« 248.【製造業】減損損失累計額を動かさないことで生じるマイナスの減価償却費 | トップページ | 250.【製造業】減損後の償却可能額と事業計画 »

2013年5月28日 (火曜日)

249.【製造業】減損後の減価償却と問題点のA、C

2013/5/28

東京株式市場は、ご存じの通り、乱高下して大変なことになっている。こういう姿を見ると、市場価格の代名詞のような株式市場価格さえ、絶対ではないことが良く分かる。株式市場価格も、一定の制約(=一時点)のもとにおける「公正価値」であり、絶対の信頼を置けるものではない。

 

ただ、「大変なことになっている」といっても引いて眺めれば、今のところは10%程度の価格の下落であり、しかも十数年ぶりとか、四十年ぶりとかいう稀な変動なので、一般的な“見積りの精度”としては悪くはないのではないだろうか。(株式市場のような活発な取引のある市場価格に“見積り”という言葉を使うのは、IASBの公式見解とは違うかもしれない。また、「見積もりとはそんないい加減なものか!」と多くのみなさんからお叱りを受けるかもしれない。これについては何れにか取上げる機会があると思う。)

 

というわけで、今回からは減価償却という「償却可能額を会計上の各期間に配分する(見積り)手法」について、僕の奇策(改訂版)の問題点 AC の関わりから深掘りしていく。まずは5/10の振返りの記事から、その問題点 AC を再掲しよう。

 

A.(個別資産に配分すれば)減損時は事務負担が大きいが、それ以降は事務負担がない。奇策には負担が残る。

 

C. 奇策では、減損損失累計額の取崩スケジュールの計算が大変。

 

要は、「減損後の減価償却手続が面倒になるなら、個別簿価を修正した方がマシ」ということだが、減価償却を深掘りすることで、面倒になりませんよ、という主張をこれからしていきたい。

 

 

 

上述の5/10の記事にあるように、すでに、これについてもいくつか調べがついている。以下の3点だ。

 

 ◆ 減価償却単位も見積り項目(状況に合わせて変更可能)。

 

 ◆ 減価償却は消費パターンを反映するよう計算する。

 

 ◆ 計算結果が重要で、近似していれば計算プロセスには拘らない。

 

そして、対象事業のライフ・サイクルも踏まえた事業計画とここまでの数回で強調していた「償却可能額」が、これらに絡んでくる。果たして、僕の奇策(改訂版 5/16の記事)にある「減損損失累計額の戻入=固定資産台帳の減価償却費-減損後の減価償却費」の関係を利用すると、面倒なことなく、減損・減損戻入の実務が行えるか。

 

勘の鋭い方はこの式を見て、通常は答えになるべき「減損後の減価償却費」が右辺に来ていることにお気付きだろう。そう、先にこれを計算し、減損損失累計額の戻入スケジュールを「逆算する」ことを考えている。最初のポイントは、「減損後の減価償却費」を、如何に簡単、かつ、合理的に算出するかだ。

 

そして次に「固定資産台帳の減価償却費」が計算できればこの式は成立する。しかし、これも簡単ではない。通常、予算策定のために翌年の減価償却計算は行われるかもしれないが、「減損損失累計額の戻入スケジュールを逆算する」には数年分の計算が必要になる。これをどうするかが次のポイントになる。

 

 

 

この2点について先に議論を要約すると、次のようになる。

 

「減損後の減価償却費」は、回収可能額算定に利用した将来キャッシュフローの見積りの前提となる事業計画を利用する。そしてこの事業計画はIFRSでは原則5年以内であることから、5年以内の事業売却を想定した、即ち、事業のライフ・サイクルを見据えたものになっているはず。但し、将来キャッシュフローの見積りに減価償却費は不要だから、減価償却費はこの事業計画にないかもしれない。あっても減損前の減価償却費である可能性が高い。したがって「減損後の減価償却費」は、別途計算が必要となる可能性が高い。その点を詳しく検討したい。

 

しかし僕の奇策では、年々の減価償却費を資産グループ単位で計算するので、その事業計画期間を通した償却可能額がいくらか、即ち、「減損直後の簿価-残存価額」を、資産グループ単位の合計額で把握すれば、あとは各年度に配分するだけだから、それほど手間がかからず算定できるはずだ。残存価額は事業の売却額(事業計画に想定されている)から算定できるから、あとは減価償却方法を決めれば、答えはもう出たようなものだ。事業の売却額については、上記の通り事業計画に想定されているものであるし、すでに3/28の記事(のれんの減損に関連した資産売却額の見積り)にも記載しているので、ここではそれを補足できることがあれば、何か記載する程度にしたい。

 

また、「固定資産台帳の減価償却費」は、厳密な計算は不要ではないかと思う。現状では多くの会社が「固定資産台帳の減価償却費」を税務上の減価償却費としているから、厳密に正確に計算しなければならないとイメージする方が多いかもしれない。しかし、ここでは「減損損失累計額の戻入スケジュールを計算する」ための精度があれば良い。ここで計算する「固定資産台帳の減価償却費」は、実際には税務申告には直接関係ない。したがって、「固定資産台帳の減価償却費」も、資産グループ単位の計算が可能と思う。これについても、後日、より詳細に検討したい。

 

 

 

ということで、凡そのイメージはご理解いただけただろうか。「なんだか良く分からんが、興味を持った」と思われた方がいらっしゃれば幸いだ。「分かった。もう十分だ。」という方は残念だが、次回以降はさらにくどくなるので、飛ばしていただいた方が良いかもしれない。

 

なお、僕の悪い頭はそろそろこんがらがってきているし、税務が絡むところなので、あまり間違ってもいけない。あとの記事を書きながら間違いに気付いたら、この記事を大幅に修正するかもしれないが、そうなったらご勘弁願いたい。また、間違いに気付いた方は、遠慮なくご指摘いただけるとありがたい。

« 248.【製造業】減損損失累計額を動かさないことで生じるマイナスの減価償却費 | トップページ | 250.【製造業】減損後の償却可能額と事業計画 »

企業会計審議会(IFRS)」カテゴリの記事

IFRS個別基準」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 249.【製造業】減損後の減価償却と問題点のA、C:

« 248.【製造業】減損損失累計額を動かさないことで生じるマイナスの減価償却費 | トップページ | 250.【製造業】減損後の償却可能額と事業計画 »

2023年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
無料ブログはココログ