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2013年5月23日 (木曜日)

248.【製造業】減損損失累計額を動かさないことで生じるマイナスの減価償却費

2013/5/23

今回は、前回(5/22の記事)の最後に記載した「マイナスの減価償却費」について考えてみたい。実は、前回の記事を書いている途中でこの問題に気が付いたのだが、そこで筆が止まってしまった。もしこの問題がなければ前回の記事は一日に早く公開できていたのだ。「マイナスの減価償却費」なんて悩ましい。

 

 

(マイナスの減価償却費が発生するケース)

 

まずは、なぜ減価償却費がマイナスになるかを説明しよう。

 

5/16の記事に記載した式を直すと、減損後の減価償却費と減損損失戻入額の間には次のような関係がある。

 

減損後の減価償却費=固定資産台帳の減価償却費-減損損失累計額の戻入

 

即ち、固定資産台帳で計算される減価償却費より、減損損失累計額の戻入が大きい場合は、マイナスの減価償却費が計上されることになる。固定資産台帳上は、個別資産の簿価を修正しないので、減損前と同様の大きな金額の減価償却費が計算される。であれば、減損損失累計額の戻入より小さいなどと言うことはありえない、と思われた方も多いと思う。その通り。但し、個別資産を移動・除却しても、減損損失累計額を動かさない場合は、下記のように(珍しいケースだとは思うが)起こり得る。

 

◆ 資産グループを残存価額(=最終処分見込額)まで減損した。

 

◆ 移動・除却した資産の簿価が大きいため、残った資産の償却可能額が減損損失累計額を下回る。

 

例外的であっても、こんなことが起こるのはおかしい。だから、資産を移動・除却したら、それが重要であろうがなかろうが、対応する減損損失累計額も一緒に動かせばよいではないか。こう思われた方もいらっしゃると思う。なるほどその通りだ。もし、監査先の方にそうしたいと言われたら、監査人としての僕は反対はしないと思う。その方が、IFRSの“比例配分”規程にも合っている。

 

だが、マイナスの減価償却費になる可能性がある、即ち、固定資産台帳上の減価償却費より、減損損失累計額の戻入の方が大きくなる可能性があるというのは、減損会計の性格の一面を良く示す現象だと僕は思う。どういう一面かというと、前回も記載したように、減損会計は直接対象資産グループの評価をしているのではなく、その資産グループに関連しているビジネスに対する評価を行うことで、間接的に資産グループを評価を行っているということだ。だから、対象資産グループの簿価や償却可能額と、減損損失累計額は、独立している。両者が逆転することも、概念的にはあり得る。

 

 

(改めて、減損会計の性質)

 

減損が生じる原因は、前回の記事にも書いたように、例えば、“新興国の予想を超える生産力・技術力の向上による当社製品の競争力低下”、“東日本大震災を機会に顧客が調達を多様化し、当社製品需要が減少”、“顧客ニーズの調査・把握が不十分で売上予想を読み違え”といったようなことになる。これらは、対象資産グループ自体より、その対象資産グループを使ってビジネスをやろうとした“人の判断・行為”に強く関連していることが多い。

 

例えると、減損会計は、「このパターは入らないから、価値が低い」と言っているようなもので、周りの人から見れば、「パターより腕でしょ」ということになる(僕はそう言われる)。減損会計で、将来キャッシュフローを見積もり回収可能額を算定するのは、実は“腕”(=自己創設のれん)を評価しているのであり、それを“パター”の評価へ流用している。間接的に利用している。

 

即ち、元々のパターの価値は購入対価から減価償却累計額を控除した固定資産台帳の簿価だが、そこから腕を考慮(=減損損失累計額を控除)した会計上の簿価こそが、“僕のパター”の価値となる。しかし、パターの価値と腕の評価は本来別ものだから、両者の関係がおかしくなることもあり得るわけだ。即ち、元々のパターの評価より腕の(悪さ)の評価が勝ってしまい、それに気づかない本人は購入した店に文句を言う(僕はここまで下手ではない)。

 

 

(マイナスの減価償却費の処理)

 

では、マイナスの減価償却費を認めるか。僕は、これには否だ(=マイナスの減価償却費は認めない)。

 

減損会計は、“腕”を評価しているが、“腕”は自己創設のれんなのでそもそもB/Sに計上されない。やはり最終的には、パター(=資産グループ)を評価する手続だ。パターにゼロを下回る評価、残存価額を下回る評価をつけることはない(≒店員に文句を言わない)。したがって、マイナスの減価償却費もあり得ない。

 

ということで、資産グループの減価償却費がマイナスになる場合は、減損損失累計額を動かして、そうなることを防がなければならないと僕は思う。

 

その場合、除却であれば固定資産台帳上の除却損と対応する減損損失累計額を相殺して、会計上の除却損とすれば良い。しかし、移動の場合は処理が異なる。「減損会計はビジネス評価」という性質を優先すれば、移動した資産は、固定資産台帳上の簿価で移動処理を行い、対応する減損損失累計額は、会計上の見積りの修正ということで、その期の利益にするよりほかはないと思う。

 

 

ただ、上記に示した減価償却費がマイナスになる例は、パターでシャンクするぐらいに珍しい、現実にはあまりないケースではないかと思う。なぜなら、不要な、或いは有用性の低い資産を移動するなんて、そんな無駄を省くレベルのコストセーブ策は、日常的な投資回収管理の中で(というか損益管理のレベルだが)、減損になる前にやっておくべきことだからだ。減損してからようやくこのアイディアが出てくる状況なら、リスク管理の在り方を改善すべきかもしれない(まさにパターでシャンクするレベルかも)。

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