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2013年5月

2013年5月30日 (木曜日)

250.【製造業】減損後の償却可能額と事業計画

2013/5/30

今年も梅雨が来た。「入梅が早いですね~」とあちこちで挨拶代わりに言われているだろう。「でも、IFRSは遅いですね~」というのも使われているかもしれない。そう、まずは導入期限を決めずに、任意適用会社を増やすのだそうだ。そして「日本企業が受入れやすいように、一部規準をカーブアウトした日本版IFRSを・・・」などという案もあるらしい。どこでどんな綱引きが行われているのか知らないが、企業経営でも国の制度設計でも、方向性とスケジュール観が見えないのが、関係者にとって一番苛立たしいのではないだろうか。

 

とはいえ、IFRSを導入すれば経営が改善する、製造業が元気になる、ひいては、日本経済が戻ってくるという単純なものではない。もちろん、誰もそう考えてないだろう。会計は道具であり、道具を使って何をするかこそが、本当の問題だ。

 

 「IFRSを使って何を実現するか」 

 

今は、これを各社がじっくり考えるとき、ということかもしれない。

 

僕のお勧めは、会計と事業計画管理の融合、会計とリスク管理・経営のさらなる一体化だ。旧来の「事業計画と実績の会計処理を合わせておけばよい」などという形式的な関係ではない。当たり前のことだが(きっと多くはできてない)、意思決定プロセスを、経営と会計で完全に共通化・共有することだ。そうすれば、両者はともに機能アップし、かつ、合理化されるに違いない。(会計は経営の道具なので、それが本来の姿のはずだが・・・)

 

というわけで、これにピッタリなテーマである減損戻入シリーズに戻りたい。

 

 

前回(5/28は、減損後の減価償却手続を、固定資産台帳の個別修正なしに実施する方法について、下記の式と、右辺の2つの項に関するそれぞれのポイントを記載した。

 

減損損失累計額の戻入=固定資産台帳の減価償却費-減損後の減価償却費

 

今回は、その1つ目のポイント、「減損後の減価償却費」を深掘りしたい。その要点は、減損後の減価償却費は減損テストの元になった事業計画から簡単に算定できるという主張だった。ここまでは復習で、ここから今回の本題に入ろう。

 

 

 

くどいが、減価償却費は、資産の償却可能額を各期に配分した金額だ。その償却可能額は、「取得価額-残存価額」で求められ、各期への配分は資産の消費パターンを反映した定額法、定率法等の「減価償却方法」で決まる。したがって、事業計画や減損テストのプロセスから取得価額、残存価額、減価償却方法を決めるデータが取れればよい。さて、どうやって取るか。

 

(取得価額)

これは、減損後の簿価が相当する。資産グループ単位で、減損前簿価と減損損失額が分かれば良い。これらが分かるのは当然だから、特に説明は不要だろう。

 

 

(残存価額)

IFRSの減損会計では、将来キャッシュフローの見積りには原則として5年以内の事業計画に基づく。仮に5年として話を進めると、対象事業を5年以上続ける予定であっても、将来キャッシュフローは5年分+5年後の事業(或いは、個別資産)の売却収入を見込むことになる。この売却収入が残存価額だ(資産除去債務も考慮する)。

 

これには2種類が考えられる。1つ目は、資産グループをまとめて売却した場合の売却額、若しくはこの資産グループを含むより大きな括りの事業を売却したときの、この資産グループ分に相当する売却額。2つ目は、この資産グループに属する個々の資産の最終処分額、例えば、中古資産や金属屑としての売却価値。この2つ目の残存価額は通常ゼロか、特に売却価値のあるものはそれを使えばよいので、あまり問題はないと思う。重要なのは1つ目だ。

 

1つ目は、通常、市場価額はないので見積りになる。その方法は前回も記載したように、すでに3/28の記事(のれんの減損に関連した資産売却額の見積り)に記載した。そこで強調したのは、自社の事業に、顧客や競合企業などの他者目線を持ち込み、現場を巻き込んで、普通では気が付かないような価値を、或いは、大胆な発想の転換と改善点を見つけよう、ということだった。本来は、こういう分析と理解が事業計画作成の前提だ。事業計画があるということは、その事業計画終了段階での事業価値が見えている、という状況が元々望まれるのだし、IFRSの減損会計は、それを要求している。IFRSには、こういう投資回収管理の発想が根底にある。だから、減損テストの過程で売却収入の見積り、即ち、残存価額も算定されているわけだ。

 

投資回収管理の話は何度も書いているので、くどくて申し訳ないが、日本の減損会計とも、そして損益管理中心の日本の経営管理とも、大きく違うところだと思うので強調したい、という趣旨をご理解いただきたい。

 

 

 

ところで、神戸製鋼所が185億円の減損損失を計上すると29日に公表した。なぜこの時期に(=なぜ前期決算に織り込まないのか)、という疑問はあるが、中期経営計画の策定・改定とともに減損の意思決定がなされるというのは、減損会計と経営が密接に関連していることを示す良い例だ。(恐らく上記疑問の答えは、中期経営計画の策定・改定が遅いとか、日常的な経営管理が損益管理的で、投資回収管理が不十分なせいだろう。だから前期決算に意思決定に間に合わなかったのではないか。僕が株主であれば、リスク管理と意思決定手続きについて、スピードに問題がないか問うてみたい気がする。また、そんなことはないとは思うが、もし、保有株式売却の特別利益239億円の計上とタイミングを合わせたということであれば、本末転倒だ。)

 

記事(日経電子版の有料記事)を読むと、神戸製鋼所の川崎社長は10年後までを見据えて高炉を止め、減損を決めている。このまま高炉を維持しても事業価値を生まないとの判断だ。減損とは、単に2期連続して事業が赤字になったなどと、損益管理の発想で形式的・機械的に決められるものではなく、このような経営者の事業に対する長期志向のリスク管理の成果が基礎となる。

 

但し、高炉休止理由として、「(鉄鋼事業が)2期連続の赤字になったことも大きな理由だ。」とあり、この「連続赤字」は日本基準の減損の兆候の要件を想起させる。もし、「連続赤字 ⇒ 減損 ⇒ 高炉休止」という思考経路であったとすれば、「経営者が減損会計に使われている」ことになる。これでは心許ない。

 

しかし、この社長の発言の趣旨はそうではなさそうだ。むしろ「長期的な事業展望と投資回収判断 ⇒ 高炉休止 ⇒ 減損」ではないか。それを裏付けるのは「社長に就任する前から経営企画の一員として休止を考えていた」と述べていることだ。恐らく、「経営者が減損会計を使って」投資回収管理を行っていた、と言えると思う。もしそうであれば、「長期的な事業展望と投資回収判断」は、経営と減損会計の共通の判断基礎として共有されている、と言えそうだ。

 

経営上、事業計画を作るということは、単に数年分のP/Lを並べれば良いということではないと思う。その後のこと、投資回収までの見通しを踏まえたリスク管理が要求されていると考えるべきだと思う。そして、IFRSではそういうリスク管理と減損会計が一体となった内部統制が想定されている。特に減損が想定されるような資産グループについては、5年以内の事業売却・撤退の可能性も選択肢に含めて、戦略的に対応が検討されているだろうと。

 

 

ということで、IFRSで減損テストを行ったのであれば(=会社がIFRSが想定するリスク管理、投資回収管理を行っているのであれば)、取得価額と残存価額は容易に求められるから、償却可能額も同様に容易に算定できる。(念のために説明を加えると、僕の奇策は資産グループをまとめて扱うから、取得価額や残存価額は個別資産ごとに計算する必要はない。資産グループ合計額があれば良いから求めるのは容易だろう。)

 

ちなみに、事業のライフ・サイクルを見直して自主耐用年数を設定しても、償却可能額の計算は上記と何も変わらない。例えば、ライフ・サイクルの想定を見直して、残存耐用年数を一律5年に変更したとすれば、残存価額がゼロになって、その分償却可能額が大きくなる。残存耐用年数が3年になったとすれば、事業計画の期間を3年とすれば良い。必要に応じて自由に変更できるし、変更しないでそのまま各資産バラバラの残存耐用年数を引継ぐこともできる。ただ、事業計画より残存耐用年数が長い場合は、資産グループや事業の売却額を算定する際に利用する将来キャッシュフローの期間の長さに影響するので、両者が整合するよう注意が必要だ。もちろん、長いことに対する合理的な説明も必要だ。

 

 

さて、これで減損後の償却可能額が算定できることが分かったから、あとはそれを各期に配分するための減価償却方法が決まれば、「減損後の減価償却費」を算定できる。その減価償却方法については、次回にしたい。

 

 

なお、3/14の記事「226.【製造業】再評価モデルの存在意義~社会背景と会計処理」に、「本社ビルを建てると会社が傾く」というジンクスを記載したが、米国にも同様のジンクスがあるというロイターの記事(5/29)を見つけた。この3/14の記事の冒頭に、そのロイターの記事へのリンクを貼り付けたので、ご関心のある方はどうぞ。

2013年5月28日 (火曜日)

249.【製造業】減損後の減価償却と問題点のA、C

2013/5/28

東京株式市場は、ご存じの通り、乱高下して大変なことになっている。こういう姿を見ると、市場価格の代名詞のような株式市場価格さえ、絶対ではないことが良く分かる。株式市場価格も、一定の制約(=一時点)のもとにおける「公正価値」であり、絶対の信頼を置けるものではない。

 

ただ、「大変なことになっている」といっても引いて眺めれば、今のところは10%程度の価格の下落であり、しかも十数年ぶりとか、四十年ぶりとかいう稀な変動なので、一般的な“見積りの精度”としては悪くはないのではないだろうか。(株式市場のような活発な取引のある市場価格に“見積り”という言葉を使うのは、IASBの公式見解とは違うかもしれない。また、「見積もりとはそんないい加減なものか!」と多くのみなさんからお叱りを受けるかもしれない。これについては何れにか取上げる機会があると思う。)

 

というわけで、今回からは減価償却という「償却可能額を会計上の各期間に配分する(見積り)手法」について、僕の奇策(改訂版)の問題点 AC の関わりから深掘りしていく。まずは5/10の振返りの記事から、その問題点 AC を再掲しよう。

 

A.(個別資産に配分すれば)減損時は事務負担が大きいが、それ以降は事務負担がない。奇策には負担が残る。

 

C. 奇策では、減損損失累計額の取崩スケジュールの計算が大変。

 

要は、「減損後の減価償却手続が面倒になるなら、個別簿価を修正した方がマシ」ということだが、減価償却を深掘りすることで、面倒になりませんよ、という主張をこれからしていきたい。

 

 

 

上述の5/10の記事にあるように、すでに、これについてもいくつか調べがついている。以下の3点だ。

 

 ◆ 減価償却単位も見積り項目(状況に合わせて変更可能)。

 

 ◆ 減価償却は消費パターンを反映するよう計算する。

 

 ◆ 計算結果が重要で、近似していれば計算プロセスには拘らない。

 

そして、対象事業のライフ・サイクルも踏まえた事業計画とここまでの数回で強調していた「償却可能額」が、これらに絡んでくる。果たして、僕の奇策(改訂版 5/16の記事)にある「減損損失累計額の戻入=固定資産台帳の減価償却費-減損後の減価償却費」の関係を利用すると、面倒なことなく、減損・減損戻入の実務が行えるか。

 

勘の鋭い方はこの式を見て、通常は答えになるべき「減損後の減価償却費」が右辺に来ていることにお気付きだろう。そう、先にこれを計算し、減損損失累計額の戻入スケジュールを「逆算する」ことを考えている。最初のポイントは、「減損後の減価償却費」を、如何に簡単、かつ、合理的に算出するかだ。

 

そして次に「固定資産台帳の減価償却費」が計算できればこの式は成立する。しかし、これも簡単ではない。通常、予算策定のために翌年の減価償却計算は行われるかもしれないが、「減損損失累計額の戻入スケジュールを逆算する」には数年分の計算が必要になる。これをどうするかが次のポイントになる。

 

 

 

この2点について先に議論を要約すると、次のようになる。

 

「減損後の減価償却費」は、回収可能額算定に利用した将来キャッシュフローの見積りの前提となる事業計画を利用する。そしてこの事業計画はIFRSでは原則5年以内であることから、5年以内の事業売却を想定した、即ち、事業のライフ・サイクルを見据えたものになっているはず。但し、将来キャッシュフローの見積りに減価償却費は不要だから、減価償却費はこの事業計画にないかもしれない。あっても減損前の減価償却費である可能性が高い。したがって「減損後の減価償却費」は、別途計算が必要となる可能性が高い。その点を詳しく検討したい。

 

しかし僕の奇策では、年々の減価償却費を資産グループ単位で計算するので、その事業計画期間を通した償却可能額がいくらか、即ち、「減損直後の簿価-残存価額」を、資産グループ単位の合計額で把握すれば、あとは各年度に配分するだけだから、それほど手間がかからず算定できるはずだ。残存価額は事業の売却額(事業計画に想定されている)から算定できるから、あとは減価償却方法を決めれば、答えはもう出たようなものだ。事業の売却額については、上記の通り事業計画に想定されているものであるし、すでに3/28の記事(のれんの減損に関連した資産売却額の見積り)にも記載しているので、ここではそれを補足できることがあれば、何か記載する程度にしたい。

 

また、「固定資産台帳の減価償却費」は、厳密な計算は不要ではないかと思う。現状では多くの会社が「固定資産台帳の減価償却費」を税務上の減価償却費としているから、厳密に正確に計算しなければならないとイメージする方が多いかもしれない。しかし、ここでは「減損損失累計額の戻入スケジュールを計算する」ための精度があれば良い。ここで計算する「固定資産台帳の減価償却費」は、実際には税務申告には直接関係ない。したがって、「固定資産台帳の減価償却費」も、資産グループ単位の計算が可能と思う。これについても、後日、より詳細に検討したい。

 

 

 

ということで、凡そのイメージはご理解いただけただろうか。「なんだか良く分からんが、興味を持った」と思われた方がいらっしゃれば幸いだ。「分かった。もう十分だ。」という方は残念だが、次回以降はさらにくどくなるので、飛ばしていただいた方が良いかもしれない。

 

なお、僕の悪い頭はそろそろこんがらがってきているし、税務が絡むところなので、あまり間違ってもいけない。あとの記事を書きながら間違いに気付いたら、この記事を大幅に修正するかもしれないが、そうなったらご勘弁願いたい。また、間違いに気付いた方は、遠慮なくご指摘いただけるとありがたい。

2013年5月23日 (木曜日)

248.【製造業】減損損失累計額を動かさないことで生じるマイナスの減価償却費

2013/5/23

今回は、前回(5/22の記事)の最後に記載した「マイナスの減価償却費」について考えてみたい。実は、前回の記事を書いている途中でこの問題に気が付いたのだが、そこで筆が止まってしまった。もしこの問題がなければ前回の記事は一日に早く公開できていたのだ。「マイナスの減価償却費」なんて悩ましい。

 

 

(マイナスの減価償却費が発生するケース)

 

まずは、なぜ減価償却費がマイナスになるかを説明しよう。

 

5/16の記事に記載した式を直すと、減損後の減価償却費と減損損失戻入額の間には次のような関係がある。

 

減損後の減価償却費=固定資産台帳の減価償却費-減損損失累計額の戻入

 

即ち、固定資産台帳で計算される減価償却費より、減損損失累計額の戻入が大きい場合は、マイナスの減価償却費が計上されることになる。固定資産台帳上は、個別資産の簿価を修正しないので、減損前と同様の大きな金額の減価償却費が計算される。であれば、減損損失累計額の戻入より小さいなどと言うことはありえない、と思われた方も多いと思う。その通り。但し、個別資産を移動・除却しても、減損損失累計額を動かさない場合は、下記のように(珍しいケースだとは思うが)起こり得る。

 

◆ 資産グループを残存価額(=最終処分見込額)まで減損した。

 

◆ 移動・除却した資産の簿価が大きいため、残った資産の償却可能額が減損損失累計額を下回る。

 

例外的であっても、こんなことが起こるのはおかしい。だから、資産を移動・除却したら、それが重要であろうがなかろうが、対応する減損損失累計額も一緒に動かせばよいではないか。こう思われた方もいらっしゃると思う。なるほどその通りだ。もし、監査先の方にそうしたいと言われたら、監査人としての僕は反対はしないと思う。その方が、IFRSの“比例配分”規程にも合っている。

 

だが、マイナスの減価償却費になる可能性がある、即ち、固定資産台帳上の減価償却費より、減損損失累計額の戻入の方が大きくなる可能性があるというのは、減損会計の性格の一面を良く示す現象だと僕は思う。どういう一面かというと、前回も記載したように、減損会計は直接対象資産グループの評価をしているのではなく、その資産グループに関連しているビジネスに対する評価を行うことで、間接的に資産グループを評価を行っているということだ。だから、対象資産グループの簿価や償却可能額と、減損損失累計額は、独立している。両者が逆転することも、概念的にはあり得る。

 

 

(改めて、減損会計の性質)

 

減損が生じる原因は、前回の記事にも書いたように、例えば、“新興国の予想を超える生産力・技術力の向上による当社製品の競争力低下”、“東日本大震災を機会に顧客が調達を多様化し、当社製品需要が減少”、“顧客ニーズの調査・把握が不十分で売上予想を読み違え”といったようなことになる。これらは、対象資産グループ自体より、その対象資産グループを使ってビジネスをやろうとした“人の判断・行為”に強く関連していることが多い。

 

例えると、減損会計は、「このパターは入らないから、価値が低い」と言っているようなもので、周りの人から見れば、「パターより腕でしょ」ということになる(僕はそう言われる)。減損会計で、将来キャッシュフローを見積もり回収可能額を算定するのは、実は“腕”(=自己創設のれん)を評価しているのであり、それを“パター”の評価へ流用している。間接的に利用している。

 

即ち、元々のパターの価値は購入対価から減価償却累計額を控除した固定資産台帳の簿価だが、そこから腕を考慮(=減損損失累計額を控除)した会計上の簿価こそが、“僕のパター”の価値となる。しかし、パターの価値と腕の評価は本来別ものだから、両者の関係がおかしくなることもあり得るわけだ。即ち、元々のパターの評価より腕の(悪さ)の評価が勝ってしまい、それに気づかない本人は購入した店に文句を言う(僕はここまで下手ではない)。

 

 

(マイナスの減価償却費の処理)

 

では、マイナスの減価償却費を認めるか。僕は、これには否だ(=マイナスの減価償却費は認めない)。

 

減損会計は、“腕”を評価しているが、“腕”は自己創設のれんなのでそもそもB/Sに計上されない。やはり最終的には、パター(=資産グループ)を評価する手続だ。パターにゼロを下回る評価、残存価額を下回る評価をつけることはない(≒店員に文句を言わない)。したがって、マイナスの減価償却費もあり得ない。

 

ということで、資産グループの減価償却費がマイナスになる場合は、減損損失累計額を動かして、そうなることを防がなければならないと僕は思う。

 

その場合、除却であれば固定資産台帳上の除却損と対応する減損損失累計額を相殺して、会計上の除却損とすれば良い。しかし、移動の場合は処理が異なる。「減損会計はビジネス評価」という性質を優先すれば、移動した資産は、固定資産台帳上の簿価で移動処理を行い、対応する減損損失累計額は、会計上の見積りの修正ということで、その期の利益にするよりほかはないと思う。

 

 

ただ、上記に示した減価償却費がマイナスになる例は、パターでシャンクするぐらいに珍しい、現実にはあまりないケースではないかと思う。なぜなら、不要な、或いは有用性の低い資産を移動するなんて、そんな無駄を省くレベルのコストセーブ策は、日常的な投資回収管理の中で(というか損益管理のレベルだが)、減損になる前にやっておくべきことだからだ。減損してからようやくこのアイディアが出てくる状況なら、リスク管理の在り方を改善すべきかもしれない(まさにパターでシャンクするレベルかも)。

2013年5月22日 (水曜日)

247.【製造業】「減損はビジネス評価」と問題点の B、D、E

2013/5/22

5/16のラストパスの記事に記載した奇策(改定版)で、3/26の記事にある当初の奇策の問題点が解決されるのかについて考えてみたい。解決できるのであれば、減損時、或いは、減損戻入時の事務負担が大幅に軽減される可能性がある。5/10の振返りの記事に問題点の箇条書きを再掲したが、そのうち、今回対象とする BDE をもう一度下記に転記する。

 

 

(奇策の問題点)

 

B. 除却、移動時に減損損失累計額の個別資産ごとの明細が必要だが、奇策ではその明細がない。

 

D. 減損は資産評価手続だから、個別資産ごとに評価額を持つことが自然だが、奇策だとそれがない。

 

E. 奇策では、減損損失累計額は、明細不明で管理不能の危ない勘定になる可能性がある。

 

 

勘の良い方は、どのように解決していくか、もう見当がついたかもしれない。しかし、諄くて申し訳ないが、引続き、下記をお読みいただけるとありがたい。

 

 

BDE の共通点)

 

これらは、「減損損失累計額が個別資産ごとに配分されず、明細がない」ために生じる問題であることが共通点だ。これに対しては、「減損はビジネス(≒資産グループ)の評価手続である」(4/9の記事)ことが、ポイントになる。即ち、そもそも、減損は“個別資産”の評価手続ではないから明細は不要ということだ。

 

 

(まず、D E について)

 

ご注意いただきたいが、減損会計は、会計基準上、あくまで対象資産を評価する(=回収可能額を超えないことを確認する)ために行われる。そして減損損失は、(IFRSでも日本基準でも素直に読めば)個別資産に配分され、個別資産の簿価が修正されるから、減損会計は“個別資産”の評価手続のように思われる方もいるだろう。しかし、その計算プロセスを見る限り、その認識は正しくない。評価対象は、固定資産台帳(=減価償却台帳)上の個別資産ではなく、“一定単位のビジネス”に必要な資産の集合である資産グループだ。この“グループ”である点が重要だ。

 

減損会計は、その“一定単位のビジネス”からの将来キャッシュフローの見積りを利用するために、その資産グループに直接関係のない(もちろん、間接的には関係がある)外部環境、内部環境の変化や見込み違いなどが、評価額(=回収可能額)に影響を与える。例えば、“新興国の予想を超える生産力・技術力の向上による当社製品の競争力低下”、“東日本大震災を機会に顧客が調達を多様化し、当社製品需要が減少”、“顧客ニーズの調査・把握が不十分で売上予想を読み違え”といったことが、生産設備等の評価額に影響を与える。

 

この影響は、個別資産ごとに、それぞれ別個にあるのではなく、ビジネスの単位である資産グループ全体としての影響だ。したがって、減損損失を個別資産に直接関連付けられないので、IFRSでも減損損失の個別資産への配分は、個別の因果関係に基づくのではなく、“比例配分”によるとされている(IAS36.104(b))。だとすれば“比例配分”されたあとの個々の資産の評価額にたいした意味があるとは思えない。

 

ただ、同じような“比例配分”は、原価計算でも行われる。では原価計算の“比例配分”もあまり意味がないのだろうか。例えば、固定費を、製品と何らかの関係を見出して、その比率で配賦する。しかし、減損と異なるのは、原価計算の場合は製品が個別に販売されていく、即ち、原価を配賦される製品がそれぞれ独立していることだ。それに対して減損の場合は、資産グループとしてのまとまりがあってビジネスとしての価値があるのであり、バラバラにしたら“別もの”になってしまう。(ビジネスとしての価値には自己創設のれんとしての価値が含まれるが、バラバラの個別資産には“もの”の価値しかない。)

 

ということで、減損損失(累計額)は、資産グループごとの金額に意味があるのであって、比例配分された後の金額は機械的な計算上のものでしかない。したがって、D は減損について“個別資産の評価手続”という誤解に基づく問題認識であり、また、E のような明細は、そもそも必要ない。・・・と僕は思う。

 

 

(次に B について)

 

但し、減損損失(累計額)を、資産グループより細かくする場合がある。

 

例えば、B/Sへ表示する際に、建物や機械設備といった勘定科目ごとの減損損失累計額が欲しいとか、利益・原価管理上、プロフィット・センターやコスト・センター単位に分かれていないと困る、といったケースがある。そういう時は“比例配分”することになる。

 

また、資産グループの中核を担う資産とか、その資産を欠くとビジネスが変わってしまうような重要な資産を移動させ、別の事業で利用するケースもある。或いは、除却するケースもある。そのような場合は、資産グループが変質するので、減損損失(累計額)をそのままにしておく理由はなくなる。そういう場合、“比例配分”が必要になる。

 

例えば、例のスープ製造工程(4/9の記事)で言えば、小麦粉などの原料を倉庫から工程へ運搬するフォークリフトの所属を倉庫課へ移動して、スープ製造工程と関係のない原料や資材の運搬にも使う場合を考えてみよう。スープの生産量が見込みほどでないため減損になったということは、原料の運搬量も見込みより少ないので、スープ製造工程直属のフォークリフトは必要ないかもしれない。すると、フォークリフトの所属を変更してもスープ製造工程のビジネスは何も変わらない。ビジネス評価の結果としての減損損失累計額も変える必要はない。僕は、このような個別資産の移動であれば、フォークリフトに対応する減損損失累計額を動かさなくてもよいと思う。固定資産台帳だけの移動処理を行えばよい。

 

その結果、このフォークリフトは減損の対象から外れるので、フォークリフトの簿価が減損前の簿価に戻ってしまい、評価益を計上することにならないかと心配される方がいると思う。しかし、それは倉庫課だけを見ているからで、スープ製造工程を含めた全体で見れば問題ない。

 

また、減損対象となったフォークリフトでも、フォークリフトとしての機能が劣るわけではない。だから、フォークリフトの減価償却費は、減損前の簿価をベースに計算され、倉庫課で計上される。そして倉庫課の原価は製造間接費としてスープ製造工程やその他の工程へ配賦される。これで良いのではないだろうか。

 

一方、タンクや撹拌設備、温度管理、湿度管理の機能を失うと、もう、スープを製造できないか、品質の低い製品しか製造できなくなる。これらの資産にはビジネスが変わってしまうほどの重要性がある。であれば、ビジネス評価の結果である減損損失累計額をそのまま維持する理由はない。このようなビジネス上の大きな方針変更を伴う移動、除却をするなら、減損損失累計額も“比例配分”して、個別資産と一緒に動かさざるえないと思う。

 

また、このようなケースでは、スープ製造用に特注された設備であることが多いと思うので、そのまま他の用途に転用するのは困難だ。余分なコストがかかる。即ち、価値が低いので、減損損失累計額を伴って移動させる意味がある。(仮に汎用性の高い設備の一部が遊んでいて、現状の生産量を減らさずに、他の工程へ容易に転用・移動できる場合がもしあれば、ビジネスに影響ないので重要性がないと判断すると思う。)

 

ということで、B については、ビジネス上の重要性のない個別資産であれば、普通に固定資産台帳上の移動・除却だけ行って、減損損失累計額はそのままで良い。・・・と僕は思う。よって、減損損失の明細は必要ない。

 

但し、“比例配分”を行う場合、明細がない状態でどうやって適正に“比例配分”するか、については別途検討する。即ち、いったん減損した後に、例えば数年後に移動・除却をする場合、固定資産台帳上の個別資産はそれぞれの耐用年数と償却方法等に基づいて減価償却が進んでいる。減損後に新規に取得された資産や除却された資産もあるかもしれない。そのような状況では、固定資産台帳上の簿価比率では適切な“比例配分”ができない可能性がある。そこで、何の比率を使うのが良いかについて、別途検討する。(これが「償却可能額」だ!)

 

 

(マイナスの減価償却費)

 

ところで、個別資産を移動・除却しても減損損失累計額を動かさない場合は、ちょっと妙なことが起こる可能性がある。その後の期で、減損損失累計額の戻入額が減価償却費を上回ってしまい、その資産グループの減価償却費がマイナスになってしまうかもしれない。例えば、備忘価額まで減損したあとで個別資産を移動した場合など。このようなマイナスの減価償却費は“あり”だろうか。

 

 

やや込入ってきたので、この話の続きと残りの問題点 A C については、次回以降に繰り越す。

2013年5月19日 (日曜日)

246.【番外編】感情? それとも論理?

2013/5/19

感情か、論理か。好き嫌いか、それとも実利や正義か。みなさんは何かを決めてくださいと言われたら、どうやって判断しますか。例えば、「スイカとメロンのどちらにしますか?」と聞かれたら。恐らく、この質問であれば、単純に好き嫌いで選ぶ人もいれば、値段(=実利)を想像して決める人もいるかもしれない。では、「橋下氏の従軍慰安婦発言を支持しますか?」というのはどうですか?

 

人は、感情的な判断、論理的な判断、及びこれらの混ざった判断を、状況によって使い分ける。どれが良いかは、一概には言えず、ケースバイケースだ。しかし、その判断の影響を受ける人が多い場合は、なるべく論理的な判断を行い、逆に自分だけの問題であれば感情的な判断でも良い、と考える傾向はあると思う。

 

今回は、橋下氏の発言について、みなさんに判断をお願いしたい。経緯を良くご存じの方も多いと思うが、改めて、この騒動の大元となった発言のエッセンスを記載するのでご覧いただきたい。橋下氏を批判する人は「女性蔑視」とか「日本のイメージを悪くし国益を損ねる」という。したがって、この問題は影響を受ける人が多い方のケース、即ち、論理的な判断をすべき事項だと思う。そこで、発端となった会見の一問一答が記載されているSYNODOSのHP(http://synodos.jp/politics/3894/1)から、好き嫌いの元になるような装飾的な部分を除いて、橋下氏の発言を短く要約する。

 

 

(慰安婦発言の前段、背景)

 

◆ 「侵略」の学術的な定義がないとしても、敗戦の結果受けた評価は受入れざるえない。また、実際に多大な苦痛と損害を周辺国に与えた事実はあるのだから、反省とお詫びが必要。そしてその反省とお詫びは、日本の側から「もういいだろう」といえる筋のものではない。

 

◆ 但し、事実と異なる批難は侮辱であり反論が必要。その例として従軍慰安婦問題を提起。

 

(従軍慰安婦に関して橋下氏が認識している事実)

 

◆ 当時は世界各国の軍がそういうものを持っていた。

 

◆ しかし、日本の従軍慰安婦問題だけが世界的に問題にされている。日本はレイプ国家であると。

 

◆ その理由は、日本は国が関与して拉致し、強制的に職に就かせたから。だが、これは誤解。

 

(橋下氏の主張)

 

◆ 反省すべきは反省し、誤解であればそれを解く努力が必要。

 

◆ (強制かどうかに関係なく)意に反して慰安婦になった人の心情はしっかり理解し配慮する必要がある。

 

以上について、僕には至極まともな主張に思える。

 

 

(追加の質問と回答)

 

ところが、この後、記者の追加質問によって、橋下氏は「(今はダメだけど)当時は従軍慰安婦が必要だった」と言わされた。加えて、「沖縄の海兵隊の司令官に日本の風俗(もちろん、合法の範囲の)を利用したらどうか」と進言したなどと、ちょっと筋違いなエピソードを自ら付け加えて、問題を複雑にした。そして、マスコミが取上げて報道したのは、上記の発言の本旨ではなく、この追加部分だった。

 

橋下氏の趣旨は、「今ダメなものは当時もダメ。しかし、当時は必要と考えられていた。なぜ必要と考えられていたかを想像すれば・・・」ということだと僕は思う。その想像が正しいと強く主張し過ぎたきらいはあるが、全体の文脈を読めば、そう思える。別に従軍慰安婦を積極的に肯定したわけではないと思う。

 

また、付け加えたエピソードの「風俗」には売春も含むがごとく誤解され、物議を醸している。マスコミは自らの報道で誤解を生み出したのに、それを是正しようとしないばかりか、逆に悪乗りしている。特に米国は、過去ではなく、現在、深刻に悩んでいる。例えば、イラク駐在の米軍内で集団レイプ事件があったと訴えられ、しかも組織的な関与が疑われるとか、最近も軍の規律責任者がその手の事件を起こしたなど。もちろん、沖縄でも事件を繰返している。そういう問題に向き合っているところへ「買春したらどうか」と日本の政治家が発言したと報道されれば、おちょくられたと感じて「ふざけるな」と思うだろう。

 

 

その結果、韓国や中国ばかりでなく、米国からも非難を浴びた。橋下氏ばかりでなく日本のイメージが悪くなると。日本は女性蔑視で人権侵害の国だと。そして本旨の方は全く霞んでしまった。

 

 

もし、上記の橋下発言の要約が、「知っている情報と違う、違和感がある」などと思われた方は、是非、上記のSYNODOSのHPをご覧いただき、ご自分で橋下氏の発言を吟味していただきたい。関係ない質問・回答もあるので、それを飛ばしてもらえば、恐らく10分か15分ぐらいでじっくり読めると思う。

 

 

さて、この一連の報道で、我々が得たものは何だっただろうか。

 

◆ 日本の悪評。しかも、誤解に基づく(米国務省の報道官は「風俗=売春」だと思って批難している)。

 

◆ 橋下氏の悪評。(しかし、上記の「橋下氏の主張」の部分は真っ当だと思う。)

 

「得た」のではなく、「失った」のだ。今まで一生懸命積上げてきた日本ののれん、good will を。

 

人間に、好き・嫌いという感情があるのは当然だ。しかし、それが多くの人の実利や正義に大きく影響することについては、好き嫌いを超えて、論理的に冷静な判断をすべきだと僕は思う。みなさんはどう思われるだろうか? 

 

それにしても、なぜこんなことになってしまったのか。橋下氏の発言に問題があったからか。それともマスコミの報道の仕方か。

 

マスコミは論理的な判断で記事の論点と表現を選んだのだろうか。ただの好き嫌いとか、面白い、面白くないではなかったか。それで日本がひどく誤解されたとしたら、マスコミはどうやって責任を取るのだろうか。少なくとも、「風俗=売春」という誤解を生んだ部分については、マスコミに責任があると思う。

 

 

いずれにしても、これで日本は「レイプ国家ではない」と主張する機会から遠ざけられてしまったのかもしれない。もしかしたらご存じない方もいらっしゃるかもしれないが、従軍慰安婦は「性奴隷」と翻訳されるなど、実際にそういう評判が定着しつつある状況だ。それを憂いての橋下発言だったのだが、結果は裏目に出てひどいことになっている。もはや、日本がそう主張しようとしても、当面の間、他国の人々は聞く耳を持たないかもしれない。

 

橋下氏は、近々、維新の会の松井氏と一緒に米国に行くという(この騒動の前からあった予定)。是非、なるべく多くの人の誤解を解いてきてほしい。米国政府関係者からは「誰も会わない」と言われているようだが、政界・政府関係者の人とは会えなくても、米国のマスコミには会えるのではないだろうか。

2013年5月16日 (木曜日)

245.【製造業】減損戻入~固定資産台帳の修正を最小に!(ラスト・パス)

2013/5/16

前回は「タイム!」させてもらったが、いよいよ、その時間をもらった成果をご覧にいれたい。やはり諦めないことは重要だ。どこかに道はあるものだ。

 

・・・っという書き出しで、みなさんの期待を煽ってみたが、果たして満足いただけるかどうかは分からない。そこで、まずは概略を記載し、興味を持たれた方がその後のディーテールに入っていけるような形式で記載しようと思う。

 

 

<概略>

 

これは、固定資産台帳はそのままにして、減損やその戻入に係る一切の会計処理を、減損損失累計額だけで済ませてしまおうという方法だ(場合によっては減価償却累計額も動かす)。減損損失累計額(及び減価償却累計額)は、下記Aの単位以上に細分化しないので、普通であればスプレッド・シートでも管理可能なはずだし、減損戻入を行う場合も、ちょちょいとそれをいじれば済む。税効果会計の税務上の加減算項目を(回収可能性を考慮しながら)管理するよりず~っと楽だろうと思う。くどいが、固定資産台帳には触らない。(但し、触った方が良いケースもあるかもしれない。) ということで、IFRSの減損戻入にも怯むことはない。

 

「経営戦略に応じて自主耐用年数を設定せよとか、面倒なことを色々書いてたくせに、減損損失累計額勘定だけでそんなことが可能なのか」、と思われた方もいらっしゃると思う。確かにそう、万能ではないのだが、それでも可能性を広げてくれたのが、上記の「償却可能額」への着目と、それを資産グループ単位(≒原価管理単位)で扱うというアイディアだ。僕の奇策では、減損損失累計額の戻入スケジュールを計算するのが面倒になる可能性があったが、このアイディアを利用すればそうでもない。しかし、確定決算主義の税制の下では、やはり面倒になるケースも出てくる。

 

 

<奇策の改定版のポイント>

 

A.減損損失累計額は、資金生成単位(=資産グループ、≒原価管理単位)ごとの勘定科目、及び、減損理由ごとに管理し、固定資産台帳上の個別資産には配分しない(=なるべく固定資産台帳の簿価を修正しない)。減損を戻入れる場合も、減損損失累計額を戻すだけで良い。

 

B.減損損失累計額の戻入のスケジュールは、Aの単位の減損時点の「償却可能額の集計値」が適正に減損後の各期に配分されるよう決定する。(「減損損失累計額の戻入=固定資産台帳の減価償却費-減損後の減価償却費」の関係を利用して、減損損失累計額の戻入スケジュールを、減損後の適正な減価償却費と固定資産台帳の減価償却費から逆算する。)

 

C.減損損失を計上する場合や減損の戻入を行う場合は、減価償却の前提となる会計上の見積り(減価償却方法、残存耐用年数、最終処分価額等)を見直す。(もちろん、必要ならば、だが。)

 

D.減損した一部の(重要性のない)資産を移動・除却する場合は、普通に固定資産台帳を修正するだけで、減損損失累計額には触れない。但し、「それでは基準と齟齬がある」という指摘を回避できないとか、重要な資産である場合は別だ。その時点の「償却可能額」比率で、除却・移動する資産に対応する減損損失累計額を算定することで対応する。

 

 

Aは、当初の僕の奇策とほとんど変わらない。唯一、“勘定科目”が入ったが、これは書かなかっただけで、B/S開示上当然必要な要件だから、改定版と言っても基本的な内容は変わらないと言ってよい。

 

だとすれば、「なにが変わったのか?」ということになるが、B~Dが改善されたことだ。その秘密は「償却可能額」に着目したことにある。みなさんはご記憶にあるだろうか。4/16の記事で「(IFRSでは)簿価は、減価償却と直接関係ない。」とされていたことを。じゃあ、なんと関係するかというと、この「償却可能額」だった。恐らく、どなたも「そんなこと覚えてないよ」と言われると思うが、僕はなんとなく頭に引っかかっていた。「言われてみれば確かにそうだ、なるほどね・・・」と。ただ、その時点では「それが?」という感じでもあった。しかし、ここに屈強なディフェンダーを突破する鍵があったのだ。

 

 

 

ということで、細かいことは次回以降追々説明するので、興味を持たれた方はご期待ください。

 

もちろん、この方法にもメリットがあれば、ディメリットもある。例えば、常に監査人がOKするかどうかは保証できない。税務上の対応も必要かもしれない。各社の置かれた状況の差もあるし、僕は、この方法が常に有効とは思わない。しかしその一方で、IFRSだけでなく、日本基準でも使えるんじゃないかと思ったりもする。

 

さあ、みなさんはどう思われるか。もし気に入られたら、それを実務に落し込むのは、みなさんということになる。僕ができるのはラスト・パスまで。ゴールを決めるのはみなさんだ。

2013年5月14日 (火曜日)

244.【製造業】減損戻入~タイム!

2013/5/14

前回(5/10の記事)を眺めながら、今更ながら、この問題(=固定資産台帳の修正回避)の難しさに頭を抱えている。どうやら大変な問題を相手にしてしまったようだ。僕は、固定資産台帳の修正を回避しようとして、減損時の会計上の見積り項目(減価償却方法、耐用年数、減価償却単位等)の見直しへ言及した。しかし、これらは、結局固定資産台帳の修正を伴うではないか! だから、壁パスを2度繰り返したのだが、まだパスコースが見えてこない。

 

なるべくそうならない方法を考えたい。(でも、必要ならそれもやむを得ない。)

 

ということで、サッカーの攻撃パターンでこのシリーズを続けてきたが、今回は、サッカーではあり得ない「タイム」にさせてもらった。いや、味方のフォワードにタイミングを合わせるための時間稼ぎか。いずれにしても、ちょっと時間を頂きたい。

2013年5月10日 (金曜日)

243.【製造業】減損戻入~ここまでの振返り

2013/5/10

ゴールデンウィークあたりから、僕のところは、ちょっと涼しめの過ごしやすい気候が続いているが、みなさんのところはどうだろうか(昨日は真夏日のところもあったらしいが)。ここ数年、春や秋の気候が短く、すぐ暑くなったり、寒くなったりしていたが、今年は心地よい。

 

しかし、このブログはそんな穏やかな状況にない。減損や減損戻入の際に「固定資産台帳(=減価償却台帳)を個別資産ごとに修正する手間」という壁に突き当たり、縦パスを出したり、サイドに振ってドリブルを試みたり、センタリングをしたら逆サイドに突き抜けてしまったので、壁パスを2度もしたりと、相手ディフェンスを揺さぶろうと必死だ。だが、そろそろ、議論を収束させなければならない。そこで、今回はここまでの振返りをして、ラストパスの出しどころを探りたいと思う。

 

 

(きっかけ、目的)

 

オックスフォード・レポートのP119に次のような記載があって、減損戻入処理は、IFRSが日本の製造業に合わない理由の一つとされていた。(3/12の記事

 

事務作業を複雑にし、新たな減価償却を通じて原価計算・投下資金回収・マークアップ計算等に影響を及ぼす。

 

このうち、僕は「事務作業が複雑」というところに焦点を当てて書いてきた。というのは、その後の部分は、投資時から変化した新しい事業環境に合わせるために当たり前のことであり、その影響は経営にとって、或いは、投資家が見る数値にとって適切なものと思うので、何が問題か良く分からないからだ。

 

むしろ、日本基準が「“確実な減損の発生”のみを減損の対象にしている(≒減損戻入処理は禁止)」ことが、経営上遅すぎる減損認識となり、リスク認識と対応を遅らせ、多額の減損損失を生む一因になっているのではないかと心配している。IFRSのように、早めに減損を認識する(代わりに戻入もある)という扱いの方が、経営にマッチしていないか。早めにリスク対応ができて、結果的に減損損失の計上を減らすことができるのではないかと思っている。しかし、それには上記の「事務作業が複雑」という問題を解決する必要がある。(3/19の記事

 

 

(奇策とその問題点)

 

そこで僕が提案した奇策は、「減損損失(累計額)は、減損案件ごとの総額で、償却(戻入)スケジュールと減損理由を管理しよう(但し、償却資産に限る。)」ということだったが、日本基準もIFRSも、「個別資産に配分せよ(=固定資産台帳を修正せよ)」と言っているようだ。(3/22の記事

 

しかし、この奇策は、IFRSの規程「個別資産に配分せよ」に合わないようだし、なぜそのような規程になっているか理由を想像してみると、奇策には次のような問題があった。

 

A.(個別資産に配分すれば)減損時は事務負担が大きいが、それ以降は事務負担がない。奇策には負担が残る。

 

B. 除却、移動時に減損損失累計額の個別資産ごとの明細が必要だが、奇策ではその明細がない。

 

C. 奇策では、減損損失累計額の取崩スケジュールの計算が大変。

 

D. 減損は資産評価手続だから、個別資産ごとに評価額を持つことが自然だが、奇策だとそれがない。

 

E. 奇策では、減損損失累計額は、明細不明で管理不能の危ない勘定になる可能性がある。

 (3/26の記事

 

 

(問題点に対する解決策の模索)

 

ここで困ってしまったが、簡単に諦めずに、そもそも「減損会計とは何か」へ立ち戻って考えてみることにした。(3/284/2の記事) その結果得られた成果は次のようなものだった。

 

  • 減損はビジネス(≒自己創設のれん)評価手続であり、個別資産の評価手続ではない。(4/9の記事

 

  • 個別資産に減損損失を配分する手続は、減損会計のために行われるのではなく、減損後の減価償却費を適正にするための要求であるらしい。(4/9の記事

 

  • IFRSでは減価償却の「手続・プロセス」より「計算結果(=消費パターンの反映)」の方が重要。(4/16の記事

 

  • 即ち、計算結果が同じになるなら、或いは、近似するなら、計算単位(≒個別資産か否か)や償却方法等の減価償却の前提項目(=会計上の見積り項目)は、ある程度柔軟に決められる。(4/164/19の記事

 

  • 耐用年数は、事業のライフ・サイクルに関連するが、特に減損を認識するような事業の場合は耐用年数の見直しが必要なことが多いはず。その結果、多くの資産は同じ“残存”耐用年数になる可能性がある。(4/224/25の記事

 

但し、耐用年数の変更は自主耐用年数の設定に繋がるので、ここでも「税務上の固定資産台帳と会計上の固定資産台帳」という二重帳簿の管理が発生する。そこで、自主耐用年数の設定にどんな意味があるのか、経営上の重要性があるのかについて検討してみた。僕としては、特に近年の環境変化に対応するため経営戦略に関連した重要事項であり、手間の問題ではないと考えたいが、決め付けることもできないので、「壁パス」が戻ってくることを期待して、みなさんにボールを預けた。ついでに、その手間を省けるよう税制側の対応(=トライアングル体制、確定決算主義の正式な放棄?)への要望を企業会計審議会で検討してほしいとも書いた。(4/295/2の記事

 

 

以上が、これまでの振返りだが、あとは、これで僕の奇策の問題点が解決できたのかどうか、固定資産台帳の個別資産の簿価修正が回避できるのかどうかについて、最後の考察を行う段階に来ている。ということで、さあ、果たして良いラストパスが出せるかどうか、乞うご期待。

2013年5月 2日 (木曜日)

242.【製造業】自主耐用年数と経営戦略(再度、壁パス)

2013/5/2

3/3の記事に記載した齋藤精一郎氏の近著「デフレ突破~第三次産業革命に挑む」をこのゴールデンウィークに読んでいる。あれほどべた褒めした齋藤氏の本だが、購入してから暫く放ってあった。立派なハードカバーの本というのは中々開く気になれない。しかし、読み始めてみると、「そうそう、そういうこと」とか、「ああ、そうだったのか」とか、「じゃあ、どうするんだ」などと、興味が湧いてきて、苦しいし、休み休みだが、何とか最後まで読み切れそうな感じだ。

 

本の概要は、3/3の記事に記載したURL(日経BPネット)をご覧いただきたいが、一つ、今のテーマである「自主耐用年数の設定」に関連しそうな話題に当たったので、今回は、そこだけ下記に抜き出した(P169の最後の段落~P170。太字は僕が強調したいところ)。

 

マイケル・ポーターは著作の中で「日本企業には戦略はない」と指摘する。競争戦略は消極的な側面と積極的な側面を持つが、日本企業は消極的な競争戦略に強く偏向しているとポーターは診断する。筆者が消極的側面と呼ぶものをポーターは「オペレーショなるな効率化」と呼び、それは戦略ではないと強調する。

・・・

筆者が「積極的な競争戦略」(ポーター説では、本来の「戦略」)と呼ぶのは、事業構造が鋭い歯を備え、それによって製品の開発・企画を行い、他社と差別化する独創的な戦略ポジションを持つことである。

 

一瞬、思った。マイケル・ポーターという人は、なんて失礼なんだろう。世界に冠たる日本企業に戦略ないなんてひどい物言いだ、と。でも、P171には次のようにある。

 

1996年時点でポーターは、「戦略を持つのはソニー、キャノン、セガくらいで、彼らはあくまで例外だ」と言う。

 

ん~、確かに、この3社はユニークかもしれない。「戦略を持つ」とはそういうことか・・・。

 

 

「どういうこと?」って、みなさんは思われたかもしれない。

 

これら3社に対する僕のイメージは、「業界横並び」とか「他社がやるからうちもやる」とか、そういう感じがしない会社だ。みなさんはいかがだろうか。

 

ただ、こういう会社は他にもある。例えば任天堂もそうだろうし、僕が監査人として関与していたいくつかの会社も、そうだと思う。顧客のニーズやその変化を、時には顧客が気付く前に察知し、どうやって製品・サービスを提供するかを真剣に考え、必要なら事業計画に落し込んで体制を整えていた。単なるセールス・トークでなく、同業他社と異なるオリジナリティにこそ自信を持ち、価値があると考えているようだった。同業他社より顧客(市場)を、しかも自分本位でなく客観的に見ていた。恐らく、外部(≒顧客)からもそのように見えることが、ポーターの言う「独創的な戦略ポジションを持つこと」なのだろう。確かに、日本企業には少なそうだ。

 

 

ここでふっと頭に浮かんだのが、「戦略のない事業計画」という言葉だ。

 

現状を引き延ばしただけの事業計画。現場に行かなくても机に座ったままで作れる事業計画。「どんな会社になりたい」という意図とやる気のない事業計画。冒険をしない、したがって真剣に事業リスクを考えない事業計画。そして、市場環境より法定耐用年数を優先した事業計画。即ち、少なくとも法定耐用年数分は事業を継続できるという安易な前提を置いた事業計画。これらの多くは、ちょっと外生的な環境変化を見込んで係数をいじっただけの“損益計画”として作成される。

 

こういう計画は、作成は楽だが、経営に重要な意味をもたらさない。でも意外に社内の評価は悪くないことが多い。恐らく、痛む人があまりいないうえに、一定の成長が見込まれているからだろう。意外と、こういう事業計画で満足している会社が多いのではないか? しかし、国内市場が縮小し、海外企業との競争が激しくなっている今の日本の環境では経営が危ない。こんな事業計画ではリスク管理ができない。

 

 

自主耐用年数の設定は、経営と意外に重要なつながりがある。

 

現在の厳しい経営環境においては、横並びの経営では、市場の縮小と一緒に、同業他社と一緒に、その会社も縮小せざるえない。ユニークな戦略ポジションを持った外国企業との競争にも勝てない。だから日本企業も戦略ポジションを持つ必要があるが、それには長期的な視点が必要だ。事業のライフ・サイクルを見据えることも必要だろう。それがたまたま法定耐用年数に一致するなら法定耐用年数を利用すればよいが、そうでない場合も多いに違いない。「手間がかかるから自主耐用年数を使わない」という日本の常識は、経営のあるべき姿とはかなり遠い。

 

さらにいえば、会社法、法人税法、会計基準のトライアングル体制維持のために法定耐用年数を維持・尊重せよなどというのは、いったい誰のための議論なのだろうか? このブログを始めたころの2011/7/12の記事にもあるように、トライアングル体制や確定決算主義の要の一つは、法人税法の減価償却制度、特に耐用年数にある。日本企業の繁栄なしに日本経済の繁栄はあり得ない。であれば、企業会計審議会は是非この問題を取り上げて欲しい。税法の減価償却制度と企業会計を切離すか、税法が企業会計を受入れるかだ(これについては前回4/29の記事に記載した)。

 

 

ところで、日本的経営は長期志向と言われるが、戦略のない経営は長期志向の経営といえるだろうか。ポーターの言うとおり、日本企業に戦略がないとすれば、多くの日本企業の経営は長期的な視点を持っていないのか。いや、そうではない。別の面の長期性を持っている。

 

この製造業シリーズを始めたころの2012/9/22の記事にも関連事項を記載しているが、日本的経営は従業員や取引先、さらに地域社会との長期・継続的関係を基礎にしている面が、今でも大きいと思う。しかし、その一方で、戦略性という意味での長期性は薄い。なぜ、そうなのだろうか。もしかしたら、この2つの長期性は相容れないものだろうか。両立させることはできないか?

 

例えば、戦略性を優先させれば、工場を海外移転させることへの必要性が高まる可能性が高い。すると国内が空洞化するので、前者の長期性が損なわれることになる。或いは、「タイの人件費が上がったらミャンマーへ移転する」のでも同じだ。タイの雇用が減少し、その地域社会との縁が切れる。確かに、トレード・オフ関係の一面がありそうだ。

 

 

このバランスを、みなさんはどのように考えられるだろうか。

 

このテーマはあまりに大き過ぎて、僕の手には負えない。だが、仲間、人の縁を大事にする日本的経営も、事業があってこそ成り立つものなので、事業、そして企業の存続自体が危うくならないよう、戦略性を持たなければならないと思う。この辺りに関しては、2012/10/15の記事の末尾にも記載したように、日本の製造業は、現状や既成概念の捉われず、もっと投資家のように大胆な発想をもってよいのだと思う。

 

但し、過去の欧米諸国、或いは欧米企業のように、進出先を植民地のように扱う強欲な振る舞いは、日本的経営には合わない。2012/12/15の記事にも書いたように、欧米企業の一部は今もそのような振る舞いをしている。一方で、例えばフェア・トレードなど、サプライ・チェーン全体について、“持続可能性”をキー・ワードにしたガバナンス体制の構築にも動き出しているが、それは国内顧客向けの“演出”の域を出ないとの見方もできる。日本及び日本企業のように、現地とWin-Winの関係を築くことを目指していると、欧米企業の場合は、素直に言えないかもしれない。

 

日本も過去に、朝鮮半島や中国で悪事を行ったが、そういう例外的な時期と地域を除けば、国際的に良いイメージを持たれている。この部分、そしてそれを生み出す現在の日本人や日本企業の気質は、欧米企業との差別化が可能なので、ポーターの言う戦略ポジションを持つための重要な資源になるに違いない。

 

残念ながら、僕にはこれ以上のことを書く能力がない。あとは、個々の企業やこのブログを読んでくれるみなさんにボールを預けるほかはない(ということで、再度、壁パスをさせていただく。みなさん、がんばってください!)。ただ、最後に一つだけ、強調させていただきたい。是非、日本企業も、経営戦略を持つとともに、自主耐用年数を設定してください。

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