕の奇策では、減損損失累計額の戻入スケジュールを計算するのが面倒になる可能性があったが、このアイディアを利用すればそうでもない。しかし、確定決算主義の税制の下では、やはり面倒になるケースも出てくる。
<奇策の改定版のポイント>
A.減損損失累計額は、資金生成単位(=資産グループ、≒原価管理単位)ごとの勘定科目、及び、減損理由ごとに管理し、固定資産台帳上の個別資産には配分しない(=なるべく固定資産台帳の簿価を修正しない)。減損を戻入れる場合も、減損損失累計額を戻すだけで良い。
B.減損損失累計額の戻入のスケジュールは、Aの単位の減損時点の「償却可能額の集計値」が適正に減損後の各期に配分されるよう決定する。(「減損損失累計額の戻入=固定資産台帳の減価償却費-減損後の減価償却費」の関係を利用して、減損損失累計額の戻入スケジュールを、減損後の適正な減価償却費と固定資産台帳の減価償却費から逆算する。)
C.減損損失を計上する場合や減損の戻入を行う場合は、減価償却の前提となる会計上の見積り(減価償却方法、残存耐用年数、最終処分価額等)を見直す。(もちろん、必要ならば、だが。)
D.減損した一部の(重要性のない)資産を移動・除却する場合は、普通に固定資産台帳を修正するだけで、減損損失累計額には触れない。但し、「それでは基準と齟齬がある」という指摘を回避できないとか、重要な資産である場合は別だ。その時点の「償却可能額」比率で、除却・移動する資産に対応する減損損失累計額を算定することで対応する。
Aは、当初の僕の奇策とほとんど変わらない。唯一、“勘定科目”が入ったが、これは書かなかっただけで、B/S開示上当然必要な要件だから、改定版と言っても基本的な内容は変わらないと言ってよい。
だとすれば、「なにが変わったのか?」ということになるが、B~Dが改善されたことだ。その秘密は「償却可能額」に着目したことにある。みなさんはご記憶にあるだろうか。4/16の記事で「(IFRSでは)簿価は、減価償却と直接関係ない。」とされていたことを。じゃあ、なんと関係するかというと、この「償却可能額」だった。恐らく、どなたも「そんなこと覚えてないよ」と言われると思うが、僕はなんとなく頭に引っかかっていた。「言われてみれば確かにそうだ、なるほどね・・・」と。ただ、その時点では「それが?」という感じでもあった。しかし、ここに屈強なディフェンダーを突破する鍵があったのだ。
ということで、細かいことは次回以降追々説明するので、興味を持たれた方はご期待ください。
もちろん、この方法にもメリットがあれば、ディメリットもある。例えば、常に監査人がOKするかどうかは保証できない。税務上の対応も必要かもしれない。各社の置かれた状況の差もあるし、僕は、この方法が常に有効とは思わない。しかしその一方で、IFRSだけでなく、日本基準でも使えるんじゃないかと思ったりもする。
さあ、みなさんはどう思われるか。もし気に入られたら、それを実務に落し込むのは、みなさんということになる。僕ができるのはラスト・パスまで。ゴールを決めるのはみなさんだ。
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